手の中に切札
八十センチ四方の小さなテーブルが、私の舞台だった。真っ白な台に赤い山札を載せた瞬間から、私の手の中で魔法が始まる。カードを表に返して現れる、私の分身。赤い甲冑を纏った乙女が、戦場に降り立った。今日の対戦相手が駆使するのは、屈強なドラゴン。強敵を前にした彼女が活躍できるかは、私の運と判断に委ねられている。
きっかけは、ただ〝イラストが好きだったから〟。たった一枚のカードが欲しいがために、私はデッキを握りしめるようになっていた。
私自身は、何の取り柄もないただの小娘。そして彼女は、大量に印刷された中の一枚。膨大な数の中から無作為に選ばれた組み合わせは、運命どころか偶然とさえ呼ばないに違いない。
それでも。
私の手で、彼女は踊る。強く、美しく。
山札の上から、切札を一枚引き当てる。この瞬間の情動を何と名付けるだろう。
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『Dounatsお題企画』参加
お題:心踊る
本文400字
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