0話

「クウゥ…」

(……俺の命も、ここまでか)


浅い呼吸を繰り返しながら目を眇めかけた一瞬、彼の視界が雪の上に点々と散らばる銀色に輝く大粒の真珠を目敏く捉えた。


(…これはっ!)


迷わずに真珠を飲み込む。

こんな場所にある理由は分からないが、自分以外の“誰か”が落とした濃厚な魔力の塊は満身創痍である彼にとっては天の助けだった。

この真珠は単なる真珠ではない。

強力な魔力が凝縮された、いわゆる魔力石である。


(……ああ、濃い魔力が沁みていく)


1粒を飲み込んだだけでも、体内の大量の損傷が急速に修復されていくのが解った。

だが、おかしい。

魔力を帯びた世界線ならば、地に足をつけた時点でそれと分かるのに、どうやらこの世界には魔力が存在しないようだ。

ならば、この濃厚な魔力を帯びた真珠は一体誰が生み出したのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る