【ロボットx巨獣x美少女】中年ロボット技師の憂鬱、主人公の父である俺が悪の帝王と手を組むことになってしまったんだが、なんでだと思う?

榊ジュン

第一部 ジャダム帝国侵攻編

第1話 技師、前世?を思い出す

 この世界において、辺境国イズマは人類国家の盾である。

 この星は大部分が大森林と大海となっていて、人族、獣人族、魔人族は何とか寄り添いながら複数の人類国家を築き、1000年前の文明大崩壊後もなんとか生き永らえてきた……


 人類が生き残る大半島の北に位置する大森林と唯一直接隣接しており、大森林から溢れ、人類国家に襲いかかる魔獣ズィーガ巨獣ギガロ、それらから人類を護る盾となる国。それが辺境国イズマである。


 なーんてことをぼんやりと考え、目の前の巨大ロボットを整備している、俺の名前はティム・ロゥ、39歳。

 ネイビーブルーの髪に白髪が混じったガリガリ中年、作業服に怪しい感じのサイバー丸眼鏡、イズマのロボット技師、いや魔導甲鎧技師マギテクターだ。


 あ~、前世?の家に帰りてぇ、スマホ使いてぇ、てか、ここって俺が子供の頃に見たアニメ『魔導甲鎧レイオード』の世界なんよな。

 んで俺って、アニメ本編前に殺されてて、息子のセイムが主人公。俺はアニメ本編でも回想シーンでしか出てこないんだわ……


 10日前に急に前世?の記憶が蘇ってホントいろいろと大変だったわ。

 前世の俺はそこそこ有名な重機メーカーの技師、独身で59歳、定年退職前で悠々自適な生活をしていた。

 それが起きたら知らん天井だわ、記憶は混じり合って混乱するわ、息子はおるわ……


 前世?より20歳近く若返ったのは嬉しいけど、たぶん俺、このままだと1年経たずに殺されるんよな、最大戦力を有する人族至上主義国家、ジャダム帝国のスカウト断って……


 なんせアニメも子供の頃、小学校5年生にリアタイで見た記憶しかなくてストーリーもうろ覚えだし、覚えてるのは主題歌とジャダム帝国が人類国家の統一を目的に初手で襲いかかるのがここ、辺境国イズマ、第1話で滅亡するってこと。


 あとは、息子のセイムが俺の遺した魔導甲鎧マギフレームレイオードで命からがら逃げて、仲間を増やして打倒ジャダム帝国を頑張りますってストーリーだった、はず、確かこんな感じ……


『アスファールという聖霊に愛された世界があった。人々は聖霊の愛を忘れ、自らの欲に溺れ、魔獣ズィーガ巨獣ギガロが現れだした。

 ギガロに対抗するため人族と魔人族は協力し魔導甲鎧マギフレームを開発したがマギフレームを得た各国家は再び自らの欲に溺れ、世界は徐々に崩壊していく。色々あって古代の文明は崩壊し1000年が過ぎ、いま人類は大半島に国家を作り何とか生き残っている。

 主人公のセイムが住む辺境国イズマはある日突然ジャダム帝国の侵略を受ける、父の遺したマギフレーム、レイオードと輸送船キャリーバード、ソリアに乗り込み、幼馴染のアセナを連れイズマから脱出。

 17歳のセイムは旅の中で色々な人たちに出会い助けられ、傭兵団を結成、人類国家の統一を掲げ各国に侵攻するジャダム帝国と戦う』


 だいぶ省略したし、間違ってるところもあるかもしれんけどストーリはこういうモンだったはずだ。


 ティムの記憶でも、前世?で覚えているアニメの情報と大差はなく周辺国の状況は日々悪化している。多分間違いなくジャダム帝国は侵略してくるだろう。んで、俺はお仕事のロボット、いやマギフレームの整備中である。

 工房の場所はイズマ城内にあり、マギフレームの格納庫に併設されている。


 マギフレーム――国家騎士団が使う“ゲマ”。目の前にズラ~っと並ぶ20機のマギフレーム、ここに並ぶゲマを整備するのが俺の今日のノルマ。技師見習いの助手は5名いるが、まあ指示通りにしか動けないボンクラ揃いだ。


 イズマにはこのゲマが約500機あり、これを操縦士マギライナーである騎士たちが操り、ズィーガやギガロを日々倒してくれている。なので俺がサボると大変なことになる、なにせ溢れ出たズィーガやギガロに対抗する術は、マギフレーム以外にないのだから……


