第6話
このことがあって後、僕は言葉を話すのが不自由になり、一緒に遊ぶ仲間に入れてもらえなくなった。ほどなく、長屋団地からも出なければならなくなって、僕たち家族は父の実家に身を寄せることになった。母は、笑わなくなった。小学校に上がってからも、僕はみんなから「言葉や顎がへんだから気持ちが悪い」と苛められた。
そういえば、長屋団地を出るとき、あの十姉妹は、引越し荷物のなかになかった。
「十姉妹は、事情をよく説明して、大隈さんに引き取ってもらわなければならないよ」と父が母に話していたのを覚えている。
こうして思い返してみると、あの長屋団地では、ほとんど全部の家で十姉妹の番いを飼っていて、みんな鑑札がついていたのだった。
両親が他界し、妻との協議離婚が成立した今になって、僕はそのことが気にかかって仕方がない。とはいえ、それを確かめる術もないのだが。
その後の僕の人生を決めてしまった、十姉妹が逃げた日の話である。
十姉妹が逃げた日 新出既出 @shinnsyutukisyutu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます