三番街の掃除屋

藤野 悠人

三番街の掃除屋

「おじさん、この本ちょうだい」


 カウンターの前に、一冊の本と小さな財布を握りしめた男の子が立っていた。俺は読んでいた本に栞を挟み、彼が持ってきた本を見る。


「へぇ。坊主、お前『ドン・キホーテ』なんて読むのかい?」

「うん。お父さんが持ってた本は、もう全部読んじゃったから」

「ほう、それはそれは」


 驚きが思わず声に出た。この男の子とその家族は、ここから少し先の区画に住んでいる。父親はなかなかの読書家で、蔵書も多かったはずだ。


「ずいぶん読んだな。本は好きか?」

「うん、大好き」

「そうか。うん、本はいいぞ。本の数だけ物語もある。たくさん読みな」


 そんなやり取りをしながら会計を済ませ、男の子に本を手渡した。


「ありがとう、おじさん」

「気を付けて帰れよ」


 俺は子どもを見送ると、再び手元の本を読み始めた。


 その後も何人かの客が本を買い、また何人かの客は本を売っていった。


 ここは『ロマーノ古書店』。小さな個人経営の古本屋だ。もちろん、店主はこの俺、アンドレア・ロマーノである。このあたりには本屋自体が少なく、本の買い取りも行っている古本屋に至ってはここだけだ。


「ここに古書店ができて、本当に嬉しいよ」


 近所に住む常連のばあさんはいつもそう言って、顔の皺を一層深くしながら、ニコニコと話してくれる。この店を構えてから、彼女はずっと贔屓にしてくれている。


 陽が落ちると、俺は閉店作業に取り掛かった。店の中を軽く掃除し、表に出している『ロマーノ古書店』と書かれた看板を仕舞う。戸締りをして、これから夕食という時に、唐突に店の電話が鳴った。


「はいよ、ロマーノ古書店。悪いが、今日はもう閉店でね。買い取りや在庫の確認なら、明日にしてくれ」


 俺がそう言うと、電話の相手はくっくっと笑う。


『いや、本の相談じゃない。私だよ、アンドレア』

「なんだ、あんたか」

『悪かったな。あぁ、ところで、

「……わかった。今夜飲みに行こう」

『待っているよ』


 そう言って、相手は電話を切った。頼まれていたブルゴーニュが入った。これは俺と、この電話相手との間でのみ通じる仕事の暗号である。


 わざわざ暗号を使っているのには理由がある。もちろん、古書店店主としての仕事ではない。


―――


 例の電話から数日後。俺は薄汚れた路地裏にいた。入り組んだ路地裏の多くがそうであるように、ここにも人の通りはない。ここはいつだって埃とごみの臭いがする。そして、いまはムッとするような鉄臭い匂いも漂っていた。


 俺の目の前には、鉄臭い匂いの元たる男が、虫けらのように情けなく転がっている。両手の指はあらぬ方向に曲がり、不自然な体勢で縛り上げた腕はうっ血している。身体のあちこちを死なない程度に切ったり刺したりしており、少量だが確実に出血し続けている。人間はこれくらいでは死なないが、心をへし折るには十分だ。


「ま、最近の奴にすれば、頑張った方だ」


 俺は懐から38口径を取り出し、弾倉を開いて中身を確認する。弾はきっかり6発。


「吐け。最近、このへんで新種のドラッグをバラ撒いてるのは誰だ。テメェの親分だよ。雑な配合のドラッグで、キメたら一発で廃人確定って代物だ。ドラッグと呼べたもんじゃない」


 男は声にならない声を上げ、命乞いをするように俺を見る。最初に声帯の一部を切っているので、喉の切れ目からは声になり損なった空気がひゅうひゅうと抜けていた。


「正直に情報を吐けば見逃してやるよ」


 俺は38口径の撃鉄を起こし、銃口を男の眉間に当てた。


「で、どうすんだ? 吐くのか、吐かねぇのか」

「じ、じ、ジョルダーノ、だ……」


 神に許しを請うような必死さで、男は掠れた声を絞り出す。


「な、な、7番街の……」

「7番街の……あぁ、ジョルダーノファミリーか」


 男が小さく頷く。


「テメェみたいな売人が、あと何人いる?」

「し、知らねぇ。ほんとに、知らねぇんだ」


 まぁ、そうだろうなと、俺はため息をついた。ジョルダーノファミリーはまだ立ち上げて数年の中小マフィアだが、末端の売人程度に詳しい情報がバラされるようなヘマはしないだろう。


 となると、もう用事は済んだわけだ。俺は立ち上がって数歩離れる。背後で安心したようなため息が聞こえた。


「ありがとうよ」


 そして、引き金を引いた。慣れ親しんだ反動が腕を震わせる。同時に響き渡る、水っぽいものが弾ける音。至近距離から頭を撃ち抜かれたドラッグの売人は、頭の半分以上を肉塊に変えていた。


