月下の欲望

 女の体は自ら光を発しているかのように、闇の中でひたすら白かった。

 ぼやけた私の頭が働く前に、女は私の胸に纏わりついていた。


 まるで重さを感じさせない裸身は、私の上を薄絹のように滑り貪欲に私を貪った。

 欲望に駆られて女を抱きしめようとしても、私の腕は夢の中のように重く、女の体はふわふわと頼りなかった。

 

 私の肌だけが子供のような敏感さで、女の産毛の歓びに顫動せんどうする響きを聞いていた。


 月明かりにうっすら浮かぶ背を反らせて、女は頂を迎えた。

 私は光の玉になり、泥濘ぬかるみのような快感の底に飲み込まれていった……。


 気付けば、ほんの僅か白み始めた空を見上げ、女はベランダに立っていた。まだ残っている月の光を川面の波が弄んでいる。

 朝の色が濃くなるにつれ、女の影は薄くなるように見えた。

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