太陽が朝を告げていくような物語

 この物語は戦争を抜きには語れません。しかし戦争を題材にしていながら、勇敢さや苛烈さはほとんど描かれません。むしろ、感情の入り込む余地のなさそうな戦場であっても優しさを持っている主人公がいます。

 その象徴として何度も登場するのが手紙です。手紙からは、敵国の兵士であっても日常があったことが色濃く感じられます。また、そのような日常を暮らしている人であっても、戦争となれば相手を殺すことを強いられてしまう不条理が暗に伝わってきます。

 このような手紙を日々戦場で集めている主人公は、武器に代表される「非人情」とは対照的な「感情」を敵味方問わず受け継ぎ、抱えていくことを比喩のように象徴づけられています。そして憎悪が支配する場に「感情」がさしこんでいくのです。

 結末はぜひこの作品に実際に目を通して知ってほしいです。この作品、意外性のある展開で、結末に触れたくてもできないので、本当は言いたくてしょうがないのですが、やめておきます。