「これで4人。めぼしい情報なし、か」


 俺は38口径をジャケットに仕舞い、路地裏を離れた。


 あぁ、あんたは今こう思ったろう? 「なんで古本屋の店主が、こんな血生臭いことをしているんだ」ってな。


 古書店経営は趣味であり、半ば道楽に過ぎない。もちろん本は好きだがね。


 俺の本業は殺し屋。こちらの世界の人間からは、「掃除屋」とも呼ばれている。金さえ積まれれば誰でも殺るのが、俺の生業だ。


―――


 夜になると、街角のさびれたバーに向かった。店名は『新世界』。変わった名前だが、ここのマスターが、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』が好きなことが由来らしい。こんなさびれたバーに自分の曲の名前が付けられているなんて、あの世でドヴォルザークは泣いていることだろう。


「いらっしゃい……なんだ、お前か」


 ドアを開けて店に入ると、マスターのレオナルドが縁なし眼鏡をくいっと上げる。店内には客のひとりもいやしない。もっとも、ここはいつもこうだが。


 レオナルド・ロッシ。彼も俺と同様、バーのマスターという表の顔と、裏社会の情報屋兼仕事の仲介者という裏の顔を持っている。以前は刑事だったらしい。本人から聞いた話だと、10年ほど前に刑事を辞め、ここで情報屋稼業を始めたそうだ。


 動機は本人曰く、「より最前線でスリルを味わうため」。随分な変わり者である。


 今回の仕事も、この辺り一帯を仕切っている大手マフィアからの依頼を、レオナルドが俺に仲介する形で請け負っていた。仕事の電話を寄越したのも彼である。


 依頼内容は「悪質なドラッグをバラ撒いている連中を掃除しろ」。


「仕事の報告か?」


 レオナルドの言葉に、俺は無言で肯定した。入り口から数えて3番目のカウンター――俺の定位置だ――に座る。


 そして、ドラッグの元締めが7番街のジョルダーノファミリーであること、売人を何人か捕まえて情報を吐かせたが、正確な売人の数や、ドラッグの入手経路は把握できなかったことを報告した。


「ほう、ジョルダーノファミリーか。確か、立ち上げて本格的に活動を始めたのは、ここ5、6年だな。あそこは、闇金と売春が主な稼ぎ口だったはずだが。それに、他の地区に手を出すような規模でもない」

「事情が変わったんだろう」


 俺は差し出された水を一口飲んだ。仕事の間は酒を飲まない。これは昔からの習慣だ。レオナルドは顎に手を当てながら思案している。


「末端の売人程度では、これ以上の情報は望めんか」

「だろうな。古典的な捌き方だ」

「だからこそ足が着きにくい、と。となると、内部の情報を得るには、別のアプローチが必要だな」


 レオナルドはニヤリと笑った。付き合いが長いだけのことはある。


「とはいえ、7番街は私のテリトリー外だ」


 俺は思わず、ほう、と声が出た。


「珍しいな。この街のことで、あんたに掴めないことがあるのか」

「いや、餅は餅屋、ということさ」


 思わず眉をひそめる俺の前で、レオナルドはメモに何やらサラサラと書きつけ、一枚破って手渡してきた。そこには6番街のとある住所と、酒屋の名前が書かれていた。


「2日後にここに行け。7番街の事情に詳しい。話は私から付けておこう」


―――


 2日後。俺はレオナルドのメモにあった、6番街の端にある酒屋に向かっていた。約束の時間は午後1時。『閉店』と掛かったプレートを無視して、年季の入った木のドアを開けると、太った男がカウンターで煙草をくゆらせていた。どうやら、この男が酒屋の店主らしい。店主は時計をチラリと見、そして俺を見た。俺の一挙手一投足を油断なく観察している。


「時間ぴったり。聞いた通りだな」


 その言葉を聞き、俺はカウンターへと近付いていく。


「言っとくが、うちの酒は安くないぞ。紹介割引も無しだ」

「生憎と、用事は酒じゃない。ジョルダーノファミリーが、最近タチの悪いドラッグをバラ撒いているな。情報が欲しい」


 俺の言葉に、太った店主はピクリと眉を動かすが、表情は一切変えない。短くなった煙草を灰皿に押しつけ、新しい煙草に火を点ける。


「さぁ、なんの話かな」

「しらばっくれるな。6番街でも被害が出ていたろ」


 俺の言葉に、太った店主はギロリと睨みを利かせる。俺は黙ってそれを受け止めた。お互いにメンツと腕、何より信用が物を言う商売だ。それに、小さい組織とはいえ相手はマフィア。半端者に情報を流せば、それこそタダでは済まない。


