第7話 可愛いを諦めたアンジュと宥めるジュネス


(あーっ、どんどん、可愛いから、かけ離れていくわ。 確かに、冒険者なのだから、仕方がないとは思うけど、……。 でも、何だか、やりきれないわ)


「アンジュ、元気ないけど、どうかしたの?」


(まあ、俺、リーダーだからな。 一応、聞くけど、これは、本来、女子の仕事だと思うんだけどなぁ)


「あ、ああ、ジュネス。 ……」


(やっぱり、俺が、聞いたら、まずかったんじゃないのか? 姉さん、なんで俺に言わせるんだよ。 絶対、姉さんが聞いた方が、落ち着くだろう。 なんか、目に力が無いぞ)


「心配してくれて、ありがとう」


(あー、可愛い私は、もう、いなくなってしまったわ。 ……。 胸板も厚くなっちゃったし、腕だって、普通の服だとパンパンになってしまって、まともに着れないのよ。 お腹だって、6個に割れてしまっているのよ。 こんなの、可愛くないヨォ〜)


「ねえ、アンジュ。 あ、あのー、アンジュって、最近、とっても、カッコイイよね」


(をい! 女の子に、カッコイイは、ないでしょ)


(あっ! やばい、表情が、少し、引き攣り気味だ。 これ、絶対、外した。 でも、可愛い体型じゃないよね。 横から見たら、出る所が出て、凹むところが、凹んでいるから、……。 ああ、そうか)


「ごめん、カッコイイは、女の子には、使わないよね。 本当に、ごめん」


「ううん。 イイのよ。 私は、冒険者だから、可愛いより、カッコイイじゃないと、仕事にならないわ。 だから、可愛いは、諦めたのよ」


(いや、これ、絶対に口では、諦めたと言っているけど、本音は、諦めてない! 絶対に、可愛いを目指しているはず。 女の本音と建前は、……。 うん、絶対に使い分けている。 はず)


「あ、ああ、でもね。 きっと、……。 ほら、ウエストが、とてもくびれているから、すごく、可愛いと思うんだ」


(ん? 何? ウエストが、くびれている? ……。 それは、ウエスト以外のところが、出ていて、魅力的ってこと? え、何? ジュネスって、わ、私のスタイルが、イイって事を、言いたいのよね)


(うわー、恥ずかしい。 胸とか腰が大きくて魅力的だとか、面と向かって言うのって、勇気がいる言葉なんだ。 姉さんのアンジュを元気づけろって話だけど、元気付ける前に、俺が、恥ずかしさで死にそうだよ)


「ねえ、ジュネス。 私のウエストがくびれているように見えるのよね」


(あれ、アンジュのやつ、何だか、さっきと違うぞ。 なんか、嬉しそうにしている)


「ねえ、ウエストがくびれているって、こ、と、は、……。 ほ、か、が、出ているって、言いたかったのかな」


(あ、やばいかも、アンジュの目が、何だか、やばいかも)


「い、いやぁ、そ、そのー、まぁ、そうとも、言う」


(ヤダァー、もう、ジュネスったら、赤くなってる。 え、何、私って、魅力的って事なの? えっ! 嘘、大人の女性のように魅力的だと、ジュネスは言いたいのね)


(どうしよう。 俺が、アンジュの胸とか腰とかを見て、エロいって思っていると思われたのか。 この後、どすけべ、変態とか、エッチなことしたとか、罵声を浴びせられる! うわ〜、どうしよう)


「そ、そうなの。 ジュネスって、私の事を、そんな風に見てたのね」


(ワォ、な、何よ。 ジュネスって、シュレと一緒だったから、シュレと付き合っているから、私なんて、眼中に無いと思ってたのに、何? 私の事、魅力的だと思っていたの? えっ、えっ、ええー、どういうこと? 実は、私の事、しゅ、しゅ、しゅきにゃの?)


(うわー、アンジュったら、俺の事を見ている。 しかも、顔を赤くしているのは、……。 やばい、これ、絶対に、変態扱いされている。 俺が、絶対、アンジュの胸を見ているとか、腰を見ているとか、思っているんだ。 俺、絶対に、いやらしい目で見てないけど、絶対に、アンジュには、そう思われている)


「ごめん、アンジュ。 俺、アンジュの事、とても魅力的だと見ているけど、決して、いやらしい目で見たわけじゃないんだ。 とても素敵で、……。 そう、絵画の女神様とか、美女のようなというか、とても素敵な女性に見えていたんだ。 だから、それを伝えたかっただけなんだ。 だから、決して、いやらしい目じゃなくて、尊いものを見るっていうか、そんな感じだったんだ」


(へ、何? 女神! 私の事、そんなに、……。 え、何? これって、こ、く、は、く? 告白なのぉ?)


