〝呪い〟というもの

 恐ろしい怪異が見えてしまう人と、その人の相談に乗る人のお話。

 ホラーです。主人公の体験した異常な怪現象、その恐ろしさや不気味さが光るお話……なのですけれど。
 でもただの告白形式の怪談では終わらないところがなお怖い作品。

 本番はむしろその相談を受けた側の回答、つまり「これから」の部分で、でもどうしても少なからずネタバレになってしまうためご注意ください。



〈 以下ネタバレ注意! 〉

 やられました。思わぬところから迫ってきた恐怖感。
 いつの間にかすっかり主人公に同調していたというか、彼の言い分を疑いもせず信じ込んでいたことに気づかされた瞬間の衝撃。
 そんな保証はどこにもないのに、なぜか勝手にそういうものだと思い込んでいた、その安全地帯を引き剥がしにくるような終盤の展開が本当にゾクゾクきました。

 知らぬが仏とはよく言ったもの。
 もう知る前には戻れない……なるほど、確かにこれもまた〝呪い〟です。

 序盤から中盤の怪異、その絵面の恐ろしさそのものも単純に好きです。
 小粒ながら切れ味鋭い、しかも二度刺してくる凶悪なホラーでした。