優しくも苦しい締めくくりのとき

 齢八十を超えた男性が、小学校の頃の思い出を頼りに、タイムカプセルを掘りに行くお話。

 すごい威力の物語でした。こんなの泣いちゃう……。
 眩しくみずみずしい過去の思い出と比べて、体も心も衰え切ったお年寄りの男性。
 人生の末期すら見据えた彼の、その小さくも大変な冒険の物語です。

 とても優しくて穏やかな情景なのに、読んでいてどうしても重苦しさのようなものがつきまとう、この感覚がもう、なんというか、たまりませんでした。

 辛い話ではないはずなんです。少なくとも彼自身は、作中で描かれている優しい情景のように、そんな悲惨な人生ではなかったはず。
 それでも、その姿を我が身の行く末に重ねてしまうと、どうしても胸の奥が押し潰されそうになる……。

 途轍もない威力の作品でした。
 心を滅茶苦茶に掻き乱してくれます。大好き。