第2話 AIウルトラJKの魔法
そのとき、なにかとてつもなく巨大なものが白紫陽花の目の前に降り立ちました。
ギョッとして見上げると、雲を突く大男……ではなくて、大少女が立っています。
あまりに大きすぎて頭が雲に届きそうな少女は、メタリックな制服を着ています。
このあたりの高校では見たことがないような斬新なデザインがとてもオシャレ!
シルバーのスカート&パンツを組み合わせた近未来の機能性が抜群にカッコよく、可愛らしいツインテルに結ったロングヘアをダイナミックに風になびかせています。
――こんにちは、白紫陽花さん。びっくりさせてごめんなさい。
あたしは宇宙のお助け高校から派遣されたAIウルトラJKよ。
巨大な少女は、聴いただれもが好きになるような、温かな美しい声で言いました。
はあ? 人工知能の女子高生ってこと? こんなに巨大な娘さんが、あら、まあ。
白紫陽花には何がなんだか分かりませんが、とりあえずウルトラの件は了解です。
坊ちゃんのパパがウルトラシリーズの人形を部屋に飾っている、あれのお仲間?
🛸
なにも話していないのにAIウルトラJKは白紫陽花の悩みを知っているみたいで。
なにしろ根がAIですし(笑)、先祖は宇宙学の権威という家系ですからね。(o|o)
こまかい話は置いておくとして、超キングサイズの少女は歌うように言うのです、「あたし、修業中でね、地球で困っている動植物のお助けボランティアに来たのよ」
宇宙大学へ進むときの内申点に影響するから「お願い」と手を合わせているので、白紫陽花はとりあえず心を占めている例の悩みを、打ち明けてみることにしました。
すると、黙って聞いていた少女は、とんでもないことを提案してくれたのです。
「分かったわ。じゃあ、あたしがあの虹のかけらを集めて来て、ふりかけてあげる」
――ええっ! 虹のかけらを?!
マジっすか?!(@^^)/~~~
そんなことが出来るのかなと、一瞬、白紫陽花は思いましたが、くどいようですが根がAIですから(笑)、巨大少女に不可能はないんだなと思い直しました。(*'ω'*)
✨
それからわずか5分後、ひらりと舞い降りたAIウルトラJKは、青いバケツ(これだけは妙にアナログです(笑))いっぱいに虹のかけらを集めて来てくれました。
そして、「いい? これから虹のかけらを掛けるわよ」と言うと、シャラシャラ、キラキラ、涼やかな音を立てながら、バケツの中身を白紫陽花のうえにあけました。
するとどうでしょう、白紫陽花のピュアな純白の花は水色や桃色や紫色や黄色……あんなに憧れだった華やかな色彩に、見る見る変身してゆくではありませんか?!
――うわあ、すごいわ、なんてすてきなんでしょう!!
AIウルトラJKさん、ありがとう。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
白紫陽花は心からお礼を言いましたが、なぜかAIウルトラJKの顔は冴えません。
それどころか、だんだん、かなしそうな表情に変わってゆくみたい…………。💦
🎨
そのうちに、白紫陽花は妙なことに気づきました。
なんだか花の色が濁って来たような感じがします。
あれ? 全身を見まわしてみますと、あんなに澄んでいた水色や桃色や紫色や黄色が土埃をかぶったようになっていて、さらに、泥をかぶったように変わり始め……。
ひぇえ~! なんなのこれ?! こんな汚い色を望んだわけじゃないわ、わたし。
ごめんなさい、言うのを忘れていたけど、色ってね、混ざると黒に近くなるのよ。
そんなの聞いてなかったわ! これじゃあ以前の真っ白のほうが、ずっとマシよ。
言ったわよね、あたし、修業中の身だって。だから、ね、うっかりミスもときに。
そんなのないわ、こんなんじゃわたし、大好きな坊ちゃんに合わせる顔がないわ。
じゃ、どうする? 宇宙的魔法の杖をひと振りすれば、もとの純白にもどるけど。
ぜひともお願いするわ……っていうか、それも修業中とか言ってミスらないでよ。
大丈夫、杖はただ振るだけだから、いくらあたしでも、ミスの決定打はないはず。
🌞🍂🌠🌗
それから数か月後、冷たい秋風が植物という植物をカラカラに乾かし始めました。
宇宙から派遣されたAIウルトラJKのおかげで、自信を取りもどした白紫陽花は、来年はもっと清く白く咲いて坊ちゃんによろこんでもらおうと楽しみにしています。
虹色あぢさゐ 🌈 上月くるを @kurutan
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