〝バーチャル山〟という恐るべき概念
- ★★★ Excellent!!!
バーチャルYouTuberの「でかい山」さんが、自主企画に乗じて始めた小説を書いてみたお話。
実在のVtuber自身の語り、という体裁のホラー系SFです。
まずもって〝バーチャル山〟であるところの「でかい山」さん、という存在のインパクトが凄まじいのですけれど、実在の方です。作者当人です。
絵面もすごいことになっているのでぜひ実物を見てほしい……。
〈 以下ネタバレ注意! 〉
物語の内容そのものは非常に独特というか、ルビ機能を思わぬ形で駆使した技巧的な作品です。
フレンドリーに語りかけてくるバーチャルな存在。しかしバーチャルであればこそその正体は不明で、どんなに邪悪な存在でもおかしくない……というホラー作品なのですけれど、肝は「直接こちらに語りかけてくる」という形式そのもの。
まして実在のVtuberですので、つまりこれは読者自身の物語という形になります。
そのうえで、果たして読者たるわたしたちは、一体〝どちら〟を信用するか?
よく考えたらどっちもその実態には何の保証もなく、なんなら振る舞いとしては人間を名乗ってる方がむしろ……という側面まであったりして、この詰みっぷりがとても恐ろしいお話でした。
だって他にどうしてみようもない以上(きっと自分でも同じように説明・説得する)、もし自分が彼と同じ目に遭ったら同様に見捨てられる、ということなので……。
☆の仕様に関するコメントが地味に好きです。
有用だし有益、でかいだけでなくとてもえらい山のお話でした。