国家による「愛」の統制

 近未来の日本、愛が国家資格化された社会に生きる、ひとりの高校生の少女のお話。

 まさに管理社会かくあるべしと唸ってしまうような、ゴリッゴリのディストピアSFです。
 とにかくSFらしさ、ディストピアらしさがものすごい!

 個人的に好きなのはやっぱり【ピアス】と呼ばれる装置。
 脳で直接電子的な接続を可能にするためのガジェットで、その説明をただ読んでいるだけでもワクワクしてしまいます。
 また、もっと大きな舞台としての設定、「国家による愛の統制という思想のコントロール」という管理社会っぷりも素敵。

 これらの骨太なSF的要素が魅力的なのは間違いないのですけれど、なにより特徴的なのがそれを語るための物語そのもの。
 主人公の内面にピッタリ寄り添った一人称。どこまでも生っぽい人間の手触りというか、「先述の未来らしいあれこれがあってなお結局はそこを離れることができない」感覚がもう本当に大好き。

 とても重厚で読み応えのある物語でした。【ピアス】の物理的な造形というかデザインが好き。