エピローグ

 その後、俺は一度だけ見逃してもらえることになった。命を救ってもらった恩義だそうだ。

 しかしその代わり、センを連れていくとのことだった。どうやら本当に魔物が増えてきて大変らしい。

「それじゃあね、先生」

「ああ」

 センは涙目だった。俺も目頭が熱くなる。思い返してみればあっという間だったけど、とても楽しい時間だった。

「セン」

「……なに?」

 俺は小さく、自分の名前を告げた。

「もしどうしようもなくなったら、俺の名前を呼んでくれ。どこにいてもかけつける」

「……分かった」

 それ以上の言葉はなかった。お互いに背を向け、それぞれの道を歩き始める。俺はまた、独りでの逃亡生活に戻った。

「先生、か」

 自分に向けられたその敬称を、口の中で転がす。

「……悪くないかもな」

 魔物が増えてきているなら、センのような実力者はもっと必要になるはずだ。彼女だけに任せるわけにもいかないし、もっと教え子を増やしてもいいかもしれない。

 次はどんな相手に呼ばせることになるだろうか。そんなことを考えていると、不思議と一人でも寂しくならないのだった。

 

 彼の育てた冒険者たちが、後の伝説となるパーティーを組むのは、まだ先の話。

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逃亡勇者は後進を育てたい 東赤月 @AzumaAkaTuki

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