「いよぉっし!とっとと整備を終わらせて、新規開発に打ち込むぞぉ!」


「「「「「はい、親方!」」」」」


「主任じゃ、ボケッ!」


 幸いティムの知識と前世?の知識を活用すれば業務に支障はない。ボンクラ共に指示を与えつつ午前中にほぼノルマの整備を終わらせることができた。


 しかし、このマギフレーム、エンジンにあたる部分は魔核と呼ばれる高位魔獣から獲れる魔核を加工してできたコアで動いてて、エネルギーになる魔力は大気中に漂っている。

 すんごいエコだし、装甲や筋繊維もズィーガやギガロから獲れるものを加工して作られている、いわゆる天然素材。

 兵装として飛び道具もあり、火薬が使われるが火薬が希少かつギガロの皮やマギフレームの装甲と魔力による力場フィールドをぶち壊せるほどの威力でもないので、主な戦い方は近接戦、ゲマの武装は槍と丸盾だ。


 ちなみに物理法則は俺の記憶だと前世?と同じだが、魔力がある世界なのでマギフレームの仕組みも実に不可思議で面白い。

 8メートルくらいの巨体が魔力を使った魔術思ったように動き、で飛ぶんだぜ?


 武装としてミサイルや銃もあるが、ギガロには効かないので、どちらかというと対人兵器、もしくは弱い下位魔獣に向けた武装といえるので基本武装ではない。

 魔術を使った遠隔攻撃もあるけど、イズマにはないんだよねぁ……


 そんなことを考えていると、ご近所さんであり、セイムの幼馴染のアセナ・ミナが人数分の昼食を持ってきてくれた。もちろん好意などではなくお仕事である、ミナ家には俺たちの食事関連のお仕事をお願いしているからだ。


 俺の家は、まだセイムが幼い頃に妻を病気で亡くしており。ミナ家に少なくないお金を払うことで家事をやってもらっている。

 技師としては優れたティムだけど家事はできなかったらしい。いまは前世?の知識があるので全然余裕でできるんだけど、ミナ家の大事な収入の一部を無くすわけにはいかないのでそのままお願いしている感じだ。


「おじさん、お昼ご飯だよ~!」


「ボケェ、ここでは主任って呼べ、今日は学校は午前で終わりか?」


「あはははっ、気にしないの。ま、しっかり食べて、午後も頑張ってね!あ、今日はお鍋にするから晩ご飯はウチで食べてってお母さんが言ってたよ!」


「おうよ!鍋いいよなぁ!楽しみにしてるって母ちゃんに伝えといてくれや!」


 短い金髪に赤基調のセーラー服っぽい格好。息子のセイムと同じ年だから今年16歳、元気で素直で働き者な娘さんだ。でもジャダム帝国の侵攻で彼女以外の家族は全員死んじゃうんだよな……


「おい!ボンクラ共、昼飯にすっぞ!」


 アニメの嫌な記憶を振り切ってボンクラ助手共に声を掛ける。


「「「「「はい、親方!」」」」


「だから主任て、もういいわ…」


 この世界、アニメの通り、人類の文明度合いは高い。魔核をエネルギーにした乗り物や家具、ちゃんとトイレも水洗だし、おしりだって洗ってくれる。

 すべては1000年前に滅んだ古代文明の名残で、なかにはいまだにどうやって動くのか解明できていない魔導機械もあるらしい。


 一般普及していないのはテレビと携帯電話のような通信機だ。これらの技術に関しては国、特に軍事、兵器関連に使われており、どの国でも傭兵団以外は個人で持つことは許されていない。


 あと、イズマはそんなにいないが他国にはかなりの貧民がいる。それぞれの国によって違うけど奴隷にされたり、スラムを形成して住み着いたりと大変な状況だ。

 貧民層はそもそもスクールに通う事もなく、道徳なんか教えられてもいないので、欲しければ奪う、食うために殺す、そんな価値観で生きており盗賊になる奴等も多いし、言葉は通じるけど価値観が違い過ぎて会話にならねぇ……


 一応ラジオはあって、そこで流れる物語や歌、音楽と書籍が大衆の娯楽だ。

 娯楽少ない!まあ、生きるために精一杯なので仕方がないんだけどな……


 残念なことにスマホもパソコンもないが、それに関しては魔人族の国、ギア魔導国が魔核を利用した情報端末を開発中らしい。俺が生きている間に開発できるんかな?


 俺も機械類は得意だけど前世?で言うCPUにあたるコアと呼ばれる部品は、魔人族が魔核に魔術式を組み込んで加工することで作成される。俺自身の記憶でも満足できるコアを自作できた試しはないんだな。

 簡単なコアなら機械で量産できるんだけど……

 昨日早速ギア魔導国にいくつか思いついたコア部品を発注したので、それが実現できれば未来を少しでも変えることができるかもしれんが……


 昼飯は具材たっぷりおにぎりにサラダ、保温筒に入った野菜のスープだ、うめぇ。

 ジャパニーズアニメの世界だけあってこの国は和食があるんだよな、確か主人公のセイムが放浪中に和食を食べて泣くシーンがあったはず。


 さて、昼飯も食ったし、助手共は工具の手入れ、俺は新型機の設計だ。まずは、マギフレームの構造のおさらいだ。マギフレームの大きさは8~10メメト(メートル)程度が標準で、コクピットは胸部にある。

