4話 スキルホルダー
朝起きて意識の半分が眠った状態でのあくび。口を大きく開けて「はわぁ」と変な声を一つ…そのまま朦朧とあの言葉を唱える。
「ガチャ…」
と呟いた。
・スキルホルダー(小)
ガチャから出たスキルを保存することが可能。保存できるスキルは三つ
・雷魔法(下級)は削除されます
削除と同時に雷魔法の使い方をサッパリ忘れた。
「んーこれは…強いなぁ。スキルは一つしか持てないものかと思ってたけど、これがあれば何種類ものスキルを手に入れることができる様になっていくのかな」
(でも雷魔法を上書きしていくのか、、、これも保存してくれればよかったのに)
まだ起ききってない意識の中ふととんでもない事実に気づく。
「って、あっ!お前それ消したら火ぃ着けられないじゃん!何すんだよ!」
何かしたのは零である。
「あああぁぁ……こんなことなら焚き火消さなきゃ良かった…」
あまりの衝撃で目が覚めた後も、現実を受け止めきれずにやる気を失くしたこの日は周りを散策し、少量の毒々しい色のキノコと、日本の桃と似た様な木の実を見つけ回収するだけした。
「この食べかけの猪どうしようか…いやぁ!やっぱりサバイバルでみんなが通る道、枝コスコスをやるしかないのか?あれで火がついた人ほとんどいないぞ!?」
少し粘ったものの、腕に疲労が着々と溜まっていき腱鞘炎が怖くて煙すら立てられずに試みは終わった…
仕方なく猪は時間を掛けて埋めた。
次の日…
「ガチャ」
・水魔法(下級)
(うーん遅くない?どうせなら初日に出て欲しかった。川を見つけた後に手に入るとか嫌がらせだよね?)
「魔法系のスキルは下級ばかりしか出ないけどそういうものなのかな?もうちょい良い強い魔法とか欲しいなぁ」チラチラ
ステータスボードに視線を送って抗議する変人1名。
その様子を遠目からジッと見つめる目に零は気づかなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
前回の雷魔法の様に試運転しに魔物を探す零、前回の場所を探しているとちょうどいい所に猪野郎が現れた。
(とりあえずさっき適当に使った感じ…弱い水鉄砲みたいな魔法だった。つまり全MPを使えば…)
零は隠れて魔法を発動させる
しっかりと指向性を持たせる為に、右手の人差し指と中指で方向を決め、反動を抑える為に小指と薬指をもう片方の手で抑える…そのポーズはまるで銃の様だった。
(水弾を指先に…MPを全て込める…貫通する様に形を鋭く!)
最初は丸かった水弾はどんどん流動していき鋭さを増していく。
手銃の指先にはライフル弾の様になった水弾が出来上がっていた。
「喰らえ猪野郎…ぶち抜け!」
「 『水弾』 」
瞬間、パァン!といった破裂音とともに猪の体にどデカい風穴が空いた。
「…はっや」
00000000000000000000
Name 榊 零
種族名 人族
レベル 9
HP 100/100
MP 20/200
力 45
魔力 20+100
耐久 40
俊敏 60
精神力(SAN値) 135
グリムアーツ
・槍術(E)
スキル
・ガチャ(一日一回ガチャを回すことが可能、出る中身は完全ランダム)
・自己鑑定(自身の鑑定のみに使える)
・スキルホルダー(小)
・水魔法(下級)
・空欄
称号
「異世界に転生せし者」(効果は、レベルアップ時におけるスキルポイント取得量に補正、魔力に100の補正、スキル自己鑑定の付与)
ステータスポイント 23
111111111111111111111111111
「お、レベルがまた上がってる。引き続きポイントは温存、、、って思ったけどホルダーがあるからMPに振り分けていいかも!」
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Name 榊 零
種族名 人族
レベル 9
HP 100/100
MP 58/400
力 45
魔力 20+100
耐久 40
俊敏 60
精神力(SAN値) 90
グリムアーツ
・槍術(E)
スキル
・ガチャ(一日一回ガチャを回すことが可能、出る中身は完全ランダム)
・自己鑑定(自身の鑑定のみに使える)
・スキルホルダー(小)
・水魔法(下級)
・空欄
称号
「異世界に転生せし者」(効果は、レベルアップ時におけるスキルポイント取得量に補正、魔力に100の補正、スキル自己鑑定の付与)
ステータスポイント 3
111111111111111111111111111
「この猪は火をつけることが出来ないから食べることも出来ないな…勿体無いけど埋めるか」
そんな事を考えていたら後ろから肩を叩かれた。
「ねぇねぇ汚いお兄さん、その猪食べていいっすか?お腹すいちゃって〜」
「ん?」
後ろにはタンポポみたいな黄色の髪の変な女がいた。
(第一村人!?てか予想はしてたけど何言ってんのかまじでわかんねぇな!言語だけなら通じるかもと少しだけ思ってたんだけどなぁ。めっちゃニマニマした顔だけどなんて言ってるか分かんないからどうしようもないな)
「なんか言ってほしいっす〜もしかして心配してくれてるっすか?大丈夫っすよ!有機物は何でも食えるっす」
(んーわからん…一応話しかけるか)
「Hello, it's nice weather」
「何言ってんのか分かんねっす…お兄さん中々にクレイジーっすね」
(なんかさっきからニタニタしやがってイラついてきたな…てか何で言語通じない相手に話しかけてくんだよ…友達いないタイプか?)
