・.。*゚+.・.。*゚+.・.。*゚+.・.。*゚

「こっちよ!」


 お姉さんの後をついてしばらく歩いていると、前方に人影が見えました。

 その人物は後ろを向いていましたが、私は誰なのかすぐにわかりました。

 ……少し猫背で、ボサボサの髪の男性です。

 彼は私に気付くと、ゆっくりとこちらに振り向きました。


『……マス、ター……?』


 私は驚きのあまり固まってしまいました。

 だって、そこにいたのは紛れもなくマスターだったからです……。それも、私が初めて会った時の姿でした……。

 マスターは無言で私を見ています。


「ナナシ、久しぶりだね……」


 そう言った彼の顔には、優しげな微笑が浮かんでいました。


『マスター……!……うっ、ううぅ……』


 私は涙が止まらなくなって、その場に崩れ落ちて泣き出してしまいました。

 マスターは私に歩み寄ると、優しく抱きしめてくれました。マスターの腕の中は、とても暖かくて心地の良いものでした……。


『マスター……!マスター……!会いたかったです……っ!』


 私はマスターの胸にすがりついて、子供みたいにわんわん泣いてしまいました……。

 マスターはそんな私の頭を撫でながら、優しい声で語りかけました。


「ごめんよ……。僕が不甲斐無いせいで、ナナシに辛い思いをさせてしまって……」


『うっ……ぐすっ……マスター……!……うわあああんっ……!!』


 私は感情を抑えることができず、大粒の涙を流し続けました……。


 ・.。*゚+.・.。*゚+.・.。*゚+.・.。*゚


 しばらくして、私は落ち着きを取り戻しました。


『……ぐすっ……ひくっ……』


 でも、私はまだ泣いていました。涙は止まりませんでした……。

 そんな私の背をさすりながら、お姉さんは言いました。


「ほんとよ!あんなに早く、私たちを置いて先に逝っちゃうんだから!!」


 お姉さんの口調は怒っていました。

 でも、それは怒りというより悲しみのこもったものでした。


「私だって、私だって……!パパがいなくなったら悲しいもん!!残された者の気持ちも考えなさいよねっ……!バカッ……!……ぐすっ……ひっく……」


 最後は嗚咽混じりになっていました。お姉さんはマスターをポカポカと叩いています。


「それは、本当に悪かったと思ってる……。許してくれとは言わないけど、謝らせてほしい……」


 マスターは申し訳なさそうな顔をしていました。


「ううぅ……っ……!」


 お姉さんはマスターを叩くのをやめて、今度は抱きつきました。


「バカァッ……!……ううっ……うあああっ……!」


 私もお姉さんにつられたのか、再び涙が溢れてきました。マスターは、お姉さんを慰めるように背中をポンポンと軽く叩きました。……それから、マスターは私の方を向くと言いました。


「ナナシ……おいで……?」


『ぐすっ……マスター……っ!』


 私は誘われるがままに、彼の腕の中に飛び込みました。

 マスターのぬくもりが伝わってきます……。

 ああ……、やっと帰ってこれた……。

 私の居場所は、やっぱりここでした……。

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