 しばらく睨み合っていたが、店主は煙を吐き出し、観念したように視線を逸らす。


「どうやら、引退した刑事デカを取り込んだらしい。それも、麻薬取締捜査官……いわゆるマトリをやっていたそうだ。名前はブルーノ。偽名の可能性もあるがな」


 元マトリと聞いて、俺はなるほどと納得した。それなら、薬物の入手経路や、それらを配合している組織のことも詳しいはずだ。新種のドラッグが出回り始めて約半年。どうにも流れがスムーズだと感じていたが、そういうことなら合点がいく。


「一発で廃人確定の劇薬。おまけにワンコインだ。だから貧乏な地区の連中相手に商売してんだと」


 今回の新種のドラッグ騒ぎは、スラム街や工場労働者の住んでいる地区、そして若い連中のアパートなどから被害が始まっていた。なるほど、雑な配合で値段も安い。ひとつひとつは大した額ではないが、この街の7割は低所得者だ。一地区だけでも、捌ければ大きな金額になる。なんともアコギな商売だ。


「そういうことか……。なら、今度は中に入り込める『鈴』が欲しい。ここに来ている運び屋の中で、よくジョルダーノのとこに出入りしてる奴を紹介しろ」

「私が持っているのは、あくまで情報だけだ」

「金なら払う」


 太った店主は眉間の皺を一層深くしながら、胡乱うろんな目で俺を睨む。しかし、大きなため息と共に、再び口を開いた。


「……明日、ジョルダーノの『定期便』を請け負っている奴が来る。15時頃に来るといい。若造だが、借金で首が回らず、すねの傷も多い。チップでもやれば、十分使い物にはなるだろう。あとはどうなろうが、私の知ったことではない」


 俺は情報料と運び屋の紹介料、口止め料としてチップをおまけして店を出た。


「毎度あり」


 煙草を灰皿に押しつけながら、太った店主はありがたくもなさそうに言った。


 翌日。俺が再び酒屋を訪れると、店主の他に、業者風の服装をした青白い顔の男がいた。死んだ魚のような目をした、卑屈な印象の若者だった。ハイエナのような性分だろうと踏んだ。


「お前か、ジョルダーノの所の『定期便』は」

「……あぁ」

「内部の情報を知りたい。建物の構造、護衛の数、奴の仕事場、諸々だ」

「その情報をあんたに渡して、俺に何の得がある。バレたら殺される」

「お前には関係ない。金は払うし、上手くいけば新しい仕事先を紹介してやるよ」


 運び屋の坊主は、俺を疑わしそうに見る。まぁ、それもそうだろう。この業界で、相手の言ったことを鵜呑みにするのはバカのやることだ。しばらくして、坊主はボソリと、情報料を口にした。


「相場よりも高いな」

「仕事場を売るのと、俺のリスクを考えれば妥当だろ。あんたからすれば、俺を殺せば話はお終いだしな」


 どうやら自分の立場と、使われ方を理解しているらしい。頭は悪くないようだ。


「いいだろう、その条件で呑もう。情報の受け渡し場所は?」

「え?」

「お前の情報を俺に教える場所と、時間だ」

「あ、あぁ……ええと」


 突然、運び屋の坊主はしどろもどろになりだす。


「言っとくが、金だけ騙し取って、誰かに俺を始末させようなんて考えない方が良い。そういう小ずるい奴は腐るほど見てきたし、こっちもそれくらいの対応は慣れてる」


 少し気迫を飛ばしただけだが、それだけで気後れしているのが分かる。こういう駆け引きや、交渉ごとには慣れていないのだろう。


 俺は自分の家として、デタラメな住所を教え、日付と時間を指定した。坊主に前金として、少し多めに金を渡し、店を後にした。


―――


 翌日、俺は運び屋の坊主に伝えた住所へと向かっていた。そこは、建築途中のまま放置された、どこの誰の物とも知らない家だ。約束の時間よりも3分遅れて行くと、酒屋で会った運び屋の坊主が、不安げな顔でキョロキョロと周囲を見回していた。


 まわりを警戒しながらここまで来たが、人の気配はなかった。どうやら、あれは約束を守るクチだったらしい。近付く俺に気付いて、坊主は憎らしそうに睨む。


「……あんた、こんな廃墟に住んでんだ?」


 皮肉を言う坊主に、俺は口の端が歪むのを感じた。悪くない度胸だ。


 俺たちは『新世界』へと移動した。相変わらず店内は閑古鳥が鳴いている。俺は水を、運び屋の坊主には酒を一杯奢ってやった。


 坊主は酒が入ると、少し饒舌になった。そして、ジョルダーノのアジトの詳しい間取り、現在の構成員の数、ジョルダーノが主に仕事をする部屋や、自分のような運び屋の受付口のことなどを、事細かに説明した。


