「御堂新 10歳 仙人の欠片」
御堂新は区立図書館のテーブルでキラキラした瞳で、ある本の日本語訳を読み込んでいた。
きっかけは小学校のクラスで流行っているアニメについて興味を持ったから。
それは仙人たちが宝貝(パオペイ)という不思議な道具を使って戦うというアニメで、仙人たちの使う不思議な仙術や宝貝が人気で、クラスの男の子たちはみなその話題で盛り上がっていた。
新もそのアニメを視たが、彼が気になったのは派手な仙術でも宝貝でもなく、仙人そのもので、人間や動物が仙人になるという点だった。
学校の図書室では仙人に関連するような本はなく、区立図書館で受付のおばさんに調べてもらい、何冊かの仙人に関する本を読みだした。
特に興味を持ったのは『抱朴子』という本で、仙人なるための方法が細かく書かれていた。
10歳の新にはわからない単語も多かったが、彼は人間がより強くなれる、進化できる、という点に強く惹かれた。
気になる何冊かを借り、自宅でも憑りつかれたように読み込んだ。
新自身も良くわからない、なんでこんなに惹かれるのか、人間が不老不死になり、気を操り、鬼神を従える。
こんなバカげた内容なのに、抱朴子には真剣に修行方法が書いてある。
仙人は実在するんだという証拠という昔の中国の話も書かれている。
これって、もしかして本当にこの通りやれば、仙人になれる???
理解できない内容も多かったけど、おおきくはこんな内容が書かれていた。
・仙人になるための呼吸法、体操などの修行方法(房中術というのはよくわからなかった)
・食べるべき食事や注意点
・金丹と呼ばれる仙人になる薬の作り方や飲み方
金丹に関しては材料も理解できなかったし、長時間煮込むとか絶対に母親に怒られるだろうと断念し、体操と呼吸法から始めることにした。
「これは、よくわからないなぁ……」
素直な10歳の少年の感想である、しかし、彼は諦めなかった。
1年続けることで、なんとなく気が感じられるようになった。
特に元気な植物や枯れそうな植物、家の庭で母が育てている小さな自家菜園の野菜の状態がわかるようになった。
この、中途半端な実感が新の修行への熱意を加速させた。
お小遣いを貯め、抱朴子だけでなく、他にも関連する書物を買い、読み漁り、自分にできそうなことを実践していく。
仙人に興味を持ってから10年が経ち、大学生になっても修行は続けた。
そして枯れかけている野菜の苗や枝葉を元気にできる程度に気を操れるようになった。
気のせいかもしれないが、新が手をかざして気を送り続けることで植物が元気になる、なんとなくだけど、味も良くなった気がする。
御堂家で飼っている猫も、元気がない時は気を送ることで少し元気になった、気がした。
気と身体の使い方をもっと効率化できないかと太極拳も習いだした。
コンサルティング会社に就職し、総務として業務をしながらも修行をした。
オンボロアパートを借りて、大家の許可をもらい、裏庭の一角に野菜を育てながら気の成果を確認する。
毎日毎日同じことをする、自分でも馬鹿らしいと思いながらも、この微妙ながら成果が出ていることが、かろうじて仙人への道を繋いでいた。
ストイックな食生活と修行、それが実を結んだのは、世界が異世界と融合し、モンスターが現れ、ゴブリンに心臓を一突きされた後だった。
御堂新は尸解仙となり、色々なことがあり、やがて神仙へと至った。
「どうしたの?」
多々里コロニーの食堂で、過去を思い返していたら妻の1人である翔子が声を掛けてきた。
「ああ、はいはい、最近は平和でいいことだと、異世界と融合した頃は大変だったなぁと思い返していたんですよ」
「それは、ホテルの不法占拠からの話だね?」
「まあそれは時効として、会社のビルを出る時にゴブリンに殺されたところからですねぇ」
今日も、御堂新が治める多々里コロニーは平和である。
※読んで頂き感謝です!
いやぁ、50万PVいくとは思わなかったw