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二四年十一月の3つのお題140

 診断メーカー「小説で使いやすいかもしれないフリーお題メーカー」より、二〇二四年十一月にTwitter上で掲載した140字の文章です。

 お題は「いつもみたいに笑っていて/泡沫の庭/みせぬ涙のおちる場所」。



●いつもみたいに笑っていて

 いつも笑顔の子だった。だけど、今日は一段と嬉しそうだった。

「なにかあった?」

「君がようやく笑ってくれたから」

 意表を突かれた。確かに最近は追い詰められて、笑う余裕などなかったかもしれないが。

 ……そんなに心配させていたのか。

「君は笑顔が似合うよ」

 素敵な笑顔で言われるから、困る。



●泡沫の庭

 海風通る夏の庭で開かれた、婚約者とその妹との三人だけのお茶会。緑陰の下の微睡むような時間が、仮初のものだと知っているのは私だけ。

 復讐。それが私の抱える使命。この平穏は私のナイフの上にあり、その気になれば容易く弾ける。

 それを惜しく思うのは、いったいどのような気の迷いなのだろう。


●みせぬ涙のおちる場所

「大丈夫?」

 心配する私に、貴方は笑った。

「大丈夫だ」

 でも、その顔は歪んでいた。相棒を喪ったのだから、当然だ。

 私にその心を癒す術はなく。ただ時は過ぎていく。

 その間に貴方の顔は晴れて。私は安堵した。

 貴方が泣ける場所があるのなら、それで良い。

 例え、一人でも。

 私の隣でなくても。

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遅筆作家の即興小説練習帖 森陰五十鈴 @morisuzu

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