「詳しいな」

「俺はファミリー立ち上げの時から出入りしてるからな。運び屋の中じゃ古株なんだよ。今まで下手を打ったこともない。だから信用されてんだ」

「なのに、今回は俺に話したと」


 その言葉に、坊主はピタリと酒を飲む手を止め、ゆっくりとグラスを机に置いた。


「……あんた、殺し屋だろ?」

「そう思う根拠は?」

「運び屋はそんな分厚いジャケットを着て仕事をしねぇ。やけに用心深いし、動きや話し方にも無駄がねぇ。それに、ジョルダーノがドラッグを捌いて半年。こんな時期に、あそこのことを嗅ぎまわるなんて、依頼を受けた殺し屋か、命知らずの刑事デカくらいだ。……なにより、あんたの目つき。人をしょっちゅう殺している奴の目だ」


 驚いたが、表情には出さない。いちいち顔に出るようでは、この商売はできない。


 ただの運び屋の坊主かと思っていたが、色々と観察していたようだ。というよりも、こんな若造に見透かされるとは、俺もまだまだという事だろう。


 そんな俺の驚きをよそに、運び屋の坊主は続ける。


「それに、刑事ならもう少し強引に調べることもできる。あいつら、自分たちは偉いと思ってるからね。でも、あんたはそうじゃない。身のこなしを見るに、元軍人だろ? 見覚えがあるんだ。……俺も少し前まで、陸軍だったから」

「そうか」


 口先ではそれだけ答えつつも、俺は感心していた。この稼業を始めて、これほど自分の経歴を正確に言い当てた奴は、レオナルドと、行きつけの店の愛人くらいだったからだ。チラリとレオナルドを見れば、彼も感心したようにニヤニヤと笑っていた。


 こいつは使える。俺はそう判断した。


「坊主、用が済めば殺すつもりだったが、予定変更だ」


 運び屋の坊主は、面食らった表情を浮かべる。


「今回の仕事、手を貸せ。タダとは言わない。事が済めば、新しい仕事を紹介してやる」


 レオナルドが「紹介するのはどうせ私だろう」と呆れていたが、無視した。


―――


 さて、仕事をするには、それに見合う道具が必要だ。


 俺は坊主を車に乗せ、事前に連絡を取っていた武器商人の元へやってきた。この辺は銃規制が厳しいので、もちろんこの武器商人も違法な商売だ。


「よう、久しぶりだな」


 大型のトレーラーに乗った厳つい男が手を振ってきた。そして、こいつの店というのが、トレーラーのコンテナの中。そこには大量の武器と弾薬、壁に固定された棚にはライフルなどがズラリと並び、鉄製のラックにもハンドガンやアサルトライフル等がぎっしりと敷き詰められている。


「で、今回は何にする?」

「オートマチックのハンドガンを二丁、サイレンサーもふたつだ」

「なら、こいつらがいいだろう」


 男はラックのひとつから二丁のハンドガンを取り出し、俺と運び屋の坊主に手渡す。さすがは商売人らしく、銃身は綺麗に磨かれ、マガジンもスムーズに出る。手入れは行き届いているようだ。運び屋の坊主は慣れた手つきで銃を解体し、部品を確認している。元陸軍というのは本当らしい。


「あとは制圧用。雑に撃っても当たるやつだ」

「ふむ、なら……このアサルトライフルだな。こいつもふたつか?」

「あぁ」


 俺は他にも、催眠スプレー、手榴弾、新製品の防弾チョッキなどを注文していく。俺と坊主、2人分の装備が着々と揃っていった。


「あと、そうだな……、デカくて、大胆なやつはあるか」

「デカくて大胆か……なら」


 男は、壁に掛かっているショットガンの中からひとつを手に取る。


「こいつだな。派手に吹っ飛ばすにはうってつけだ」


 俺たちは買い上げた武器を車に積み、武器商人に代金を支払った。


「……けっこう大掛かりなんだね」


 坊主の言葉には答えず、俺は車のエンジンを入れた。


―――


 そして数日後。坊主が『定期便』として、ジョルダーノファミリーに酒を運ぶ日を作戦の決行日とした。時間は21時ピッタリ。


 作戦はこうだ。運び屋の坊主が、いつものようにアジトのドアノッカーを叩く。すると、若い下っ端が玄関のドアを開ける。坊主によれば、出迎えはいつも同じ奴らしい。そして、下っ端が背中を見せた瞬間に、坊主がそいつを殺す。無論、大騒ぎは厳禁だ。


