世界を聴き、奏でる者

 歌や音楽で世界の調和を保つ者、『巡楽師』ディンクルパロットの、旅と冒険の物語。

 いわゆる異世界ファンタジー、それも「これでもか!」ってくらいファンタジーらしいファンタジー作品です。
 設定から物語から語りの調子から、すべてがしっかり異世界してくるところが魅力のお話。
 空想の異世界に求めるいろんな魅力や愉しみを、たっぷり高濃度で浴びせてくれます。

 特徴的なのは文体というか、文章そのものが主人公の手記という体裁をとっていること。
 主人公、ディンクルパロットさん自身の見たことや感じたことを、業務報告のために必要な形で記録しているため、その記され方そのものに感じ取れる、彼の輪郭のようなものがとても好きです。

 具体的に言うなら、例えば手記の締めが毎回なんらかの食べ物の話題になっていたりするところ。
 単に、各地で食べた美味しい物に強い関心がある、要はグルメか食いしん坊ってことなんですけど、おかげで「やたら食べてばっかいる人」みたいなイメージになっているのが楽しいです。

 結構な大冒険でありながらもハード過ぎないというか、童話や児童文学のような優しい世界であるところも素敵な物語でした。