第2話 連絡先交換
「ふわぁ。眠すぎて死にそう。ねぇ咲ちゃん膝枕してよ。」
登校中のバスの中。
朝一からこんなことをのたまっているのは唯一の同乗者である綾崎晴香だ。
「するわけないじゃん。」
「えーけちー。現役女子高生様に膝枕できるんだよ?このチャンス逃していいの?」
「なんもチャンスじゃないしそれ僕の膝が疲れるだけだよ?」
「ひど!」
そもそもバスの中で膝枕なんかしたら余計寝にくいと思うんだけどな。
「てかさ!そろそろ私たち会ってから1ヶ月ぐらいになるじゃん?」
「んそだね。」
「連絡先交換しようよ。」
「いーよ。」
、、、
なんで無言なんすか。
晴香の方を向くと何故かむすっと頬を膨らませている。
今のやり取りに不満にさせる要素あった?
てかそんなthe不満ですみたいなテンプレな反応する奴リアルで初めて見たわ。
「、、、どうした?」
「いーや別に。ただ私の昔の可愛かった咲ちゃんはどこ行っちゃったんだろうって思っただけ。」
失礼な。
今でも可愛いだろ。
てか昔って初対面先月だけどな。
「全然よく分かんないって。」
それはそうと全く何が言いたいのかわからなかった僕がそう聞き返すと、晴香はため息をついた。
「だってこんなに可愛い女子高生に連絡先交換しよって言われたんだよ?もうちょっとドキドキするとかあるでしょ。それを軽くいーよって。ないわー。」
思ったより10倍ぐらいくだらない理由だった。
「うわー恥ずかしすぎて顔見れないや。」
「普通に顔見ながら棒読みでその台詞言うのやめよ。良くないよ、ほんと良くない。これで私が傷ついて不登校になったらどうするのさ。」
「読書が捗るね。」
「っこの生意気中学生め。もしほんとに私が来なくなったら心配でたまらなくて他のことが手に付かなくなるくせに。」
「そんなことより連絡先交換するんじゃないの?僕もうそろそろバス降りるけど。」
「ガン無視すな。ってそっかもうすぐか。ラインとインスタ繋ご?」
「いいよ。」
ってあれ、インスタって垢あったっけ。
こないだ友達に入れろって言われて垢だけ作ったなそういや。
QR表示してっと。
「ほいQRコード。」
「ありがとー!フォローしといたからフォロバよろしくー。」
「ういうい。」
次はラインか。
ラインっていえばフルフルっていつの間になくなったんだ。
僕が小6の時にはまだあったのに。
「はいこっちもQR。」
「ん?」
「だからラインのQRだって。」
「あぁ、ありがと。追加できたと思うから確認してみて?」
言われてラインを確認するとharukaというアカウントからクマがお辞儀をしているスタンプが送られていた。
よろしく、と送り返しておく。
そうこうしているうちに学校の近くのバス停に着いていた。
「じゃ降りるね。」
「うん!ばいばーい。せっかくライン繋いだんだから送ってね?」
「気が向いたらね。ばいばい。」
妙に上機嫌な晴香にいつも通り手を振り返しながらバスを降りる。
にしてもインスタの交換をした時からぼーっとしだしてその後いきなり上機嫌になっていたのはなんなんだ。
何か原因になりそうなものがないか考えをめぐらしてみたものの皆目見当がつかなかった。
*********************
咲が降りていったあとのバスの中。
咲が降りてから10分ほど、そろそろ晴香の降りるバス停に着く頃だが、晴香はずっとスマホの画面を見ながら頬を緩めていた。
そこには交換したばかりの咲のインスタのフォロワー欄。
そこには晴香のアカウントだけが表示されていた。
「えへへ、咲ちゃんのインスタの友達1人目もーらいっ!」
晴香はいつもに増して元気にバスを飛び出した。
明日もバス停で ke-0i @ke-0i
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