濡れた足指

 不気味なものが人を惹きつけることが、稀にある。本作はその一つである。

 様々な角度から考察でき、かつ、深い考察に耐えられる物語だ。沈思という言葉があるが、作品の本質を掴もうと沈めば沈むほど強い水圧にさらされていく。うすらぼんやり見える底は思わせぶりに光り、水面にでようという気持ちを麻痺させてしまう。

 最初から最後まで、人魚の微笑によって彩られた秀作だ。

 必読本作。