カレーすなわち恋、彼女はその真実を噛み締める

 大学在学中になんとしても彼氏を作る。友人と盟約を結んでいる琉璃には意中の男子、高島がいた。友人に恋心をばらされるという最悪の出だしを経て、彼の好物がカレーであることを知る琉璃。そこから彼女のカレー探求が始まり、やがて一軒の中華料理屋で出される、メニューにはないカレーライスへ辿り着くのだ——高島が愛する至高の一杯へ。

 この作品、物語の大半がカレーを食べる琉璃さんで占められています。その中に詰め込まれた細やかな情景描写と濃やかな感慨もまた、基本的にカレーへ向けられているわけなのですが、しかし!

 それらが転機を迎えると同時、一気に雪崩れ込むのです。すなわち高島君との物語へ。その瞬間、読者の中でここまで描き込まれてきたすべてが意味合いを変じるのですよ。

 そう。文字にされた描写と文字にされなかった行間がパズルピースのように噛み合って、凄まじいまでの説得力に成り果せる。一途なヒロインを芯に迎えた恋物語へ!

 外連味の向こう側にある正解の味はまさに極上。どうぞご賞味あれ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)