第255話 さて、これからどうしよう? その2
「さておきだよ。それならそれなら、麻夜の思ってた仮説は正しいってことじゃない?」
「んっと、走竜たちは、同じ系統の属性を持つ人と仲良くなれるってこと?」
「そそそ」
『くぅっ』
俺の背中を支えてくれてるセントレナがそれを肯定するような声をかけてくれた。なるほどね。だからダンナ母さんじゃなく俺を選んだってことなのかな?
「ま、一概にそうとも言えないんだけどね。ジャグさん、火属性と回復属性持ちでしょ? 確か」
ジャグさん『呼びましたか? 師匠』みたいな表情してこっち見てる。俺は頭を振って見せた。
「……そう、ですね」
公女殿下が確定情報をくれた。何気に俺より凄いジャグさんが俺の弟子とか。レベルの問題なんだろうなきっと。尊敬されるのって。
「大丈夫。兄さんのレベル表記って麻夜たちの十倍でしょ? だからもっと凄いんだってば」
「慰めになってるんだか、なっていないんだか。でもそこに謎が残るんだよね」
「うん。残るんだよね」
「まぁ、それはさておき。ダンジェヲンたんが、土属性じゃなく火属性寄りの子だったら兄さん」
「あ、そっか。その可能性が高いわけか。色的に」
「うんうん」
「茶色だから土属性っていうのは、先入観ありありだもんね。赤土じゃなくこっちは黒土が多いみたいだし」
俺はプライヴィア母さんを見たんだ。すると母さんは両側の眉を少し持ち上げるようにして、『おや?』という感じの表情になるんだ。するとその瞬間、
「タツマ様。ただいま戻りました」
「麻夜様。お待たせ致しました」
「あ」
「あ」
ドルチュネータさんとベルベリーグルさんが戻ってきたんだ。
なるほどね。さっきの母さんのあの表情って、二人の匂いを感じ取っていたってことだったんだ。
「「陛下もお疲れさまにございます」」
「うん。久しぶりだね、ご苦労様」
陛下ってあそっか。今はプライヴィア母さんが女王になってるんだっけ? マイラヴィルナさんが王女に戻って。本来この状態が正しいらしいんだよね。母さんの方が第一王女だったんだしね。
ネータさんとベルベさん、プライヴィア母さんと面識あるんだね。忍者みたいな隠密なのに。
「タツマ様、ご報告、よろしいでしょうか?」
ネータさんは麻夜ちゃんの隣りにいる公女殿下をちらりと見るんだ。公女殿下は頷いてる。一緒に報告を聞くということなんだろうね。
俺は麻夜ちゃんの隣りに移動して腰掛けた。
「うん。それじゃお願い」
「こちらから見まして、あちら側が北東になります」
「うん」
「町の左、西側の外壁よりも更に外れたあたりに、匂いのある場所をみつけました」
麻夜ちゃんが俺を見る。笑顔になってる。俺も頷いて応える。
「うん。ありがとう。それで?」
「匂いの違いからおそらくですが、5人はいるかと思われます。ですが」
「うん」
「墓地ではなくその、ただ雑に埋められているとしか思えませんでした」
「……そう、でし、たか」
「あのさ、ネータさん」
「何でございましょう?」
「例えば、あの町が全て、炎に包まれたとして、影響のある場所なのかな?」
「いいえ。影響はないかと思われます」
「なるほどね。龍人族がここまで来ることはない。そう思っていたからこその粗雑さ。その結果ってことだね。麻夜ちゃん」
「うん。あとで回収に行こう、兄さん」
「そうだね。ありがとう、助かったよ。ネータさん。ベルベさん」
「「はい」」
俺たちの前から、ネータさんとベルベさんが消えた。きっとどこかで待機してるんだろうね。
「さてと。麻夜ちゃん、一緒に来てくれる?」
「うん」
「……ご一緒、させて、いただき、ます」
公女殿下も、長い言葉、絞り出すみたいに。興奮するとやや饒舌っぽくなるけど、本来はこんな感じなんだね。
俺たちは立ち上がってジャグさんの元へ。
「あ、師匠。治療は終わりましたので」
「うん。お疲れさま。『
俺はインベントリからマナ茶を出して、ジャグさんに手渡した。
「麻夜ちゃん、どう?」
「うん。皆さんちゃんと悪素毒抜けてる。ジャグさん、グッショブ」
「はい。ありがとうございます。麻夜様」
「……ジャグルート、凄い、ね」
ジャグさん、公女殿下の前に片膝ついて、公女殿下はジャグさんの頭を撫でてる。
「ありがとうございます、殿下……」
うわ、ジャグさんめっちゃ照れてる。俺が褒めてもこんなにならないのにねー。
ジャグさんを子供扱いとか、もしかしたら公女殿下って、母さんより年上? あーでも、そうじゃなくてもこんなシーンは幼いお姫様やお嬢様がこうする物語もあったから、実際はよくわかんないわ。
でも麻夜ちゃんと話が合うみたいだから、そんなに年上ってわけじゃなさそうなんだけどね。いやどうだろう? ロザリエールさんとマイラヴィルナ殿下の例もあるからなぁ。
「さてと、マリアジェーヌ公女殿下さんたちの治療も終わったし、ドルチュネータさんたたちの調査も終わったから、とりあえず一旦撤退――」
「何を馬鹿なこと言ってるんだい? もう、遠慮することはないんだからここで撤退は悪手だと思うのだが。麻夜くんは許せるのかな? タツマくんを攫ったあの輩たちを?」
うーわ。笑ってるけど、お口の牙がこわいこわい。
「もちろん突撃ー、ですよね。兄さん、何を馬鹿なことを言ってるんですか?」
麻夜ちゃんが『やっちまったね』という表情してる。わかってるなら止めてちょうだいってばよ……。
「ば、場を和らげるためのウィットに富んだジョークです。冗談ですってば」
まじやっちまった。これなら冗談じゃなく駄洒落で済ませればよかったよ。さておき。
「冗談はこっちに置いといて、と。五人埋葬されてるなら、あの場所全部奪還しなきゃいけないってことだよね? 麻夜ちゃん」
「うむ。そうだねー」
「及ばずながら、私も手を貸そうじゃないか」
「もう貸してくれてるじゃないの、お母さん。いや、貸すとか貸さないとか麻夜が思うに、最初から
「あははは」
鋭い麻夜ちゃんのツッコミ。そうだよね。プライヴィア母さんが来てくれなかったら、俺たちは弾幕責めをまだ喰らってたんだから。
「それにさ、兄さん」
「ん?」
「だーれも捕まっていないならさ、て・か・げ・ん、必要ないからフルボッコにできるわけでしょ? これはやらないと駄目でしょ? 色々とストレス抱えちゃったんだからね」
=== あとがき ===
新作はじめました。
タイトルは『海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~』です。
https://kakuyomu.jp/works/16818093084234929540
よかったら読んでみてくださいね。
【WEB版】勇者じゃなかった回復魔法使い ~暗殺者(アサシン)もドン引きの蘇生呪文活用法~ はらくろ @kuro_mob
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