1話 必然の邂逅

自分の保有する常識の上でそれが可能なのは万象の理に作用し、強靭で甚大な魔力を有する高位の魔族…魔女へクセ

強靭な魔力を有する純血統の魔女へクセは、その存在を危険と看做みなした祓魔師に全て虐殺ころされた…。


(この世界の何処かに、魔女へクセが…同族が生きているのだとしたら、それはとてつもない奇跡だ!)


藁にもすがる思いで、散乱している魔力石を一粒…また一粒と拾い集める。

夢中で拾い集めていくうち、唐突にそれは現れた。

───というよりも、真珠を辿った先に居たと表現すべきかもしれない。

「……………」

金色の双眸から静かに大粒の涙を溢しながら座り込んでいる女性は生気が非常に薄く、まるで幽鬼か何かの類のようでもある。

しかし、壊れた人形のように虚ろな目で宙を見つめるこの彼女こそが、魔力石を生み出した張本人なのだと同族由来の直感が告げていた。

───ここで捕まえなければ、彼女はきっと自分の前から消えてしまうだろう。

「グウ……」

死に焦がれるような…尋常ならぬ気配を嗅ぎとって、咄嗟とっさに彼女の長外套コートの袖に噛み付く。

「犬…?」

金色の硝子を嵌めたような双眸が、ようやく袖を咥えている白い獣を静かに捉えた。

憂鬱アンニュイで疲れた表情をしているが、意外にも確りとした人格を感じさせる声音で彼女は呟いた。

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へクセ───金の瞳の魔女 宵待 紗雪 @enoki_kaho0330

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