 それが済んだら、外に向かってレーザーライトを使った合図を送る。このアイデアは坊主のもので、なかなか冴えている。


「ジョルダーノの書斎は、2階の一番奥。大騒ぎすればバレるけど、玄関でくらいじゃ分からないはずだよ」


 坊主は、銃身にサイレンサーを取りつけながら言った。


「ファミリーのメンバーは、廊下を曲がってすぐの部屋に溜まってる。ドアの下半分が壊れてて、大きな隙間がある。催眠スプレーを転がして入れるには十分な隙間がね」

「見張りはないんだな」

「なんだかんだで、あそこはまだ小さな組織だから。ジョルダーノの部屋に、用心棒が控えてるくらいだよ」


 坊主はそう言いながら、アサルトライフルの点検を済ませて、俺に手渡す。さすがに最初からこんな目立つものを持って行くのは論外だ。俺があとから持って入る手はずになっている。


「ジョルダーノを殺ったら、下の階で眠らせた連中を始末してガソリンを撒く。ついでにガス栓も全開。ある程度離れたら、俺がこいつを投げる」


 俺が振って見せた手榴弾を見て、坊主が応える。


「それで証拠も一緒に、ドカン? ちょっと派手過ぎる気もするけど」


 俺はニヤリと笑った。普段は個人を相手にこの仕事をするが、今回は小さいながらも組織を丸ごとひとつだ。事は静かに、終わりは少々派手に行くつもりだ。ジョルダーノのアジトの周りには、いくつか他の建物もある。火が回って野次馬が集まれば、あとはさっさと逃げればいい。


 最終確認は済んだ。俺たちはハンドガンにマガジンを装填し、セーフティを外す。


「さぁ、仕事の時間だ」


―――


 運び屋の青年は、いつも通りの調子で玄関まで歩いていき、ドアノッカーを独特のリズムで叩く。『定期便』として酒を卸しに来た時のコールサインだ。


 脇の下や首筋が汗ばむ。軍にいた頃に、敵陣の制圧作戦には何度か参加したが、この恐怖とも、興奮とも言えない感覚には未だに慣れない。


(まさか除隊してから、また同じようなことをするなんてな)


 青年は、そんな自分を小さく鼻で笑った。


 しばらくすると、ドアの覗き穴のような部分が小さく開いた。いつも出迎えに来る、見慣れた下っ端の男が見えた。


「毎度。定期便だよ」

「ご苦労」


 そう言って、男はドアを開けた。そして、背中を向けた瞬間、青年は後ろから男の口を押さえ、引き金を引いた。サイレンサーを装着したハンドガンは静粛に、そして無慈悲に3発の弾丸を急所に撃ち込み、男は悲鳴を上げる間もなく糸の切れた人形のように倒れた。


「……悪いね。俺もジョルダーノには恨みがあるんだ」


 青年はそう呟くと、外に向かって『作戦続行』の合図を送った。


―――


 いい手際だ。俺は坊主の合図を見て、玄関まで歩いていく。玄関では、坊主が仕留めた迎えの男がうつ伏せに倒れ、血だまりがゆっくりと広がっていた。


 屋敷の奥へ向かってズンズン歩く。廊下を曲がってすぐの部屋のドアには、坊主の言った通り大きな隙間があった。中から聞こえるのは、男たちの馬鹿笑い。俺は催眠スプレー栓を開いて、ドアと床の隙間から部屋の中へと投げ込んだ。


 部屋の中から何事かと騒ぐ声が聞こえてきたが、それも数秒で静かになる。


 しばらく進むと、廊下の角から別の男が現れた。手にはウィスキーのボトルを持っている。こちらに向かって何事かを喚いていたが、俺は無言でハンドガンの引き金を引く。男は脳漿のうしょうをぶちまけて死んだ。


 しかし、さすがに男が喚いたせいで、何か異常を察したらしい。数人の別の男たちが、ドアを開けてわらわらと出てくる。ざっと見て、6人。


 俺たちはアサルトライフルを構え、引き金を引いた。連中の中には銃を取り出そうとした奴もいたが、こちらの方が遥かに早かった。耳にガンガン響く音と共に、男たちは血しぶきを上げ、阿呆のように踊って動かなくなった。


 銃弾で穴だらけになった壁と、血と臓物でぐちゃぐちゃになった廊下を歩き、2階に上がる。一番奥の部屋がジョルダーノの書斎だ。


 突然、その部屋のドアが勢いよく内側から開いた。俺たちが物陰に隠れると同時に、凄まじい数の銃弾が部屋の中から飛び出してきた。轟音が響き渡り、弾丸が壁を抉り、近くにあった壺が砕ける。床を見れば、部屋の中から伸びている人影は3つ。つまり中にいるのは、ジョルダーノを含めて3人。


 とは言うものの、少々まずいな。


 絶え間なくぶっ放される弾丸の雨。どうやら、相手もサブマシンガンの類を持っていたらしい。そのくらいは想定しておくべきだったのだが、せいぜいハンドガン程度だと高を括っていた。