「なんか分かんねぇけど馬鹿にしてるよなぁ?お前」
「なんか怒ってるっす!でも大海の様に心が広いウチは全てを受け止める所存っす!」
「だめだなこいつ、なんか同類な気がする…」
「あ!忘れてたっす!猪を貰いにきたんだった!アホなお兄さん!そこの猪埋めようとしてるっすね?」
と猪を指差す。
(あ〜…さてはあれだな?猪を埋めようとしてたから埋めるくらいならもらってもいい?ってことだよな。まぁあっても食べれないし、どーぞどーぞ)
零も倣って、ジェスチャーで意思疎通を図る。
「その手は!譲ってくれるってことっすか!?ありがとうっす!感謝っす!」
といい目の前で火を着けてナイフで耳だけ回収し、肉の部分を焼き始めた、辺りに良い匂いが漂う。
「あの〜…変な話朝から何も食べてなくてですね……少し分けてもらえないでしょうか?」
ジェスチャーでも分けてくれる様に頼む零。
「ん?なんすか?分けて欲しいっすか!?ダメっす!これはもう全部ウチのになったっす!今ウチが決めたっす!」
首を傾げたあと、納得した様な顔を見せた上での拒絶のサイン。
(え〜、、、断られちゃった。どうにかして分けてもらえないだろうか?)
闇に電流走る
「本当に少しでいいんで分けてください!」
零が達した結論とはそう、土下座!
(日本だったら絶対しない様なことも異境の地なら楽に出来る…しかも誠意が伝わる完璧な姿勢だ!)
「なんなんすかね…この珍妙な格好。地べたに頭つけるほどこの肉欲しいっすか?まぁウチはこう見えてよく猫とかにご飯分けてあげる心優しき美少女っす!心優しき美少女は肉を分けてやるっす!」
スッと差し出された肉。
「ありがとう!本当にたすかった!」
その肉に飛びつく零。
「そういえばっすけど、さっきやってたあの魔法初めて見たっす!めっちゃカッコよかったっす!もう一度見せて欲しいっす!」
と先程の零と同じポーズを取る。
「ん?なんだコイツ、、、急にガキみたいなポーズし始めて、、、もしかしてお前さっきの俺の真似か!?なんかニュアンス的に馬鹿にした感じじゃないのは分かるんだけど何させたいんだ?」
今度は零が首を傾げる番だった。
「んー?上手く伝わってないっすね?わかったっす!
肉がもう少し欲しいんすね!?」
と言いながら肉をもう1切れ差し出す。
「もう1切れくれるの?ひゃっほー!ありがとう!!」
奇声を上げながらがっつく。
食べ終わって顔を上げたらリスのように口の中に肉をパンパンに詰め込んだタンポポ女。
こちらの視線に気づいたのかタンポポ女も顔を上げ
手を銃のような形にして
「ひふふぁふぇふぁんふぁっふはらふぁっひのふぉーひっはい、、、もぐもぐごくん。見せろっす!(肉あげたんっすからさっきのもう1回)」
口の中からたまに咀嚼された肉や汁などが飛び散る。
「き、汚ぇ。」
(あ!もう1回見せろってこと?しょうがないなぁ多少mp回復したし100程つぎ込んた水弾見せてやるか!)
スっと零も手を銃の形に変え1本の木に狙いを定めて、、、
水弾!!
バシュン!
と音を立て、木に見事な穴を作る。貫通とまではいかないものの相当の威力が見て取れる。
「おお!凄いっす!!」
横から歓声のようなものが上がる。
そうだろうそうだろうとドヤ顔をしながら振り返った先には目をランランと輝かせながら肉を頬張るタンポポ女が
「この部位めっちゃ美味しいっす!まるで肩ロースのようっす!」
視線は明らか肉に釘付けだ。
「、、、いや!お前がやれって言ったんだから見てろよ!?」
(断言出来る。この女ぜってぇ見てない!)
「んあ?どうしたんすか?ウチを凝視して…あ!なるほどっす!ウチが美少女で見惚れてるんすね!」
「なんだろう。壮大な勘違いを受けてる気が…」
見ればいつの間にか骨だけになっていた猪。
「ってあの量をどこにやったんだ!?食うの早すぎるでしょ!?」
「あ!そうっす!さっきの魔法見せてもらう約束だったっす!」
そう言いながら目を輝かせ手を銃にする。
スッ
「………」
「ん?どうしたっすか?急に上を向いて、上には何もないっすよ?間抜けっすね〜」
「…最後だからな」
「水弾!」
ピュー…ピチャピチャ
残り僅かになっていたなけなしのmpを使って撃った水弾は案の定ショボかった。
例えるならお風呂でよくやる水鉄砲ほどの水量だった。
「ショボいっす」
(初めて女を殴りたいと本気で思った)
「初めて女を殴りたいと本気で思った」
思ってるだけじゃなく口にも出てるぞ零。
「そろそろ帰るっすかね。汚いお兄さんまたどこかで〜」
踵を返し、手を振りながら堂々と去っていく。
「ん?帰るのか…あれについていけば街に着くのでは?」
ザッザッと足音を立て後を追う。
前のタンポポ(女)が足を止める。
「どうしてついてくるっすか?ウチペット禁止されてるから残念ながら連れて行ってあげられないっすよ。それでもついてくるなら勝手にするっす」
急に速度を上げられ慌ててついていく。
「うお!結構早いな!?」
(こちとらほぼ全速力だぞ!)
