穴とピアス

志村麦穂

0 探しているんだ

 息が詰まる。

 私はずっと探していた。例えば、被った布団の奥底にありはしないか。水洗トイレの流れて行った排水溝の先に。使われていない教室の、使われていない学習机の空っぽの引き出しに。逃げ込んだ深夜の高架橋の下に。砂場を堀り進めた地面の下に。

 探しているんだ。

 どこかに開いてはいないか?

 慌てて走り去る兎はいないか?

 行き詰った、息の詰まった世界に開いた穴が。

 ここから逃げ出す穴が。

 どこかにありはしないだろうかと。

 探しているんだ。ずっと、探しているんだ。

 見つからないんだ。

 眠れない真夜中をもがいて、宙を掻いて、月明かりに足掻いて。気が付けば、毎朝、ベッドの上で目が覚める。

 私は恐れている。本当はどこにも、そんなものはないのではないか。

 だとすれば、私は。

 私は……。

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