 エネルギー源でありコントロールユニットの役目をする加工された魔核はコアと呼ばれ、これがマギフレームの神経線に信号を送ることで筋繊維を動かし、マギフレームは稼働する。

 コアのエネルギーだが、基本的に大気中の魔素を取り込む仕組みになっており、エネルギー切れは起こらない。ただし激しい戦いを連戦でするとコアのエネルギーが枯渇、かつ周りの魔素も薄くなることで動かなくなることもあるらしい。

 まあ、120年前の大戦時の記録だからどこまで本当なのかは疑問だが、恐らくは正しいんだろう。


 マギフレームのコアはコクピットの下部に中心となるコントロール兼動力コア、背中に飛行をコントロールするコア、基本は2つを使う。これを操縦者の魔力とリンクさせることで思った通りの動きをさせることができるが、当然それにはコアを操る魔力操作の素養、マギフレーム適性が必要で、最初は歩かせることも難しく膨大な習熟期間、半年から2年は必要だ。


 そしてここの人類にはすべからく大小の魔力が宿っている。魔術に長けた魔人族は当然として、人族や身体能力が優れた獣人族も魔力を持っている。


 魔術という技術も栄えてはいるが、それを日常的に利用しているのは魔人族くらいで、普通は魔核を利用した車やバイク、洗濯機やふろを沸かす時に魔核のコントロールにちょろっと魔力を使うくらい、それ以上を人族が扱うと魔力枯渇で気絶する。


 ああ、マギフレームの話に戻ろう……そんなこんなでコアを動力として動く人型兵器、マギフレームの外見だが、昆虫を擬人化したような、そんな表現がピッタリだ。

 仮●ライダーや怪人、アレに甲虫の羽を生やして、全体的にもう少し重厚にしたような感じかな。

 まあ、マギフレームにもスリムな外見のやつもあるが、俺が整備しているゲマなんかは基本色は赤茶色だし、日本のカブトムシを無理やり人型にデザインしたような感じだ、かなりマッシブ、筋肉質なカブトムシが槍と丸盾を持って空を飛ぶ、そんな感じ。


 筋繊維や神経線、装甲もズィーガやギガロの素材を使い、コアに関しては魔人族の技師が加工するんだが、日々魔獣と戦うことで当然傷んで使えなくなる。なのでパイロット、この世界ではマギライナーと呼ばれているが、そいつらが動作の不調を感じると俺に整備を押し付けてくる、そういうことだ。


 さて、主人公が乗るレイオードだが、前世?の記憶が戻る前の俺は3つのコアを搭載したモンスターマシンを設計していた。コアを増やすことはコントロールが難しくなり、かなり優秀なマギフレーム適性を持ったマギライナーでないと扱えない、そう、アニメで活躍する息子のセイムのような……


 だがしかし、日本人であり技師であった俺がそんな人を選ぶような尖がった仕様を許すはずがないだろう。馬鹿にするな、技術とは誰にでも平等であるべきだ、まあマギフレーム適性だけはどうしようもないけれどな!


 ということで新たに設計しなおしているのは4コアの新型試作機だ。マギライナーの負担を軽減する操縦アシストに専念したコントロールコアを1つ、マギフレームの操縦を行うコアを1つ、飛行関連を管理するコアを1つ、そしてパワーを出すことに専念するコアを1つ、これならセイムでなくても扱えるモンスターマシンができあがるはず……

 ある程度のコアの設計術式も俺の方で書き上げて昨日ギア魔導国に発注しているので、おそくとも2か月程度で納品されるはずだ。

 そうしてアニメよりも早い段階でできあがったレイオードを元に量産型を作れば、ジャダム帝国の侵攻に充分対応できるだろう。問題は俺がその前に殺されるって話だが、そちらも凄腕の用心棒を雇う手筈を整えている。


 原作崩壊?しらんがな、折角面白い世界に来たんだし、ここには俺の技師魂を震えさせるロボ、いやマギフレームがある。俺の理想とした新型機をどんどん開発してやるぜ!


 残りのゲマの整備の最終確認とレイオードの設計作業を進め、定時にあがると家に荷物を置き、部屋に引き篭もっているセイムに声を掛ける。


「セイム、今日の晩飯はミナ家で頂くから出る準備をしろよ!」


「え?ああ、わ、わかったよ父さん、声がデカいんだよ…」


 だるっだるのシャツにダボダボズボン、赤茶髪テンパに茶色の眠そうな瞳、見た目は母親似で美形なんだが、ネクラでオタク、それがアニメ主人公のセイム・ロゥ、俺の残念な一人息子だ。






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