コイドロボウ
海月
コイドロボウ
春♀︎(18)
雪♀︎(18)
夏樹♂︎(25)
約25分
__________
春M「気づいたら好きになっていた。
貴方は、私の心も頭も青春も全て奪った。」
間
夏樹─タイトルコール─「コイドロボウ」
**********
春「雪、おはよう」
雪「春ちゃん!おはよう」
春「今日は暑いね〜」
雪「そうだね」
春「あ、今日の帰りさ、コンビニにアイス買いに行こうよ」
雪「いいね!」
春「じゃあ、約束!」
雪「うん!じゃあ私そろそろ席着くね」
SE:チャイム
間
___SHR後___
夏樹「連絡は以上だ。……あ、そうだ、春」
春「はい?」
夏樹「今日の放課後話があるから、ちょっと残ってくれ」
春「え〜!今日は用事があるんです!」
夏樹「雪とコンビニ行くだけだろ?」
春「え?!なんで知ってるんですか?!」
夏樹「さっき聞いてた」
春「あー!盗み聞きは良くないですよ!」
夏樹「はいはい。雪、放課後ちょっとまっててくれるか?」
雪「全然大丈夫ですよ」
春「雪〜!」
夏樹「じゃあ、放課後、数学準備室にくるように」
春「…はぁい」
__________
雪「はぁ、やっと放課後だね〜」
春「じゃあ先生のとこ行ってくるわ」
雪「うん!昇降口で待ってるね!」
春「何の話なんだろ…?」
雪「なんかしたの?」
春「何もしてないよっ!」
雪「ふふ。春ちゃんなら大丈夫だよ」
春「じゃあ行ってくるね」
雪「うん!」
SE:ノック
春「失礼します」
夏樹「あ、来たか」
春「はい」
夏樹「そこ座れ」
___座る___
夏樹「お前、前回テストの結果悪かったろ」
春「(ギグっ)」
夏樹「このままじゃ大学受からないぞ」
春「えぇ〜!先生〜。そんなこと言わないでくださいよ〜
私だって頑張ってるんです〜」
夏樹「頑張ってるのは分かるが、ほんとに受からんぞ。もうすぐ期末テストだから、今度は頑張れよ」
春「はぁい」
夏樹「まぁ、お前はやれば出来るんだから」
___ノートを春の頭に___
春「…え」
夏樹「期待してるぞ(微笑む)」
春「え…あ…」
夏樹「なんだ?」
春「……」
夏樹「?」
春「……」
夏樹「どうした?」
間
春「……先生って彼女いるんですか(ボソッ)…」
夏樹「……え?」
春「あ!え!あ、何でもありません!ありがとうございました!頑張ります!失礼します!」
夏樹「あ、ちょ!」
__逃げる__
春「私…なに言ってるんだろ……」
春M「窃盗容疑その1。私のキモチ」
**********
雪「あ、春ちゃん〜!早かったね?」
春「え、あ、うん」
雪「どうしたの?なんかあった?」
春「いや、あのね、」
雪「うん」
春「先生に…彼女いますかって聞いちゃった…」
雪「え?」
春「どーしよ!!私明日から学校行けないよ!
うわぁぁぁ、どうしよう、雪〜!」
雪「春ちゃん落ちついて!」
春「先生にね…頭ポンってされたの……ノートで」
雪「うん」
春「それで思わず、………」
雪「そっかぁ」
春「先生…かっこよかったなぁ…」
雪「確かに、夏樹先生、顔整ってるよね。
結構、女子から人気あるしね」
春「えぇ?そうなの?」
雪「うん、春ちゃん知らなかった?
