女子会。



「ふぅ、到着!」


「思ったより、民家があるね?」


「川! きれーい!」


 寡黙なネコお姉ちゃんに乗ってるユキナちゃんが、綺麗な渓流を見てはしゃぐ。


 アキナさんもほっと一息つきながら、ネコお姉ちゃんから道具を出してもらって設営を始める。


「ネコお姉ちゃん、フリルお姉ちゃんの方はどう?」


「…………目的地で食事中らしい。見た目が気持ち悪い魔物を、ヤマトが美味しそうに食べてるそうだ」


「見た目が気持ち悪い魔物…………?」


 ネコお姉ちゃんが低くてセクシーなハスキーボイスで答えてくれた。けど、お兄ちゃんってば何を食べてるのかな?


 海外だとタコとか気持ち悪くて嫌がる人も多いって聞くし、そういう魔物でも居たのかな。


「なんか、ギュウタンって食べ物に似てるらしい」


「「「牛タンッ!?」」」


 お、美味しいやつだよそれ……!


 世界が滅んでから一年を超えて、もう牛タンなんて久しく食べてない。


 た、食べたいよ牛タン……! ミルクも食べたい!


「安心して良い。ヤマトが数を確保してるらしい」


「良かった……!」


「さすがお兄ちゃん!」


「ユキナのかれしはたよりになるぅー!」


 おっと、またNGワードが聞こえたぞ。


「ユキナちゃん、お兄ちゃんは彼氏じゃなくてお兄ちゃんだよ?」


「んーん、ユキナのかれしだもん!」


「…………お姉さんも、違うと思うなぁ」


「ふーんだ! ヤマトおにいちゃんだって、わかくてピチピチのユキナがいいにきまってるもん!」


 第二十八次女子会大戦がここに勃発。ワールドウォーズじゃなくてガールズウォーズだね。


 閑話休題。


「ふぅ、ふぅ……」


「こんな事してる場合じゃないのに……!」


「ユキナわるくないもんっ!」


 ここに居る女の子は全員、お兄ちゃんが好き。そんな事はわざわざ想いを語るまでも無くみんな知ってる。


 アキナお姉ちゃんとユキナちゃんと違って、ミルクは普通にお兄ちゃんとして大好きなだけ。だけど誰かに独占されるのは嫌だから反抗はする。


 ミルクが認めるのはフリルお姉ちゃんだけ。お兄ちゃんの横に居てお兄ちゃんを問題なく支えられるフリルお姉ちゃんだけがお兄ちゃんの相棒に相応しいと思ってる。


 だから二人とも、最低でもミルクを超えないとお兄ちゃんの彼女だなんて認めないからね。


 そんなミルク達を優しく見守るネコお姉ちゃん。


「…………そう言えば、ネコさんはヤマトさんの事、好きなの?」


「……? 頼れるオスだと思う」


 アキナお姉ちゃんが聞くと、ネコお姉ちゃんは少し首を傾げながら答えた。


「ネコお姉ちゃんは虎だから、オスを独占するって考えが薄いんだよね。だから多分、アキナお姉ちゃんの質問が良く分からないんだと思う」


「あー、なるほど」


 お兄ちゃんと一緒に調べたけど、トラって単独で生活するネコ科最大の生き物であり、特定のつがいを作らないタイプなんだけどハーレムもちょっと違うって言う不思議な生態らしい。


 なんでも、オスもメスもそれぞれが単独の縄張りを持って、オスはそのうえでメスの縄張りをいくつか重なるように自分の縄張りを広げて、通い妻ならぬ通い夫をするらしい?


 それで言うと、今こうやって一緒に行動してくれてる事が既に生態から違ってしまってるけど、それでもオスを独占するって考えは薄いみたいだ。


「そんな事より、早く拠点作らないの……?」


 そうだった。お兄ちゃんが牛タン持って帰ってくる前に拠点をある程度まで形にしておかないと、牛タンをお預けされるかも知れない。


 そこでふと、少しだけ懐かしい気持ちになる。


 ふふふ、お兄ちゃんに拾ってもらった頃は良く焼肉してたなって。


 上野で倒せる熊さんのお肉とか、ちょいちょい焼肉パーティをしてた。


 あの時はお兄ちゃんとフリルお姉ちゃんと、タクマお兄ちゃんと、チカお姉ちゃんとミケお姉ちゃんが居た。


 みんなでちょっとずつお肉を焼いて、みんなで美味しいねってニコニコして食べてた。あれからもう一年が経ったのかと思うと、時間の流れって早いんだなって思う。


「………………チカお姉ちゃん達に会いたいなぁ」


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猫と往く、終末世界の歩き方! 〜壊れた日本で猫と一緒に、魔石を集めてスローライフを目指そうか!〜 ももるる。【樹法の勇者は煽り厨。】書籍化 @momoruru

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