第3話 神の住処

さて、身の回りの世話を命じられたリーティーだが、その前にルードは神だというのになんてところで暮らしているの!と痛く感じた。

というのも、住処がめちゃくちゃなのだ。


「寝られる場所があればいい」

とルードは言うが、寝る場所だけ“物が置いていない“という状態。

そもそもその寝る場所にはベッドもなく、地面。地面が丸見えというだけなのだ。

そしてそれ以外は食べかす、骨、金貨、王冠、剣、雑貨類が積み上げられており

その山が連なっている。雑貨の山脈である。


「これはやりがいがありそう…」


この状況に圧倒され、思わず口に出てしまった。

それから次に気になるのが食事問題。

そこの骨の山を見るに明らかに調理はしていない。リーティーは目を合わせないように

恐る恐る訪ねた。


「あの…ルード様はいつも何を召し上がっていますか?」

「生肉だな」


やっぱり。

孤児院での料理の腕を生かして、ルードに生以外の食べ方を知ってもらおう。

「生肉より美味しいものをたくさん作ります。」

「興味ないな」

「……」

リーティーは苦笑いをした。


それと最後に気になったこと…それは、匂い。

この住処は中が丸くて広い、ドーム状の洞窟だが

いわゆる生ゴミと皮脂の匂いがついた洗濯物のような匂いが充満している。

言ってしまえば、ともかく臭いのだ。


「まずはここから始めましょう。」


リーティーは食べかすやらゴミと思われるものから片付けていくことにした。

「これと、これと…」

どんどんゴミの山ができていく。

その横にルード。

「これだろう、それに…」

と、戻している。


真横に人間の形が急に現れたので、とてもびっくりした。

「ひえ!!あ…あのルード様…なぜ戻されるのでしょう…か。」

「なぜって、これは私のコレクションだからだ!」

「え!」

「これは私が初めて狩った、北の大地の魔獣の角…」

「これは私が風邪気味の時に狩った東の沼の主の鱗…」

と、一見ゴミのように見える物を一つ一つつまみ、語っていく。

え!これ全部、思い出の品!?と驚きつつ悩んだ。

これではキリがない…

「じゃ、じゃあ、ルード様の自慢の10個だけ選んで、飾ると言うのはどうでしょう…?あとは一旦リセットして、これから先に自慢できるものが増えたら、今選んだ10個から入れ替える、という『ルード様ベスト10コレクション』…です!」

リーティは恐る恐るたずねた。なにしろ何百とも言えるこの量から、たった10個を選べと言うのだ。

「なるほど、それは面白いな。ふむ…どれがいいだろう…」


よ…よし、うまくいった。

リーティーは心の中でガッツポーズをした。


それからせっせとゴミを運び出していると

ベスト10を選び終えたルードが出てきた。

「出かける。逃げるんじゃないぞ。」

「はい、絶対に逃げません」

リーティーはルードの表情がギリギリ見えるか見えないかくらいの

向こう側を見て答えた。会話を少ししたからと言って、もちろん顔は見れない。

「……」

何か言いたげだったが、苦い表情をしてルードは出て行った。

ああ、普段の生贄の娘なら、千載一遇のチャンスとばかりに逃げるのだろうな。

と感じ取れたのだった。

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生贄ちゃんはじっとしてない 兎壱にむ @toichi_nimu

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