なんか、夏樹先生のガチ恋、結構多いみたいだよ?」
春「へぇ〜そうなんだ…」
雪「なになに?春ちゃんも夏樹先生のこと好きになっちゃった〜?」
春「え?!そんなんじゃないよ?!」
雪「ほんとかなぁ?かっこよかったんでしょ?夏樹先生」
春「うん…」
雪「頭ポンってされてドキドキしちゃったんでしょ?」
春「うん…」
雪「ひゃゃゃ、いいなぁ!先生との恋愛なんて青春って感じ!」
春「そんなんじゃないよ〜!はぁ…明日気まずいな」
雪「大丈夫だよ、普通にしてれば」
__________
雪「春ちゃん、おはよう」
春「雪〜…おはよう」
雪「なんか、元気ない?」
春「昨日全然眠れなくて…。
昨日のドキドキと、私の言動が恥ずかしくって、それで、考えてたら寝れなかったの!」
雪「ふふふ、もう春ちゃんったら先生の事しか頭にないね」
春「え〜?」
SE:チャイム
夏樹「ほら、席つけ、SHR始めるぞ」
春「あ、先生…」
夏樹「おい、春、席つけ」
春「え、あ、はい」
間
夏樹「全員いるな。……もうすぐ夏休みだ。だからって気を抜くなよ」
春M「先生…いつもと一緒だ。…私の言ったこと気にしてないのかな…」
夏樹「夏休みの前に、期末テストがあるからな。
3年の一学期の成績が1番大事なんだ。全員気を引き締めろよ。」
春M「私の気にし過ぎなのかな…。あんなこと言ったのに、気にならないのかな…。それとも、慣れてるとか?ガチ恋の子も多いって言ってたし、告白とかされたことあるんだろうな…」
夏樹「……あと春、今日も放課後、数学準備室に来るように。話がある」
春「え?」
夏樹「連絡は以上だ」
__________
雪「春ちゃんまた呼び出し?」
春「どうしよう雪〜!昨日の事聞かれるのかな?
私、怒られるのかな…?あぁ、なんで私あんなこと言っちゃったんだろ…!って言うか、そもそも、先生が悪いんだよ!あんなことされたら誰だって好きになるよ。だからガチ恋も多いわけで…」
雪「春ちゃん、落ち着いて」
春「落ち着けないよ〜!」
雪「でもさ、先生、態度普通だったよね?」
春「え?」
雪「ほら、春ちゃんに対して。何事も無かったみたいな。あんま態度変わってなかったなぁって。
やっぱり慣れてるのかな?」
春「やっぱりそうなのかなぁ」
雪「春ちゃん、気になっちゃう?」
春「……そんなんじゃないよ!」
雪「ふふ」
__________
SE:ノック
春:「し、失礼します」
夏樹:「あぁ」
春「…」
夏樹「…どうした?」
春「え、あ、なんでもありません」
夏樹「そうか…とりあえず、座れ」
春「…はい。それで…なんですか?昨日の続きですか?」
夏樹「あぁ、昨日お前が、変なこと言い出したかと思ったら途中で逃げたからな」
春「ウッ………すみません。」
夏樹「まぁ、いい」
春「……」
夏樹「それでだな、春、夏休み、夏季補講受けないか」
春「え?」
夏樹「本当は特進クラスの奴にしか募集かけてないんだがな、春は大学を目指しているし、数学もそこまで苦手ではないし、特進クラスの奴らについていけると思うんだ。
まぁ、テキスト代もかかるから、親御さんにも聞いてみてくれ。」
春「あ…わかりました」
夏樹「…」
春「…」
夏樹「…あと、昨日の質問だがな…。」
春「…え?」
夏樹「いないよ。」
春「え、あ、」
夏樹「話は以上だ。気をつけて帰りなさい。」
春「……はい。」
__________
雪「春ちゃん〜!おかえり〜!」
春「雪〜」
雪「どうだった?なんか言われた?」
春「あー、うん。なんか、夏季補講受けないかって」
雪「そっかぁ、春ちゃん頭いいもんね!」
春「あと…」
雪「…ん?」
春「いないって」
雪「え?」
春「彼女」
雪「先生が言ったの?」
春「…うん。答えてくれた…」
雪「へぇ、それって脈アリなんじゃない?絶対先生も春ちゃんの事気になってるって!」
春「え!絶対そんなことないよ!」
雪「あるある!だから答えたんだよ!僕彼女いませんは、完全なアピールだよ!」
春「えぇ、そうなのかなぁ」
雪「そうだよ!」
春「でもさ、先生は大人だし…。そもそも先生だし。他の女の子にも人気だし…」
雪「なになに?嫉妬〜?」
春「そんなんじゃないよ!んもぉ、それに、私まだ好きじゃないよ。
好きって言うか…気になってるだけ」
雪「そっかぁ…。じゃあさ、夏季補講参加してみたら?」
春「え?」
雪「夏季補講参加したら、夏休みも夏樹先生に会えるんでしょ?」
春「うん、まぁ」
雪「じゃあ、参加してみなよ!それで確かめてみたら?