 無策に身を晒せば間違いなく蜂の巣。いや、その前に、跳弾ちょうだんで俺も坊主も危ないか。


「坊主!」


 俺は運び屋の坊主にそう怒鳴ると、階段の方を指差した。坊主も意味を察したらしい。


 見張りが2人いたのでは、ひとりがリロードしている間も、もうひとりが撃ち続けてくるだろう。つまり、ここにいる限りらちが明かない。


 しばらく待っていると、銃弾の雨が少しだけ大人しくなる。その隙に、俺と坊主は階段へと駆け寄った。俺は手すりを飛び越えて、坊主は階段を転げ落ちながら、俺たちは1階へと退避した。


「逃がすな! どこの誰か分からんが、殺せ!」


 部屋の中から、半狂乱になった男の声が響く。恐らくジョルダーノだろう。


 階段から転げ落ちた坊主が身を起こし、近くの部屋へ飛び込むと同時に、サブマシンガンを持った男が2人、2階の部屋から現れた。俺は階段の上にいる2人の位置からは死角にいるから、まだ気付かれていないようだ。だが、すぐにバレるだろう。


 足音を殺して、そろりそろりと階段の傍を離れる。ドアが開きっぱなしになっていた近くの部屋に入り、ゆっくりと戸を動かす。幸い、軋むことなく、ドアは大人しく閉まってくれた。


 ギシ、ギシ、と、男たちが注意深く階段を降りてくる足音がする。


 さて、どうしたものか。アサルトライフルは階段から飛び降りる前に、2階の廊下に落として来てしまった。


 だが、大物はあいつだけじゃない。


 俺は背中に回していたショットガンを手に取り、セーフティを外す。ベルトのホルダーには、催眠スプレーも残っている。


 ……少々賭けになるが、勝てる見込みは十分あるだろう。俺は催眠スプレーの栓を開け、わざと素人臭い音を立てながら、スプレーを入口付近に転がした。そして、大きく息を吸いこみ、呼吸を止めた。


―――


 運び屋の青年はガタガタ震える指でポケットに手を突っ込み、アサルトライフルのマガジンを探していた。


 久しぶりの実戦。久しぶりの血の臭い。久しぶりに向けられる純粋な殺意。それらに対する恐怖が、青年から平常心というものを奪い去っていた。恐怖を誤魔化すためにドラッグを打つことも考えたが、万が一ということも考えて、それもしなかった。姿の見えない魔物は、青年にべったりとまとわりついている。


 ギシ、ギシ、という足音が、部屋のすぐ外から聞こえる。サブマシンガンを持った男たちが、ゆっくりと階段を降りてきている音だった。ようやく懐からマガジンを取り出したものの、一向に大人しく銃身のストックに収まってくれない。


 その時、別の部屋から、カラカラコロン、と何かが転がる音が聞こえた。


「え……?」


 まさか、あの殺し屋か? こんな分かりやすいヘマを? それとも、作戦だろうか。


 男たちはバタバタと階段を駆け下りてきた。二手に分かれる気配がする。


 仮に部屋に入ってきても、今なら一対一。


 運び屋の青年は唾を飲み込んだ。


 マガジンが、ようやく正しい位置へと収まった。


―――


 催眠スプレーから立ち上る乳白色の蒸気のせいで、視界はほとんど見えない。だが、男のひとりが部屋の前で立ち止まる気配は感じる。


 ドアが蹴破られると同時に、男の驚いたような短い悲鳴が聞こえた。同時に、入り口に現れた人影がわずかにふらつく。


 瞬間、俺は物陰から体を晒し、ショットガンの引き金を引いた。反動と共に、放射状に飛び出した弾丸が男の肉に食い込み、引き裂き、血飛沫を上げた。


 だが、急所は外したか。ポンプアクションを引く。排莢はいきょう。すかさず引き金を引けば、男は大きく仰け反り、壁にベシャリと叩きつけられた。


 もう一度ポンプアクション。排莢。ゼロ距離からもう一発。


 水っぽい破裂音と共に、スプレーの蒸気が赤く染まる。人型の肉の塊が、ボトリと床に転がった。


「どうした!」


 外からもうひとりの男の声が聞こえたが、数発の銃声と共に、それも静かになった。俺は急いで部屋を飛び出すと、思い切り息を吐いて、そして吸い込んだ。催眠スプレーを吸い込まないための措置だったが、意外とキツいものだ。


