第43話 エンディング2
「まてー、アルセーヌ・ルパ子ーっ!」
追ってくる若い刑事の声が駅のコンコースに響く。
人でごった返す駅の構内を、ひとごみを縫って走り抜けるルパ子は手首に巻いたベビーGに問いかける。
「金田一、モノレールの発車時刻を教えて」
『十時五十四分だ。もう発車するよ。間に合わない』
「間に合わせて見せるわよ。任せておきなさいな」
通行人の隙間を駆け抜けて、ルパ子は階段の窓をめざす。彼女の姿に気づいた女性が「きゃー、ルパ子よ」と悲鳴にちかい歓声をあげているが、手を振っている余裕がない。
「待つんだ、ルパ子!」
若い明智刑事と鉄道警察隊の警官たちが追いかけてきている。
ルパ子はちらりと背後を確認すると、開いた窓から外に飛び出した。
ハイサイブーツのアシスト機能を最大につかって、大跳躍。駅の空に飛び出し、すでに発車を開始しているモノレールの屋根に飛び降りた。
片膝ついて華麗に着地し、すっくと立って振り返る。
ルパ子を今回も取り逃がしてしまった明智刑事が、窓からこちらを見下ろして悔しそうに顔をゆがめている。
『間に合ったかい? ルパ子』
金田一が問う。
「あったりまえでしょ。わたしを誰だと思っているのよ」
モノレールの屋根の上は、電線もパンタグラフもないところがいい。邪魔なものがないから、立ち上がっても問題なしだ。
モノレールは速度を上げ、やがて海の上を走り出した。海風が心地よい。眼下に広がるのは、広大な海浜公園の景色。
『ねえ、ルパ子。前に、怪盗やめるとか言ってなかったっけ?』
金田一が少し安心したような声でたずねる。
「言ったけどね」
ルパ子は鼻で笑った。
「やめられるわけないじゃん。こんなドキドキする楽しいことを」
モノレールの隣を、高速道路が走っている。モノレールに追い抜かれてゆく観光バスの窓から、ルパ子の姿に気づいた修学旅行の高校生たちが、こちらに向けて手を振っている。
ルパ子は彼らに手を振り返し、そして深々とおじぎした。
「それではみなさん、これにて、
<完>
美少女怪盗アルセーヌ・ルパ子の冒険 雲江斬太 @zannta
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