先生がほんとに、好きか、どうか!」
春「えぇ、でも…」
雪「スッキリするんじゃない?」
春「うん、参加してみる…」
雪「うん!」
春「そろそろ帰ろっか」
雪「そうだね!」
__________
春M「先生のことが頭から離れない。
あの時の笑顔が頭から離れない。」
春「私先生のこと…好きなのかな…」
春M「窃盗容疑その2。一目惚れ」
**********
春M「夏休み。色んなことがあった。」
夏樹「おい春!寝るな!」
春M「怒った先生も」
夏樹「そうだ。正解だ(微笑む)」
春M「笑った先生も」
夏樹「えぇ、それを俺にやれってか?(困る)」
春M「困った先生も…全部……」
春「先生」
夏樹「なんだ?」
春「先生って、生徒から人気ありますよね」
夏樹「え?そうなのか?自分じゃ分からんな」
春「ありますよ〜。生徒から…告白…されたこととかないんですか?」
夏樹「告白?んー、まぁ、あるかな」
春「そうなんですね。…断ったんですか?」
夏樹「そりゃあ、俺が生徒と付き合ったら捕まるよ」
春「そうですよね(苦笑い)」
夏樹「好きになってもらえるのは嬉しいが、困るな。その後生徒とも気まずいし、そもそも俺は先生だし」
春「……」
春M「気になってたけど、聞きたくなかった言葉。
私は生徒で、先生は先生。その差はどうしたって埋まらない。そんなこと、私が1番わかってる…。
そして、不純な動機で受けた補講はあっという間に終わりを迎えた。」
__________
間
雪「春ちゃん〜久しぶり!」
春「雪〜!久しぶり」
雪「夏休みどうだった?」
春「んー、まぁまぁかな。充実したよ」
雪「そうじゃなくて、夏季補講だよ!
先生と、なんか進展あった?」
春「進展?んー、ないかな」
雪「ないのか〜、残念」
春「でも…」
雪「ん?」
春「私…先生の事…好きだって、気づけた…かな」
雪「そっかあ!私、春ちゃんのこと応援するよ!
きっと春ちゃんなら大丈夫!」
春「でも…」
雪「…自信ないの?」
春「そうじゃないんだけど…夏休みにね、先生に、告白されたことありますかって聞いたの」
雪「うん。そしたら?」
春「あるって…。でも、断ったって。生徒からの告白は、困るって言ってた……」
雪「そっかぁ。でも、それはきっと、その子達の本気度が伝わらなかったんだよ!」
春「でも、私は生徒で、相手は先生だよ?……難しいかなって思う…。」
雪「だからアピールするんだよ!私本気で先生が好きなんです〜って!」
春「でも…」
雪「それに、卒業したら生徒と、先生なんて、関係ないでしょ?
好きになったなら、精一杯頑張らないと、後悔しちゃうよ?」
春「そっか…そうだよね!
私頑張ってみる。成功しなくても、この思いは伝えたい!」
雪「うん!私も協力するよ!」
春「ありがとう雪!」
_________
春M「それから、雪が考えてくれた、アピール作戦が始まった。」
間
春「(視線を送る)」
夏樹「…」
春「(視線を送る)」
夏樹「…なんだ?春」
春「え、あ、何でも…ありません」
春M「視線を送ってみたり…」
間
春「夏樹先生〜!」
夏樹「なんだ?」
春「お菓子焼いてきたんです!どうぞ」
夏樹「くれるのか、ありがとう」
春「はい!」
夏樹「後で食べるよ」
春M「お菓子をあげてみたり…」
間
春「先生〜!見てください!」
夏樹「ん?」
春「テスト!100点満点です!」
夏樹「おぉー、凄いな!頑張ったんだな!偉いぞ〜」
春「んもぉ、子供扱いしないでくださいよ!
もっと普通に褒めてください!」
夏樹「あぁ、ごめんごめん笑」
春M「テストで100点取ってみたり…」
間
春M「そんなことをしていると、時間はあっという間に過ぎていった。
卒業式まで、1ヶ月。残り1ヶ月。残り少ない時間の中、アピール作戦はあんまり効果を感じられなかった。」
間
__________
雪「春ちゃん、もうすぐ合格発表?」
春「うん」
雪「受かってるといいね〜」
春「落ちてたらどうしよう…」
雪「大丈夫だよ!春ちゃん勉強頑張ってたし」
春「ありがとう〜雪」
雪「うん!」
__________
間
春「雪〜!受かったよ〜!」
雪「おめでとう〜!」
春「これで、気が楽になるよ」
雪「そうだね〜!