 階段の前を見ると、もうひとりの男が倒れていた。運び屋の坊主が、その後ろに立っている。どうやら男の背後を取ったらしい。


 俺たちはお互いの無事を確認すると、階段へ向かって走る。


 しかし、俺はわずかにスプレーを吸ってしまったのか、少々動きがとろい。坊主は数段飛ばしで一気に2階へ駆け上がり、ジョルダーノの書斎へ飛び込んだ。


 次の瞬間、銃声と共に坊主の右肩が大きく揺れ、持っていたアサルトライフルが床に転がる。しかし、坊主は倒れない。左手で腰からハンドガンを引き抜き、引き金を引く。数発の銃声が響き、短い悲鳴が部屋の中から聞こえた。


 一足遅れて俺が書斎に入ると、坊主は右肩を撃たれていた。だが、見た所かすっただけだろう。


 ジョルダーノの書斎は、見るからに高級そうな家具があちこちに配置されていた。ひとつひとつは洒落たデザインだが、こんなに多ければ嫌味にしかならない。見るからに成金趣味の、センスの欠片もない男が好みそうなインテリアだ。


 そんな部屋の真ん中では、30代半ば程度の若い男が、脇腹や腕から血を流して仰向けに倒れていた。こいつがジョルダーノだろう。こちらも、いかにも高級そうな洒落たスーツを着ていたが、部屋同様センスの欠片もありゃしない。左手首に着けている金の腕時計なんか最悪だ。


 ジョルダーノは取り落とした拳銃を拾おうとするが、坊主はそれよりも早く、床に転がった銃を遠くへ蹴飛ばした。そして、ジョルダーノの足を撃ち抜き、完全に動きを封じた。


「右腕をやられているのに、大したもんだな。良いセンスだ」

「両利きなんだよ」


 坊主は俺の顔も見ずにそう言った。肩で荒い息をしながら、獰猛な目でジョルダーノを睨み付けている。


「ガ、ガブリエル、なんで!」


 ジョルダーノが喚く。この坊主は、ガブリエルという名前だったらしい。


「……あんたが撒いたクソみてぇなドラッグで、ダチが死んだ。俺と同じでどうしようもないバカだったけど、いい奴だった」


 半狂乱のジョルダーノに対して、坊主――ガブリエルは淡々としていた。なるほど。こいつもそれなりの恨みを抱いていたのだ。だからこそ、俺に協力したのだろう。


「ま、待て、分かった。お前の借金をチャラにしてやる! 金が欲しいなら、いくらでもやる、な!」

「そんな汚い金に興味ねぇ。それに、もうあいつは帰ってこねぇ」


 ガブリエルが銃口をジョルダーノに向けた。


「ダチの仇だ。死ね」


 すぐには殺さず、ガブリエルはあえて急所を外しながら、少しずつジョルダーノの体に鉛玉を撃ちこんでいく。撃たれる度に、ジョルダーノは悲鳴を上げ、奇妙なリズムでのたうち回った。マガジンの弾が尽きる頃には、すでにジョルダーノは息絶えていた。


 火薬と、むせ返りそうな血の臭いが満ちている部屋には、俺とガブリエル、そして、原型を留めつつも、弾丸に肉をついばまれたジョルダーノの死体だけが残った。


―――


 ずいぶん大騒ぎをしたので、予想よりも早く離れる必要が出てきた。まず俺たちは、最初の部屋にいた連中の頸動脈をナイフで切って始末した。次に、入口に用意していたガソリンをあちこちに撒き、ガス栓を全開にすると、裏口から急いで外へ出る。遠くからサイレンが聞こえる。誰かが通報したのだろう。俺は手榴弾のピンを抜き、あらかじめ開け放っておいた2階の窓へと投げ入れた。


 爆発と共に、一気に火の手が上がった。それを確認し、ガブリエルと共に路地裏の奥へと急いだ。


 仕事を済ませた俺たちは、寂れたバーの『新世界』へやって来た。レオナルドは俺の報告を聞くと、満足そうにひとつ頷く。


 俺は報酬を受け取ると、ガブリエルに新しい仕事を紹介するようレオナルドに頼んだ。レオナルドはそれを了承すると、2、3日後にまた来るように言った。


 店を出ると、火事が起きた現場でいい具合に警察や消防、野次馬が騒いでいるのが聞こえる。組織同士の抗争でファミリー全員死亡。明日の新聞の見出しはこんなもんだろう。普通ならあり得ないが、この街ではだ。


「……なぁ、あんた」


 ガブリエルが不意に口を開いた。


「いつも、こういうことやってるの?」

「仕事だからな」


 そう。これが、俺の仕事。


「……だが、今回は少し引っかかるな」

「え?」

「いや、なんでもない」


―――


 2週間後。俺はふらりと、ひとりで『新世界』を訪れた。仕事でもないのに店に現れた俺を見て、レオナルドは驚いたように笑う。


「珍しいこともあるものだな」

「まぁ、たまにはな」


 俺は仕事の時と同じように、入り口から数えて3番目のカウンターに腰かけた。酒を注文し、ポケットから煙草とマッチを取り出す。それを見て、レオナルドは再び目を丸くした。


