Chapter.8 バレンタイン編

 ううう、まじで寒い。そりゃあ雪降ったら寒いよね、自然の摂理だよねわかりますよ。あ、見て見て後輩くん。ふーっ……ほら、息白い! ふふ、ちょっと今更かな。


 ところで後輩くん、今日って何の日か知ってる? 本日二月十四日はね、何と……自動車保険の日です! えへへ、知ってた? ん、なんかすごい肩落としてるけど大丈夫?


 あはは、冗談に決まってるでしょ! まあ今日はほんとに自動車保険の日なんだけどね、ネットで調べたから間違いなし。


 バレンタインデーだよね、バレンタインデー。勿論覚えてるよ、安心しなよ! 超絶博識な雪歌先輩が、覚えてない訳ないじゃん? 安心していいよ?


 ……はい、これ。


 え、何で笑ってんの? は、ハート型だから!? いや別にいいだろハート型でも! こ、これしか型がなかったんです! むう、そんなに笑いやがって……


 ……嬉しい? そ、それならよかったけどさ。


 というかボク、あんまり料理とかしたことなかったから、めちゃめちゃ大変だったわ。料理上手の友達が手伝ってくれたからよかったけど、何というかほんとに大変だった。


 だから心して食べてね、後輩くん? あっ、勿論味の方は美味しいよ! 一応試食したからその辺は心配しないで大丈夫だからね?


 それにしてもバレンタインに雪が降るって、何というか美しすぎだよね。まーじで綺麗。ほんと驚くほど綺麗。空から真っ白な結晶が降ってくるって、考えてみると中々幻想的だよなあ、写真撮っとこ……


(シャッター音)


 あ、そうだ。後輩くんと、その、やりたいことがあって……え、えっと、笑わない? 笑わないよね? その、ツーショット、撮りたいなあ……?


 わ、笑わないって言ったじゃん! 何て奴だよ! むう、これはお寿司奢り案件だな。


 え、雪歌先輩が可愛かったから、って……な、何恥ずかしいこと言ってんの!? こ、後輩くんって意外とそういうところあるよね。なんか生意気。


 そ、それじゃ撮ろ! インカメにして、はい、撮るよー……


(シャッター音)


 よし、撮れた、ばっちり! えへへ、どうもありがと。嬉しいな。


 雪、弱くなってきたね。これくらいなら傘ささなくても大丈夫そうだな……よっと。


(傘を閉じる音)


 ……手空いたから、繋いであげてもいいよ?


 ……ふふ、あったかい。


 そういえばこの辺、人少ないね? まあ結構歩いたし、町の外れに来てるしそりゃそうなるか。


 ……ねえ。ぎゅって、してほしいな。


 ……あったかい。えへへ、後輩くんって身体、大きいよね。いいなあ、ボクももっと高身長がよかったなあ。まあ別に、平均よりは高い方だけどさ。


 ……耳、貸してくれる?


 ……大好きだよ?


 あははっ、やっぱり後輩くんって耳弱いよね、びくってなった。可愛いね?


 …………?


 ……いいよ。


 …………。


 ……ふふ、後輩くんの唇、ちょっとがさがさしてるね。ダメだよ、ちゃんとリップクリーム塗らないと? 雪歌先輩からのアドバイス。


 ……ねえ、もう一度だけ、したいな。


 …………。


 ……やっぱりがさがさ。


 でもすごく、幸せ。


 ありがと、後輩くん。ほんとにほんとに……大好き。


 これからも、よろしくね。

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写真部の先輩に振り回される日々 汐海有真(白木犀) @tea_olive

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