第9話 その後
人間に偽装しながら長きにわたって領民を食い物にした吸血鬼一家は、多数の精鋭と聖女を犠牲にしながらも、滅ぼされた。
神殿はこの討伐で亡くなった者たちを英雄として、その名を記した石碑を立て、長く人々が英雄たちのことを忘れないようにした。
━━真夜中に、その石碑を見る者がいた。
深くフードをかぶって顔を隠した二人だ。
片方は小柄で、子供のようだった。
もう片方は体型の見えにくい服装でも女性だとわかるスタイルの持ち主で、フードからは銀色の髪がのぞいている。
真夜中の暗闇の中で、石碑を見上げながら、つぶやく。
「……いつか必ず、お前に報いを受けさせてやる。この者たちの名に誓って」
もう一人の人物は肩を揺らして、言葉では応じなかった。
しばらくそうしていたが、不意に石碑に背を向け歩き出す。
銀髪の女性は不承不承という様子で、一拍遅れてその背を追った。
……この国ではしばらく、吸血鬼による被害は報告されていない。
それはまぎれもなく、英雄たちの勝ち取った成果だった。
光からの逃亡 稲荷竜 @Ryu_Inari
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