小走りのようなフォームに反して速い。
追いつくどころか見失わないようについていくので精一杯。
かなり頑張って着いていったが、見失ってしまった。
しかし気がつけば整備された道を歩いていた。
「折角人に会えたのに。やっぱり今日も野宿なのか…」
肩を落とし視線も落とす。目に入ったのは整備された道!
辺りを見渡せば森は抜けたようで平原のようなひらけた場所に出たようだ。
「このまま道なりに沿って進めば街に辿り着けるかも!」
日が落ちて暗くなった道を軽い足取りで進む。
「お!見えてきたぞ!壁もしっかりしていて如何にもって街じゃないか!一度こういう西洋って感じの街に行きたかったんだよなぁ」
暗いなか白い壁の街は道標として優秀だった。
しかし…
「全然辿り着かん……」
見えてからが長かった。
重い足を引きずりようやく門に到達した。
1人の衛兵が立っており話しかけようとして気がついた。
(言葉通じねぇ…)
そこで諦められるほどの余裕はもち合わせていないようでダメもとで掛け合うが身振り手振り虚しく、槍まで向けられる始末。
諦めて少し離れて白い壁にもたれて座る。
「苦労して辿り着いた街に入れないとはなぁ…でも言葉が通じないからしょうがないか」
そうして意識は途切れ…
目が覚めた。
随分眠っていた感じがするが辺りはまだ暗く、体を起こすと筋肉痛と寝床のせいもあって体中が悲鳴を上げる。
「痛っつつ」
走るだけ走って失った水分を補充しろとでも言うかのように喉がカラカラだ。
「そういえば日付変わったかな?」
ガチャ
・睡眠(中)
(睡眠の質がそれなりに上がる)
「ゴミが!」
パシーン!と、スキルが表示されているボードを地面に叩きつけた。
「なんだこのスキル!これで明日まで寝てろってか!?いい加減にしろ!」
(とは言ったがマイナスになる様な内容じゃないだけまだ…ね)
叫んでさらに渇きの主張が激しくなった喉を 水魔法で鎮める。
「まだ暗いし二度寝に耽るか」
(スヤァ)
顔に直射日光を浴びて飛び起きる。
「おおおお!筋肉痛が治ってる!それだけじゃなく疲労もほぼない!なんてすごいんだ睡眠!」
崇めるかのようにキラキラとした目で…手を組んで崇め始めた。
「おい、昨日の変な兄ちゃん」
呼びかける声に反応して振り返ると昨日街に入れてくれなかった燐敏の目をこちらに向けた衛兵が立っていた。
「俺は交代の時間だから戻るけど兄ちゃんも速いうちにここを離れるといいぞ。冒険者たちが出てくる時に浮浪者を見るような目で見てきたり、下手したら殺されるかもしれないからな」
首を傾げ困ったような顔をする零を見て衛兵も困った顔をする。
(言葉が通じないのえぐぅぅ…ニュアンス的に忠告ぽいけどなんて言ってるか分からんのよなぁ)
「しょうがないちょっと手荒だけど」
衛兵は槍を零に向ける。
「ちょっと衛兵さん!?まだ何もやってませんよ!」
少しずつ槍を向けたまま近づいてくる衛兵。
「にげるしかないのか!?」
(折角街に辿り着いたのに…俺は弱い!ってそんなことしてる暇なかった)
弁明しようにも言葉は伝わらない以上留まるのもまずい。
渋々といった様子で離れる。
衛兵は特に追いかけてこない。
(追い返すのが目的で傷つける気はなさそうだな)
「こっからどうすっかなぁ…今までやったこと、わかってることをひとまず纏めるか」
・街に辿り着いた(入れない)
・この世界に人はいる(話せない)
・魔物は弱くはないものの勝てるもしくは逃げられる
「うーん…街付近の森で魔物狩ったりして魔物献上したら友好アピール出来ないかな?」
(想像したらやってること原始人すぎていかついな。余計悪い方に行きそう)
「いっそ山奥で魔物倒しまくって、転生してから数百年山奥で修行していたら人類最強にーーみたいなことしてみるか?」
グルルルル
「グルルルル?」
ぶつぶつ歩いていたら音もなく近寄っていた狼の群れに囲まれていた。
異世界を1日1回のガチャで生き抜く Sky @souka0818
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