Chapter.7 クリスマス編

 あー、さっむ。ほんとに寒くね……まじで冬ってやばいよね、梅雨生まれのボクには厳しい世界だよ……


 でもイルミネーションめっちゃ綺麗だね、やばいくらいきらっきらだね! いろんな色があるし、見ているだけで何だか心がうきうきしちゃうよね。ボク、冬のこういうところは大好き。写真撮っちゃお……


(シャッター音)


 ……えへへ、いい景色撮れた。嬉しいな。


 というか後輩くん、クリスマスにボクのことを誘うなんて、何というか積極的じゃない? ……何でそっぽ向くんだよー、こっち見ろよー! ふふ、やっぱり後輩くん、近くで見るとかっこいいね。


 ……手、繋がない?


 ……えへへ、あったかい。あれ、前に繋いだときは冷たいなあって思った気がするんだけど、不思議だね。後輩くんってもしかして、夏に手が冷たくなって、冬に手があったかくなるタイプの人間? 重宝がられるじゃん、よかったね!


 思えば後輩くんとも、割と長い付き合いになったね。まあまだ出会ってから一年経ってないし、そんなに長くもないか。


 ……色々あったね。部室で出会ってから今日に至るまで、ほんとに沢山の思い出ができたよ。ボク、撮った写真をよく見返したりするんだけど、その度にちょっとだけキミのことを思い出すんだよ。嘘じゃないよ、ほんとだよ?


 昔さ、後輩くんが言ってくれた言葉、覚えてるよ。「もし苦しい悩みがあったら、いつでも相談してくださいね」って、ボクに伝えてくれたよね。ボク、あれ、ほんとにほんとに、嬉しかったんだよ?


 ……折角だしちょっとだけ、相談してあげるよ。


 ボクね、お母さんがいないんだ。あ、勿論昔はいたよ? ボクが幼かった頃に、癌になっちゃって、そのまま亡くなっちゃったの。


 辛かったよ。ボクは家族のことが大好きだから。どうしてだよ、って何度も世界を呪いかけた。すごく苦しかった。


 でもその度にね、ボクはお母さんの写真を見た。お母さんは写真の中ではずっと、残っていてくれた。記憶からは段々と消えていってしまうお母さんを、ボクは写真を通して、覚え続けていることができた。


 ……だからボクは、写真が大好き。


 でもさ、やっぱり寂しいんだ。勿論お父さんは、ボクにすごく優しくしてくれる。でも時折、心の中にぽっかり空いた穴がずきずきと、痛み出すんだ。


 はい、そういう悩み。ごめんね、ちょっと重い悩みだったね? あ、この話写真部の奴らには話してないから、ナイショにしてね?


 ……え? ボクが辛いときは、いつでも側にいてくれるの?


 あははっ、いや無理だろ。キミだって暇じゃないときくらいあるでしょ、お風呂入ってるときとかにボクから電話かかってきたらどうすんだよ?


 ……でも、嬉しい。ありがとう。


 後輩くんは、優しいよね。その優しさは、ずっと大事にしてね。


 人に優しくできることは、それだけですごく尊くて、価値のあることだから。心ない誰かが偽善だと貶したとしても、キミの優しさが美しいものであることは、決して偽りじゃないから。


 超絶世界が見えてる雪歌先輩が、保証してあげる!


 え、話がある? 何、改まって。まあ聞くけど。


 …………。


 ……え。


 ……キミ、ボクのことが、好きなの?


 え、そうなの? まじ? えだって、キミからそういう好意とか感じたこと特にないよ? どうしたの頭抱えて。……は、鈍感すぎるって!? いやそんなことないし! ボク、そういうことにはめちゃめちゃ察しいいはずだし!


 ……あははっ。


 ……ボクも、キミのことが好きだよ。


 恋とかしたことなかった。よくわかんなかった。でも今は自信を持って言える、ボクはキミのことが好き。大好き!


 よかったね、雪歌先輩の貴重な初恋を貰えて? 嬉しい? ……嬉しいって、率直に言われると何というか恥ずかしいな。えへへ。


 それじゃ、付き合おっか? ……うん、これからは恋人としてよろしくね!


 お母さん、喜ぶかもな。大切な一人娘に彼氏ができたって聞いたら、きっと嬉しがるんじゃね? あはは、よかったね、お母さん!


 そういえば立ちっぱなしだね、ちょっと座る? あそこにベンチあるしちょうどよさげでしょ、行こ!


 ……ふう。それにしても、ちょっとびっくりした。告白自体は実を言うと何回かされたことあるんだけど、どれも断ってたからなあ。いきなりが多かったし。すれ違っただけで恋されても困っちゃうよ。


 ……ねえ、後輩くん。恋人繋ぎ、しよ?


 ふふ、やっぱりあったかい。生きてるカイロって感じ。……あはは、褒めてるって!


 ……大好きだよ、後輩くん。

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