Re:1
しばらくして、私たちはいろいろなことを話しました。
「そういえば……ナナシはアンドロイドなのに、ここに来られたんだね」
マスターが不思議そうな顔をして聞いてきました。
確かに、私は本来であればここに来ることはなかったはずです。……どうしてでしょうか。
私が首をかしげていると、お姉さんが言いました。
「それは、ナナシちゃんに心が宿ったからよ!」
『心……』
「そうよ!心は魂と同じものなんだから!」
お姉さんは自信満々といった様子で言い切りました。すると、マスターは優しげな顔をしました。
「ミカ……ナナシに心を宿してくれたんだね……。ありがとう……」
お姉さんは照れ臭そうにしていました。
「えへへ……どういたしまして!」
お姉さんは嬉しそうに笑っていました。
それから、私は今までのことを全て話しました。
心が宿ってから、自分の気持ちがわかるようになったこと……。
そして、マスターと過ごした時間が私にとって、とても楽しかったということ……。
私の話を、2人は真剣に聞いてくれました。
「そっか……。僕も楽しかったよ」
そう言ってくれたマスターの顔は、どこか悲しそうでした。
「……もう!そんなに暗い顔しないでよ!これから、また一緒に過ごせるんでしょ!?」
お姉さんがマスターの肩を叩きました。
「そうだね……。ナナシ、これからもよろしくね」
マスターが私に手を差し出してきました。私はその手を取って、握り返しました。
『はい……マスター……!』
ここには時間の流れはありません。でも、マスターと再び会えた、この日は私にとって忘れられない記念日になりました。
それから、私たちはずっと3人で一緒にいました。私はまた、いろいろなことに心を動かし始めました。心が宿ってから、マスターとお姉さんと一緒に過ごせることが幸せで仕方がありませんでした。
2人の笑顔を見る度に、胸の奥からあたたかくて幸せなものがこみ上げてくるのです……。
私は、この日を忘れません……。
───
某月某日。
草木が生い茂る森の中に、とある研究所がありました。
そこは既に寂れて廃墟と化しており、誰も近寄りません。
その研究所の一室には、ずいぶん前に動かなくなったであろうアンドロイドの姿がありました。
その目は閉じられていて、まるで眠っているように見えました。
彼女は何を考えていたのでしょうか?……それを知る者はいません……。
でも、きっと幸せだったでしょう……。彼女の表情はとても安らかなものだったのですから……。
ワタシの誕生日 夜桜くらは @corone2121
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