先生には言ったの?」
春「え?」
雪「夏樹先生だよ」
春「ううん、言ってない」
雪「言ってきなよ!合格しましたって!」
春「そうだね、放課後行ってくるよ」
雪「ついでにさ、来年は私も、大学生です、生徒じゃないですって告白してきなよ!」
春「えぇ〜告白!?……んん〜…考えとく」
__________
SE:ノック
夏樹「どうぞ」
春「失礼します」
夏樹「春か、どうした?」
春「先生、大学合格しました」
夏樹「そうか!おめでとう」
春「ありがとうございます」
夏樹「夏に補講をした甲斐があったな」
春「……はい」
夏樹「…ん?どうした?」
春「…あの、先生」
夏樹「…うん」
春「私、春から、大学生です」
夏樹「あ、あぁ、そうだな」
春「私……。やっぱり、なんでもありません!失礼します!」
夏樹「……」
__________
雪「春ちゃん〜!どうだった?」
春「雪…、言えなかった…」
雪「え?」
春「好きだって、言えなかった…(涙目)」
雪「そっか…」
春「やっぱり出来ないよ…。先生を困らせたくない…。この思い伝えたいけど、でも!伝えれない……
困らせたくないの…。」
雪「そっか…、そうだね…、そうだよね…」
春「(泣く)」
雪「春ちゃん、頑張ったね、辛かったね」
春「……」
雪「……」
春「……」
雪「春ちゃん、あのさ、その思いだけでも、伝えてきたら?」
春「え?」
雪「告白じゃなくて、今までの好きな気持ちとか、辛かった気持ちとか、それだけでも伝えてみたら?」
春「…でも…」
雪「春ちゃんに後悔して欲しくないな。
春ちゃん、こんなに先生の事好きなのに」
春「……」
雪「卒業式の日にさ、手紙で渡すの。
そこに、春ちゃんの思いを書いて」
春「…でも」
雪「卒業式なら、次から気まずくなることもないし。
言わないで後悔するより、言って後悔した方がいいと思うな。私は」
春「……」
雪「まぁ、どうするかは、春ちゃん次第だけどね」
春「うん…ありがとう」
雪「私は春ちゃんの味方だから
応援してるよ!」
__________
春M「辛い。苦しい。悲しい。
そんな感情がぐるぐるして、伝えようか、どうしようか。答えなんかでなくて。
でも、もし、あと1年長くいられたら。
先生と離れたくない。そんなことばかり考えてる。」
春「私、やっぱり先生が好き」
春M「窃盗容疑その3。青春」
**********
春M「あっという間に迎えた卒業式。
先生に名前を呼んでもらえるのも今日で最後。」
夏樹「20番、中山春」
春「はい」
春M「名前を呼ばれて壇上に上がる。
卒業証書を受け取れば、もう、先生と生徒の関係じゃなくなる
ポッケに入った手紙を確認して、私は卒業証書を受け取った。」
__________
春「夏樹先生へ
3年間ありがとうございました。
私が先生に対して思っていたことを手紙にしました。
良ければ、最後まで読んでください。
私は、先生に恋愛感情を抱いていました。
気づいたら先生の事が気になっていて
気づいたら目で追っていて
気づいたら先生の授業が楽しみになっていて
気づいたら好きになって
気づいたら嫉妬して
気づいたら苦しんでいて
貴方は、私の心も頭も青春も全部奪った。
先生は、泥棒です。
私の恋の、泥棒です。
先生。
あなたを好きになって、苦しんで、それでも追いかけてた日々に、後悔はありません。
私、先生のこと…」
__________
間
春M「私は、大学生になり、普通に就職し、普通に彼氏ができ、普通に結婚し、普通に暮らしている。
あの頃は、何にでも全力だった。何にでも必死だった。
だからこそ、青春は特別で、輝いているものなんだと思う。
今となっては、いい思い出で、いい笑い話。」
__________
長い間
雪「ふーん」
夏樹「どうした?雪?」
雪「んー?先生宛にラブレターですよ」
夏樹「またか。誰から?」
雪「気になるんですか?嫉妬しちゃうな」
_手紙をゆっくり破り捨てる_
夏樹「雪が一番可愛いよ」
雪「ふふ、私も先生のこと1番好き」
夏樹「ああ」
__________
間
雪「私は貴方のコイドロボウ」
コイドロボウ 海月 @harusame_hau
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