「禁煙したんじゃなかったのか?」

「まぁ、たまにはな」


 酒と簡単な料理に舌鼓を打ちながら、俺はレオナルドと他愛のない話をした。普段よりも口数の多い俺に、レオナルドは驚きっぱなしだった。俺自身、不思議に思うくらい、今日は口がよく回る。


「なぁ、レオナルド」

「なんだい」

「警察を辞めたのって、いつの話だっけか」

「随分と懐かしいことを聞くねぇ。もう、10年前にはなるかな。まぁ、当時の経験があるから、今もこんな仕事が出来てるんだがな」

「そうかい……。ところで、実は先日おもしろい話を聞いたんだ。10年ほど前に、このあたりで麻薬の取締りをやってたデカの話さ」

「ほう、10年前。私が警察を辞めたときと、同時期か」

「あぁ」


 俺は相槌を打ちながらも、レオナルドの表情を観察する。変化なし。


「聞いたところによると、そのデカってのは優秀ではあったんだが、裏ともしょっちゅう取引をしている腐れデカだったらしくてな」

「なるほど。だが、この街の警察は、ずいぶん前から腐っていると有名だからなぁ」


 それもそうだと、俺は小さく頷く。そう、この街の警察は仕事が遅く、捜査もいい加減だ。だからこそ、俺のような奴でも動きやすい。


「もうひとつ面白い話も聞いた。現職の刑事たちも情報屋っていうのは利用するが、特に贔屓にしている奴がいるんだと」

「ほう、なんて奴だい?」

「ブルーノ。だが、この辺じゃこう呼ばれている……、レオナルド・ロッシ、ってな」


 俺の言葉に、レオナルドは分かりやすく動揺した。どうやらビンゴだったようだ。


 思えば今回の依頼、妙な違和感はあった。


 レオナルドは腕利きの情報屋だ。だが、ジョルダーノファミリーの情報は驚くほど少なかった。そのくせ、連中が『定期便』として利用していた酒屋の情報は押さえていた。


 酒屋の店主によれば、ジョルダーノはブルーノという麻薬取締をしていた元刑事を取り込み、今回のドラッグを街に流していたらしい。


 そして、レオナルドの前職も刑事。


 もちろん、根拠など何も無かった。だが、何年も仕事をしてきた中で、今回は引っ掛かりを覚えることが多かった。


 気になった俺は、他の情報屋と探偵を使って、レオナルドの経歴を洗った。


 そして、退職した刑事のリストには無かったが、10年前の行方不明者のリストの中に、そいつの名前はあった。


『ファブリチオ・ブルーノ。元麻薬取締捜査官。ある麻薬カルテルを捜査中、突如失踪し、未だ行方不明。後に、ファブリチオは麻薬カルテルの協力者として、警察とのイタチごっこを演じさせていたらしいことが分かった。』


 そこから、探偵に方々を調べさせた結果、どうやらこのファブリチオは、レオナルドと同一人物であることが、ほぼ確定的になった。


 つまり今回の件、ジョルダーノに新種のドラッグの入手経路を吹き込み、街で捌かせて混乱を誘った真犯人は、レオナルドだったのだ。


 一方で、大手マフィアからの依頼が来れば俺に仕事を仲介し、一連の出来事を見物していた、というわけだ。


 一見すれば、レオナルドには何の得もない。金が入るわけでもない。だが、恐らくこの男は、金などどうでもいいのだろう。


「あんたは以前言ったな。この仕事を始めたのは、『最前線でスリルを味わうためだ』と。これも、そのスリルの一環というわけか? さぞ楽しんだろう、ファブリチオ?」

「やれやれ……」


 レオナルド――いや、ファブリチオ・ブルーノは、困ったように一瞬目を伏せるが、眼鏡の奥の瞳は油断なく光っていた。


「勘が良すぎるのも考え物だぞ、アンドレア」


 その返答に、俺は鼻で笑った。俺が今回請け負った依頼は『悪質なドラッグをバラ撒いている連中を掃除すること』。


 ならば、請け負った仕事をやり遂げるだけだ。


―――


 翌日、ローカル新聞の記事にて。


『昨夜10時ごろ、4番街の住人から、銃声が聞こえるとの通報があった。現場であるバー『新世界』に駆け付けた刑事によると、2人の男性の遺体が発見された。死因は、両者ともに複数の銃弾を受けたことによる失血死。警察の調べによると、ひとりは三番街で古書店を経営するアンドレア・ロマーノ(44)。もうひとりは、『新世界』のマスターであるレオナルド・ロッシ(58)であることが判明した。警察は、事件の詳しい経緯や、両者の関係を捜査する方針を発表した。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三番街の掃除屋 藤野 悠人 @sugar_san010

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