第14話 帰還

 地上の地底探査司令部は、チリトとカスミが地球の中心にたどり着いたことを知って、自分たちの作戦が悪くなかったことを知って満足した。

「チリトを殺さなくてよかったな」

「最初から殺す気はなかった」

「ふううう。大きな仕事をやり終えた感動で、涙が出てくるね」

「落ち着けよ。隣の職員が大騒ぎしているぞ」

 地底探査司令部は、この状況に浸る。

 一方、地底の中心では、チリトとカスミが悩んでいた。

 チリトは最初から、地底の中心まで行き、そこから帰ってくることまでを狙っていた。片道旅行の探検は趣味じゃない。しかし、この旅のどこを見て、最初から計画されていた探検だなどということができるのか。だから、破綻した探検計画をまた考え直して、地上へ帰る方法を検討している。

「地底の中心より重い船で地上へ帰れるか。鉄とニッケルの固体の中をまた1300キロメートルを帰るのは難しくないか」

 カスミが首をかしげる。

「また、造船するという選択肢もある」

「内核で固体の鉄とニッケルを素材に造船しても、鉄とニッケルの固体の中を進むのは無理だ」

「地底の中心より重い船で泳いで上を目指した方がいいな。二百番代元素の船でないと、内核の岩盤は通過できない気がする」

 チリトは考えた。

 チリトは、最初から、地上から地底の中心へ行って帰ってくることまでを狙っていた。しかし、地底探査は思い通りにいかず、計画を破綻させて、それを立て直すことで地底の中心にたどりついた。

「途中からは、とりあえず、地底の中心に行ってみようと思ってたからな。しかし、地底の中心で干からびて死ぬのもどうかと思うんだよ。後から来た地底探査隊が地底の中心で人類の死体を発見しても、うんざりするだろうからな」

 どうやって地底の中心から地上へ帰ろうか。

「あなたは壁抜け技術を持っていると聞いているけど、本当なんですか」

 チリトが地底巻き貝に質問する。

「そうだよ」

「是非、我々人類に壁抜け技術を教えてくれ」

 チリトは、鉄とニッケルの塊の中を岩盤電波を通らせて地底巻き貝と会話しているが、そんな技術を持っている自分たちを奇妙に思う。おれたちの地底船はどれだけすごいんだ。

 それからは、数か月、壁抜け技術の講義を受けて、その技術を修得した。

「すげえなあ。地底巻き貝と人類の文明との間にはどのくらい差が開いているんだろうか」

 チリトがひとりでつぶやいた。

 そして、二人は、本当に数か月後で、壁抜け技術を習得できたのだった。

 地底の旅が終わったら、こんな幸運が待ってたなんて驚きだ。まさか、二百番代元素でできた地底船に壁抜け技術を付け加えることができるとは。

 二人は、壁抜け技術を使って、地上へ帰った。英雄は生きて帰って来るものだ。これはチリトの座右の銘だ。

 結果よければ、すべてよしとした。

 地底トドが呼びかける。

 一万年生きのびたものよ。

 それまで長い長い時間がかかる。

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地底トド 木島別弥(旧:へげぞぞ) @tuorua9876

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