7月13日 休み時間

 休み時間の読書中であった。いきなり”お金をかせ”と言われたのだ。


 自分は読書をやめ顔をあげると、知っていそうで知らない顔があった。思わずあなたは誰なのかと聞き返してしまった。あ、思い出した。この前のクラスマッチにて大量の女子生徒と写真を取っていた男ではないだろうか。


 なぜ自分に借りようとする。それよりも女子に借りたらどうだ。仲良くもない自分に借りるわけがわからない。シェイクスピアの有名な言葉に”金を貸すと、金も友達もなくしてしまう”というのがある。この男とは友達ではないのだがまず自分は金を貸そうとは思わない。


 そもそもこの男が返す保証がどこにある。なにか保証でもつけてくれるのかそしたら安心して貸そう利息つきで。信用できない相手に貸す方がおかしいであろう。


 今は小さい額かもしれないが、将来もっと大きい額を貸してと言われるかもしれない。まず金の貸し借りにいいことはないのだ。


 貸すことが簡単なのに対して返してもらうことが難しいのである。そして返してもらうことができなければ法的手段もあり得る。返してもらわなければ罪なのだ。真実お金を返す気であり、お金を返せる見込みがあったのであれば、罪は成立しないのだが返すと言って返さなかったり、一度も払わなかったりした場合は罪になる。契約を守らないことを法律では「債務不履行」といい刑法第246条第1項、第2項によって詐欺罪が成立する。


 法的手段を取るには証拠がいる。口約束だけでも貸し借りは成立するが借用書や金銭消費貸借契約書があるとれっきとした証拠になる。ただ法的手段はめんどくさい。費用もかかるのだ。両方に特はなくその二人の仲を引き離すだけだろう。だから自分は金は貸し借りはしないのだ。


 たかが数百円の金の貸し借りでここまで考えたことに笑ってしまい、笑顔で丁重に断った。そしてなにか言われる前に読書を再開した。その昼その男は昼飯が買えなかったらしい。自分は美味しく学食で食べてていたのだが。

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