第3話 山育ち

 僕が山でフナばあさんの小屋でお世話になって早くも一年がたとうとしていた。

 僕が山賊に襲われたのが昨年の夏ごろで、実りの秋に感謝し、吹雪が小屋をがたがた言わしていたと思ったら、芽吹く春を迎えていた。そして、波呂の恵みにも感謝していたと思ったらまた夏が来ていたのだった。そんな風に、フナおばさんとの毎日はとても刺激的過ぎてあっという間だった。

 「うお、今日はなかなかでかいのがかかっているな…今晩はごちそうかな」

 気づけば狩りも上達し、自分の仕掛けた罠にも動物が引っかかっていることも増えてきた。

 「ばあちゃんただいま!ほら見て!このでっかいシカ」

 「ほお~こりゃまた大物だね」

 「もちろん!」

 「よし、今日はこいつでパーっと行こうか」

 「やったね!」

 山の恵みというのは、なんでこんなにもおいしいのだろうか。

 「余ったとこは、まあ魔法で冷やしとくかね」

 「ギルドには卸さないの?」

 そう。僕もあまり行ったことないのだが、この山のふもとにはそれなりの村があり、そこでは動物の買取を行っているのだ。他にも、魔獣の討伐依頼を出したり、ちょっとしたイベントの運営や村全体の運営も一任されている。よくわからないけど市役所みたいなところだ。市役所がどんなところかはわからにけど、きっとギルドみたいなところなんだろう。

 「まあ今は夜も深いし、それにあんたがしこたま肉を食うからもう売れるほとんどないよ」

 フナばあちゃんがいたずらっ子のように歯をニット出して笑いながら言う。

 「う、だってめっちゃおいしかったんだもん…」

 「育ちざかりは面倒くさいねえ…」

 「も、もう!うるさいよ!ばかフナばあさん」

 「バカとは何だい!言葉には気を付けるんだよ!」

 「ばーかばーかばかばあさん!」

 「ふん!クソガキが!」

 「なにおう!そこまで言うなら見せてやる!このスーパーハイパーファイアボールを…」

 「ちょっと!家の中で魔法使うんじゃないよ!」

 気づけばこんな風にばあちゃんと馬鹿を言う仲になるほど、僕はここを心の底から気に入っていた。国にいたころは、こんな風にちゃんと叱ってくれる人はいなかった。みんな気を使って、へこへこして、よそよそしい。両親なんかも僕を都合のいいように扱っていただけで、とても家族とは思えなかった。

 だから、ばあちゃんが愛をもって僕をみてくれていることが本当にうれしいんだ。

 何時しか僕は、国のことを忘れ、ここで一生暮らすことばかり考えていた。






 「おい第一王子はどこ行ってんだよ!」

 「しらねえよ!また業務ほっぽりだして遊び惚けてんだろ!」

 「お、おい大変だ!第一王子が、第一王子が暗殺されちまったぞ!

 「「な、なんだってえええええええ!」」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

絶対王政空前絶後の異政界~赤字国家の再建に向けて~ 青虫智明 @tmk14

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