(やばい、絶対に、アンジュは、変態扱いしているはず。 うわー、どうしよう。 姉さん、恨むよ)


「ね、ねえ。 あ、あのね、私の体型なんだけど、……。 魅力的だって、言ったけど、本当?」


(ん? 罵声が飛んでこない? アンジュのやつ、何か、勘違いをしているのか? だったら、それを利用するしかないでしょ)


「ああ、アンジュは、最近、トレーニングを積んでたから、余分な脂肪も無くなってきたと思う。 それが、必要なところは、ちゃんと残っているから、とても魅力的なスタイルになってきたから、とっても、綺麗だと思うよ」


(え、何よ。 私って、そんなに魅力的なの。 ジュネスったら、わ、私を口説いているの?)


「そうだよ。 まるで、蝶が蛹から、孵化したみたいで、とても素敵だと思うよ」


(そりゃそうだろう。 毎日、綱登りで鍛えているんだから、脂肪は最小限だし、残った脂肪は、胸と腰、それと太ももにいっただろう。 ウエストはくびれているし、誰もが羨む美少女スタイルだろう。 俺なんか、一緒のパーティーだからって、男達から、いつも冷たい視線を投げかけられているんだからな)


「まぁ、ジュネス。 私の事、そんなふうに褒めてくれるのね」


(何よ、ジュネスったら、シュレから、私に乗り換えようというの? ……。 いえ、そうじゃなくてもいいわ。 私なら、シュレと2人で尽くしてあげてもいいわ。 シュレができないところを私が補うのよ)


(よかった。 アンジュの気分が戻ったようだ。 いつもの高飛車な感じの、いかにも私は女王様よって感じじゃなきゃ、アンジュじゃないよね。 これで、普通に学校生活も休みの日のパーティー活動も安心して、仕事を任せられそうだ)


(な、何よ。 でも、うちのパーティーは、女子3人なのよ。 そう、アリーシャがいるわ。 彼女、やたらと、食べるのよね。 入学の時は、本当に痩せっぽちだったのに、最近は、私より胸が大きくなってきたように思えるのよね。 身長130cmで、あの胸は、ちょっと反則よね。 ……。 うん、そうね。 今度、アリーシャも、誘おうかしら。 きっと、アリーシャも、ジュネスのことが好きよね)


(あれ、なんか、アンジュの様子が変だそ。 嫌らしい笑いを浮かべた。 どうなっているんだ?)


(そうよ。 アリーシャったら、食事が足りないからって、ジュネスから、もらったりしてるのは、あれは、きっと、アリーシャも好きってことよね。 うん、そうよね。 じゃあ、うちのパーティーは、全員が、ジュネスを好きなのね。 ……。 じゃあ、レオンとカミューは? 。 レオンは、お子ちゃまだし、カミューは、……。 ああ、あれは、男として論外よね。 今まで、一緒に生活していたけど、体は男だけど、中身は女子よね。 そうよ、カミューは女子力が高かったから、シュレもアリーシャも靡かなかったのよ。 うん、そうよ)


「あのー、アンジュさん。 何だか、嬉しそうだけど、大丈夫ですか?」


「……。 え、ああ、うん。 大丈夫よ。 なんだか、とても元気が出たわ」


「……。 そう、それは良かった」


(うわー、良かった。 アンジュの機嫌が戻ったみたいだ。 これで、アリーシャ姉さんから、文句も出ないだろうし、パーティーの活動にも、良い方向に進むだろうから、稼ぎも増えるはず。 これで、アリーシャ姉さんに食事の補填をさせられずにすみそうだ)


(私も、男ができたわ。 まあ、1対1じゃないけど、私は、他の女と同じでも構わないわ。 だから、きっと、これからは、楽しくなりそうだわ)


「ふふふ」


(アンジュのやつ、笑ったぞ。 何だか、不気味な笑い方だったようだけど、大丈夫なのか? ……。 何だか、嫌な予感がするのは、気のせいなの? ……。 うん、きっと、気のせいだ。 気のせい)

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