LIFESTORYという物語について

幻中紫都

人生の参考書


 LIFESTORYは【命の物語】。キャラ一人一人が描く、美しい命の軌跡──


 この物語を書こうとしたきっかけは、もうとうの昔に忘れてしまいました。

 というよりか、書こうと思って書き始めたのではなく、頭の中でいつも映画のように流れる物語ストーリーを書き起こしてみようと思った、と言った方が表現としてあたっているのかもしれません。それくらいこの物語は、僕の中でいつも身近にありました。では何故この物語を描くに行き着いたのか。

 LIFESTORYは言わば、僕が様々な経験し、感じ考えた一つの【意見】であり【未来】です。


 昔から考えることが好きでした。それはあるとき妄想に、またあるときは議論に姿を変えました。好きな物語について、「」、「」と、物語の別の世界線を考えることも好きでしたし、道徳や現代社会などの授業で与えられた議題(例えば「」や「」など)について意見を交わし、自分なりの結論を出すことも好きでした。

 そんな中僕が常に不思議に思っていたこと、結論を出せずにいたものが、この物語の主題である【】ということです。

 色んなところで色んなことを考えた気がします。それは小学校で起こっていたちょっとした嫌がらせを黙認していたときや、度重なる転園・転校の別れ際、友人が事故にあったり病気に罹ったりしたときや、誰かが亡くなったとき。いつ何が起こるか分からないこの時代に、どう生きるのが正解なのかと考えさせられました。 

 もし明日不治の病に罹っていることが判明したら。もし明日事故にあって腕がなくなってしまったら。年老い全てを忘れてしまったとしたら。自分はどう生きていけば良いのか。どう生きれば満足できるのか。そんな途方もないことを考え続け、今なお考えています。

 この疑問は、【人生最大の謎】であり【人生最後の課題】とも言えます。どう生きることが正解だなんて分かりません。その人なりの、その人だけの、人生があります。例えどんなにちっぽけなものだったとしても、その人が死ぬ瞬間に「良かった」と感じることが出来たのであれば、それは素晴らしい人生です。

 しかし現状、この一つの世界を、たった一度だけの人生を、楽しむことが出来ない人もいます。それはどうしようもない絶望であったり、小さな悲しみの積み重ねであったり、日々の生活の息苦しさであったり。それは実際僕だって感じることがあります。明日に無気力になり、生きていることが嫌になる。自分の無力さを思い知り、どうしようもなく悔しく思う。そんなこと、いくらだってあります。でもそれだけが人生の全てじゃない。

 

 「幸せは掴むものじゃない、見つけるものだ」

 僕の物語で、みやびというキャラが言う言葉です。幸せは見つけるもの。これは僕が16年という短い人生で出した、小さな答えです。どう生きるのが正解なのか、という結論はまだまだ出せませんが、どんな人生であっても幸せはそこら中に転がっているのではないか、という結論を、この16年で導くことが出来ました。

 これは学校で、障害者の方の講演を拝聴したのがきっかけだったと思います。その方は自分の障害について堂々と話し、笑い、好きな料理の話を楽しそうに語りました。その方は自分の中で、【】でした。幸せなんだと、素直にそう感じました。障害を抱え息苦しい社会の中にあっても、幸せを見いだせる底知れないパワーを見せつけられたような気がしました。例え明日どんなことがあっても、その度に転がっている幸せを見つけていけば良い、そう語り掛けられているような気がしました。

 

 LIFESTORYは、そういう風に、僕が生きている上で感じた【】ということを、少しずつ書き出していった結晶です。キャラが多いのも、僕が考えた何通りもの【生き方】が、この物語で紡がれるからです。

 僕のキャラには【悪人】がいません。そこにいるのは【一人の人間】です。【人間】は人によって、【善人】に見えるときと【悪人】に見えることがあります。 

 LIFESTORYを読む中で、その人なりにキャラの【善】と【悪】の区別がされていくでしょう。しかし決してそれは決定事項ではなく、少し見方を変えたり、前向きに捉えてみたり、また逆に批判的思考を持つことによって、違った側面を見せます。その【善】とも【悪】とも言い難い部分が、【人間味】であるのではないでしょうか。僕はその曖昧な【人間】が、生きることに葛藤し、立ち向かい、己を恥じ、愛し、生きることを誓う──そんな物語を描きたいと思っています。

 だから是非、物語を読みながら考えて欲しいのです。【】、と。それは僕にも結論を導くことは出来ません。現に僕のキャラも、完璧で後悔ない真っ当な人生を送っていく訳ではない。罪を犯し、仲間を失い、泣き、戦い、誓い、そういったことを繰り返して成長していきます。だからこそ人間は醜く、同時に美しいものなのではないでしょうか。


 自分なりに今【】という結論を出すのであれば、それは【】という何とも曖昧なものになってしまいます。しかし、人生は【正解】などないからこそ面白く、楽しいのではないか。最近そう思うのです。まだこの世界には分からないことがたくさんあり、またこれから先も多くの問題が降りかかることでしょう。世界から疑問が途切れない限り【生き方】の模索は続きます。でもそれは、なんとも素敵なことだとは思いませんか。自分が世界で一番最初に、【生き方】を導き出すことが出来る──誰よりも輝かしいたった一つだけの正解を。僕は最近になって、そう前向きに捉えられるようになりました。人生とは【軌跡】であり【奇跡】です。どうか多くの人に、その命の旅を諦めて欲しくはない。烏滸がましいですが、すべての人に、自分だけの美しい世界を作って欲しいと、そう心の底から願っています。


 LIFESTORYは自分の中にある【】です。もし何か困ったら、大きな壁にぶつかったら、この物語を、自分より数倍も苦しい場所にある仲間キャラを思い出すようにしています。どんなときだって前を向き、藻掻く彼らに後押しされ、自分は今もこうして生きています。悔しくても悲しくても、仲間が支えてくれます。それはとても嬉しく、心強い。

 だからこそ、皆さんにも分け与えられたら良いなと思いました。もし困ったとき、壁にぶつかったとき。何度も読み返され、そして生きる活力を与えるような物語を執筆したい。多くの人に【】ということについて考えて欲しい。人生を前向きに生きて欲しい。その信念だけは決して曲げるつもりはありません。最後の最後まで彼らの【命の物語】を編んでいきます。例え何年、何十年かかったとしても。


 だからもし、どうしようもなく苦しいときや、悲しいとき。そっとこの物語を覗いてみて欲しいのです。彼らは僕らとは異なる世界線で、藻掻きながら、でも僕らよりも美しく、そしてたくましく生きています。結論など出ない果てしない人生の旅路で、僕の物語が誰かの行く末を見守る星でありますように──


 

 幻中紫都

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