その頃、女子組。



 お兄ちゃんが物資集めと探索に出ている間、ミルクはネコお姉ちゃんと一緒にアキナお姉ちゃんとユキナちゃんを率いて場所探しを任された。


 世界が終わる前の最新地図を広げてにらめっこ。


「…………うーん、やっぱり既存の施設を貰った方が楽だよねぇ?」


「まぁ、そこに人が居なかったらそうかな?」


 一年以上も一緒に居ると、お兄ちゃんの性格はだいぶ把握出来てると思う。


 お兄ちゃんは八王子を攻めてるけど、要はお兄ちゃんの目的が達成出来ればなんでも良い。だから八王子って縛りに意味は無くて、お兄ちゃんが望む場所であれば少し遠くても大丈夫。


 ミルクはアキナお姉ちゃんにも地図を見せながら、暫定的な目的地を決める。ミルク達はアクアロードがあるから水場の確保に苦心しなくて良いけど、それでもやっぱり水場を選べるならその方が良い。


青梅おうめ、八王子、相模さがみ周辺にある湖は…………」


 数は、数え切れない。うん、この地域ちょっと湖が多すぎる。


 山の方にあるのはダム湖なのかな? 市街地の方にも沢山あるし、地図の上で数えるのが億劫だ。


「お兄ちゃん的には多分、山の中にあった方が喜ぶよね?」


「でも、街から離れ過ぎるとアクセスが悪くて嫌がりそう……」


「もう、ワガママなお兄ちゃんなんだから!」


 地図を読み込んだミルク達は、最終的に奥多摩湖と青梅市の中間にある行楽施設を候補に入れる。


「奥多摩フィッシングパーク。キャンプ用の管理釣り場?」


「ミルクおねーちゃん、かんりつりばってなーに?」


「えーとね、自然をそのまま使う釣り堀って感じかな」


「山奥過ぎるとダメかもしれない。奥多摩の山って普通に熊も居るのよね」


 この一年、さすがにミルクも子供のままじゃ居られなかった。色々と調べたし、色々と勉強もした。


 この日本で最も危険な野生動物と言えば熊であり、魔物化した今ならばその脅威は計り知れない。


 幸い、奥多摩に居る熊は……、と言うか本州に居る熊は基本的にツキノワグマであり、ヒグマは北海道にしか居ない。


 ただ、動物園で飼育されてたヒグマの存在が凄い怖い。


「ヒグマとツキノワグマって倍くらい大きさ違うもんね…………」


「まぁ戦ったら勝つと思うけど。どんな異能持ってるかなんだよねぇ〜」


「…………ユキナもかてる?」


「分かんない。前に居たイノシシはミルクも苦戦したし……」


 あれはお兄ちゃんとフリルお姉ちゃんが居てやっと勝てた。ミルクだけじゃあの硬さを突破出来なかった。


「まぁ、今は居るかどうか分からないヒグマよりツキノワグマだよ。と言うかその前に場所の選定だよ」


 ミルクは皆を連れて候補地である奥多摩フィッシングパークへと向かう。


 ツキノワグマだって魔物化して異能を得たなら油断するべきじゃないんだけど、それを含めてもミルク達は凄く強い。と言うかミルクが強い。あとネコお姉ちゃんも強い。


 ミルクとアキナお姉ちゃんは自分の白虎に乗って、ユキナちゃんはネコお姉ちゃんの背中に乗って道路を進んで山の方へと入っていく。


 ユキナちゃんも白虎は使えるんだけど、ミルクよりも小さな女の子だから安全の為にそうしてる。


「ニホンザルこわっ……」


「ネコお姉ちゃん、シールド!」


 道中、ニホンザルの群れが襲って来たので迎撃する。確かお兄ちゃんのイミテーターは金色のニホンザルから手に入れたはずだけど、襲って来る個体は全部が褐色の毛色で普通の魔物だと分かる。


 手に持った石を投げて来るのだけど、その石の威力がえげつない。それと石が少し曲がってくる。


「何この異能っ」


 ネコお姉ちゃんにシールドを張って貰ったら、氷槍でカウンターを叩き込みながら観察する。


 投擲とうてきに補正をする異能? 威力が凄いのは単純にストレングスが高いのか。


「…………あっ、違うこれ! アキナお姉ちゃん、サイコキネシス!」


「なるほど……!」


 ニホンザルの異能を特定し、ならば用はないと一気に殲滅する。


「流星群っ!」


 空に打ち上げた数百の氷槍をニホンザルに向かって叩き付ける。クリアコントロールとサイコキネシスの念動力に重力、位置エネルギーを全て注ぎ込んだミルクの必殺技。


 お兄ちゃんが言ってた。必殺技って、必ず殺す技って書いてあるだよって。


 フリルお姉ちゃんが言ってた。死ぬまで殺せば大体死ぬって。


 結論。死ぬまで全力攻撃したら必殺技なんだ!


「いっけぇー!」


 エコーロケーションで感じる生き物の反応が消えるまで、ミルクはずっと氷の雨をニホンザル達に振らせ続けた。


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