目覚めればひとり

 目覚めれば女はいなかった。

 そもそも女がいたのかどうかさえ、私は知らない。


 重い足を動かしベランダに出れば、川面はまばゆく陽に照らされていた。

 むっとする蒸気が階下から昇ってくる。


 今日も真夏日になると、隣のテレビが明るくさえずる。

 

 電気屋に電話しなければと踵を返す足元に。

 薄翅蜉蝣うすばかげろうが一匹、その生を全うしていた――。


(完)

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薄絹の女――真夏の夜の夢 藍染 迅@「🍚🥢飯屋」コミカライズ進行中 @hyper_space_lab

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