第4話
それから二ヶ月後。
すっかり忘れた頃になって、警察から連絡が入った。一人のスリが逮捕されて、たくさんの余罪を白状する中に、例のショッピングモールの一件も含まれていたという。
何度か前科もあるような名うてのスリであり、逮捕された話は、新聞の片隅にも載っていた。写真を見ると、私とは似ても似つかない、猿顔の男だった。
「『猿丸』って渾名のスリでしてね。モールの件については『上手にすった財布なのに、落としてしまったのが悔やまれる』って言ってましたよ。それよりも、捕まった方を悔やむべきでしょうに」
連絡をくれた刑事さんの軽い口調が、今でも私の耳に残っている。
あの事件を思い出すたびに、ふと考えてしまう。
ことわざに「猿も木から落ちる」とあるように、自分の得意分野で失敗するのは、誰にでも起こり得る話だ。
猿顔のスリがせっかくの獲物を落としてしまったのは、ちょうど落とした場所が場所だから、「猿も木から落ちる」ならぬ「猿も財布を木に落とす」であり……。
なんだか
(「猿も財布を木に落とす」完)
猿も財布を木に落とす 烏川 ハル @haru_karasugawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
カクヨムを使い始めて思うこと ――六年目の手習い――/烏川 ハル
★209 エッセイ・ノンフィクション 連載中 298話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます