Draw 2:マスコットは現実の公式大会でも使いやすくて便利。

◆◆◆


 

             氏名  /属性・デッキ

              ┌─  死世神しせがみ 偽華にせか/ 闇・死神

          ┌─┤

          │  └─  八王はちおう 牛頭ごず / 闇・獄門Z

      ┌─┤

      │  │  ┌─  東村山ひがしむらやま 賢慈けんじ/光・クラウン

      │  └─┤

      │      └─  竜太たつた沙穂さほ/木&水・八百万

  ┌─┤

  │  │      ┌─  町田まちだ 神奈かな / 無・追放

  │  │  ┌─┤

  │  │  │  └─  三鷹みたか 詩風梨しふり/ 木・空想

  │  └─┤

  │      │  ┌─  立川たちかわ 諏訪すわ / 土・相撲

  │      └─┤

  │          └─  調布ちょうふ 妖太郎ようたろう/ 闇・悪夢

─┤

  │          ┌─  府中ふちゅう 馬穂まほ/土・アニマル

  │      ┌─┤

  │      │  └─  惰気川だきがわ 台三たいぞう/ 水・怠惰

  │  ┌─┤

  │  │  │  ┌─  武蔵野むさしの 本宮もとみや/ 全・武蔵

  │  │  └─┤

  │  │      └─  日野ひの 壬生狼みぶろ/ 火・新撰組

  └─┤

      │      ┌─  久留米くるめ 正一郎せいいちろう/土・産革

      │  ┌─┤

      │  │  └─  白覇はくば はく  / 光・白Y

      └─┤

          │  ┌─  青梅おうめ 雪女ゆきめ / 水・雪崩

          └─┤

              └─  火緒主かおす 唯一ゆいいち/火・戦国侍



[ライターの目]

 ~【前略】~

 優勝候補は「八王はちおう 牛頭ごず」選手、「日野ひの 壬生狼みぶろ」選手、「白覇はくば はく」選手の3名。

 昨年の関東CPX杯で8位となった 八王 選手は闇属性の「獄卒Z」デッキを愛用しています。また、新撰組デッキの使い手 日野 選手も数々の大会で実績を残してきた実力者です。

 しかし、優勝候補筆頭、大本命は「白色矮星わいせい」「Mr.WWhiteDDwarf」の異名を有するレジェンド、白覇 選手でしょう。「ハク大尉」の愛称で知られる光属性使いは今大会でどのような輝きを見せてくれるのでしょうか。

 また、CPX西東京支社CEOの座をCOバトルで勝ち取ったと噂の「死世神 偽華」選手にも注目が集まっています。

 その他の選手も実力者ぞろい。手に汗握る熱い戦いが繰り広げられることは間違いありません。


 ■記事書きじかき 伝朗でんろう COバトルライター




◆◆◆



 ――調査記録 “ティティム・クルデーレ”

 ――【時刻】 地球/日本/10:00:56

 ――【記録者】コードネーム「古考 土乃」


『今大会は厳しい予選を潜り抜けた16名のfightersによるknockout tournament、1対1の勝ち残り形式! 1回戦はA blockとB blockに分けて進行する!』


 今回の任務における調査対象は2体のThe ONE。AブロックにはNo.1 “ティティム・クルデーレ” ……その使い手の “死世神 偽華” が出場している。


『まずはA blockの1回戦4試合が同時進行で行われているが――!』


 会場は第1試合場。観察に最適な位置を確保することが出来た。

 調査対象No.2 “カオス・ノブナガ” 及び使い手の “火緒主 唯一” が登場するBブロックの試合は、Aブロックの第1試合が終わった後。今はNo.1の調査にのみ注力する。

 そのつもりだったのだが……。


「ねぇねぇクリオッチ! 風船ちょうだい!」

「私にも! 私にも!」

「俺も欲しい! その赤いジャスティスのくれ!」

「ずるいぞ! ジャスティスは僕のだ!」

「オネ~。喧嘩しちゃ駄目オネ~。ちゃんと皆の分あるから安心するオネ~」


 ……潜入調査の変装として「クリオッチ」を選択したのは失敗だったのではないだろうか。着ぐるみの周りに群がる小学生程度の子ども達を見て、強く思う。

 クリオッチはCPX社公認CHAOS ONE公式マスコットで、クリオネをデフォルメしたような見た目をしている。何故か二足歩行で、背中に小さな羽が付いているが、概ねはクリオネだ。

 精巧で声まで偽装できるレプリカを組織が造って送ってくれたので、今更文句なんて言えないのだけど。でも、纏わりつく子供は任務の邪魔だし、暑いし。あと暑い。すっごい汗かく。汗臭くなってたりしないかな……気になる。本当に、上は現場の苦労を知らなさ過ぎだ。

 ちなみに。本来のクリオネッチ(の中身)は今頃、他のエージェントによってグッスリ眠らされているのだろう。今日の分の給金はちゃんと振り込まれるから許して欲しい。


「あの試合どっちが勝つかな!?」

「そりゃ牛頭さんだろ! 関東8位があんなガキに負ける訳ねぇだろ!」


 お前だってガキだろ、クソガキ。

 ……なんて感想は置いておいて。着ぐるみ潜入任務も悪い事ばかりじゃない。こうやって、人々の率直な言葉を聞くことが出来る点は高評価だ。

 そう。 “死世神 偽華” と “ティティム・クルデーレ” の対戦相手 “八王 牛頭” は相当な実力者。正真正銘の優勝候補である。

 現に、ここまでの試合運びに危うげな所は一切見受けられない。

 彼の用いる “混沌の獄卒/GO-Zゴズ” と “混沌の獄卒/ME-Zメズ” を中心に構成された「闇属性」の「獄卒Z」デッキは扱いが難しい部類に入る。というのも、GO-ZとME-Zの2体をバトルゾーンに揃えなければならないからだ。

 しかし、彼は見事にGO-ZとME-Zを召喚して見せた。懸念点と言えば、墓地の枚数が両者とも異常に多くなっている事くらい。普通に考えれば、このまま押し切って勝利できる。


『第1試合はfighter牛頭が優勢だよね、professor?』

『否! 見よ、試合が動くぞ……!』

『またまたぁ、そんな事があるわk……What the hell!!?? 』


 ――しかし。その「普通」を覆す存在こそがThe ONEである。


「鏡よ、鏡。今日は待望の晴れ舞台。私はどんな姿をしているかしら?」

『最高にお洒落にキマッてる! 貴女も! 私も!』

「ふふ。なら、血の雨を降らせましょう! 召喚! 私の鏡像! The ONEティティム・クルデーレ!」


  “死世神 偽華” が天に掲げた1枚のカード。

 そこから漆黒の光が迸り、禍々しい渦を形成する。

 そして。

 カードがバトルゾーンに置かれ――混沌より少女怪物が顕現する。

 左が金色、右が黒色のオッドアイ。長く白い髪。真っ黒な服に身を包み、巨大な鎌を両手に持った少女怪物


『あれが死世神の新星、rising star! 偽華CEOのThe ONE! ティティム・クルデーレ!!』

『うわぁ! あの娘すっごく可愛い!』

『むぅ!? なんじゃ、あの禍々しき力は……!? それに、あの姿は……!』

『何か知っているのかい、professor!?』

『刮目せよ! 歴史的瞬間になるぞ……!』


 記録する……! あのカードの有する力を……!


「山札から4枚、手札4枚、味方4体を生贄に! 破壊! 抹消! 消え去りなさい!!」

『消してあげる! 全部全部!』

『BuMOoooooo!?』

「馬鹿な! 俺のGO-ZとME-Zが一瞬で!?」


 一瞬だった。


『一体全体何が起きたんだっ!? Fighter牛頭のバトルゾーンと手札から全てのカードが消えてしまった――ッ!!』


 並べたモンスター、集めた手札、仕組んだ策略……その全てが消え去っていく。破壊されていく。

 ただの一瞬で盤上が引っ繰り返った。


「――CO! これで合計墓地枚数44! 無数の屍の上で舞いなさい!」

『それが貴女の望みなら!』

「これは私たちの宣戦布告!」

『森羅万象この世の全て! 私の鎌が刈り取るの!』

「覚醒! ティティム・クルデーレ! ……ライフにダイレクトアタック!」


 そして!

 まだ終わらない! 破壊は止まらない!

 その力は際限を知らず膨れ上がる!!


「ぐぅああああああああああ!!!???」


 4つあったライフが容易く粉砕され、0になる。

 ……勝負はついた。


『…………はっ! あ、圧倒的! 驚異的! 優勝候補 “牛頭” 選手を容易く粉砕! 一早く2回戦へと駒を進めた! これが死世神の、phoenixの持つ力なのか!? Winner、死世神 偽華――ッ!!』


 あまりの衝撃に、大会全体が数秒の沈黙に包まれる。

 そして。

 我に返った司会の勝者宣言をきっかけに、爆発的な歓声が轟いた。

 


◆◆◆



 何なのアレ! 何なのアレは!?

 どんな精神性だったら、あんな化け物が誕生するの!?

 ……とにもかくにも。早急に対策を練らないといけない。

 能力の凶悪さは十分に分かった。次は、 “ティティム・クルデーレ” と “死世神 偽華” の性質……精神性や環境の調査だ。 “カオス・ノブナガ” と “火緒主 唯一” の調査と並行して進めていかなければ。


 ……あ、でも。 “死世神 偽華” の試合は決着が早過ぎたので、Aブロックの他3試合はまだまだ終わってない。 “火緒主 唯一” の出場するBブロックはもう少し先だ。

 だから。とりあえず少しだけ休憩。着ぐるみの中が暑すぎて、水分補給しないと倒れちゃう。


 あー。でも、確か、着ぐるみって人前で脱いじゃいけないんだよね……。子ども達の夢を壊すとか何とか……。

 まぁ、ワタシ自身、あんまり姿を見られる訳にはいかないし。「着ぐるみの中身判明!」とかってSNSに写真をアップされたりしたら大変だ。

 とりあえず、人目につかない場所を探して……あ、あそことか良い感じ。


「ふぃ~。涼しい~!」


 なかなか良い場所を見つけた。ここなら誰かが来る心配も無さそう。

 制汗スプレーをかけたりしながら、ゴクゴクと水分補給をして喉を潤していく。


「あ―――――! 生き返る―――――!! 着ぐるみ行動キツイ! 誰か代わってくれないかな~!」


 ……なんてね。これはワタシの大事な任務だ。頑張らないと。

 まぁ、他のエージェントに代わってもらいたいのも嘘偽りない本心だけど。

 ……やめやめ! 愚痴の時間は終わり! この後も頑張るぞぉ!

 とか何とか心の中で叫んでいたからだろうか。それとも、暑さで想像以上に疲労していたのだろうか。

 ワタシは接近する存在に気付くことが出来なかった。


「助けを求める声が聞こえた。よし、私が代わりにやってあげよう。着ぐるみは借りていくぞ」

「へ!? は、はい。いや、ちょ、えっ!?」

「言質は取った。さらばだ」


 その存在は、白い髪でオッドアイの3頭身の幼女……てか、どう見ても “ティティム・クルデーレ” の実体化存在じゃん!?

 え、バレた!? ワタシの任務バレた!? 調査してるって見抜かれた!?

 疲労+想定外の襲撃+調査対象との突然の遭遇+任務失敗の可能性+意味不明な言葉……。怒涛の急展開に頭の中がしっちゃかめっちゃかになってしまい、ついつい「はい」なんて返事をしてしまった。

 そして。

 混乱している間に、幼女は着ぐるみを持ち去って行ってしまう。

 人間には真似できない速度でぐんぐん離れていく。


 ……はっ! あの着ぐるみは支給品! 極秘の技術もたくさん使われてるし、何よりも組織への連絡装置は着ぐるみの中だ! 不味い不味い不味い!


 そんな経緯で。

 ようやっと理解が追いついたワタシは、着ぐるみ泥棒捜索に乗り出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホビアニTCG世界にカードとして転生したから目立ちたい! 夢泉 創字 @tomoe2222

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