〝バーチャル山〟という恐るべき概念

 バーチャルYouTuberの「でかい山」さんが、自主企画に乗じて始めた小説を書いてみたお話。

 実在のVtuber自身の語り、という体裁のホラー系SFです。
 まずもって〝バーチャル山〟であるところの「でかい山」さん、という存在のインパクトが凄まじいのですけれど、実在の方です。作者当人です。
 絵面もすごいことになっているのでぜひ実物を見てほしい……。



〈 以下ネタバレ注意! 〉

 物語の内容そのものは非常に独特というか、ルビ機能を思わぬ形で駆使した技巧的な作品です。

 フレンドリーに語りかけてくるバーチャルな存在。しかしバーチャルであればこそその正体は不明で、どんなに邪悪な存在でもおかしくない……というホラー作品なのですけれど、肝は「直接こちらに語りかけてくる」という形式そのもの。
 まして実在のVtuberですので、つまりこれは読者自身の物語という形になります。

 そのうえで、果たして読者たるわたしたちは、一体〝どちら〟を信用するか?

 よく考えたらどっちもその実態には何の保証もなく、なんなら振る舞いとしては人間を名乗ってる方がむしろ……という側面まであったりして、この詰みっぷりがとても恐ろしいお話でした。
 だって他にどうしてみようもない以上(きっと自分でも同じように説明・説得する)、もし自分が彼と同じ目に遭ったら同様に見捨てられる、ということなので……。

 ☆の仕様に関するコメントが地味に好きです。
 有用だし有益、でかいだけでなくとてもえらい山のお話でした。