第254話 さて、これからどうしよう? その1

 プライヴィア母さん、笑ってるよ。麻夜ちゃんの隣りに公女殿下も笑ってるし。


「麻夜はさ、聖属性と風属性をメインに使ってるじゃない?」

「うん」

「ウィルシヲンたんはね、実は風属性を持っているのですよ」

『ぐぅ?』


 麻夜ちゃんとマリアジェーヌ公女殿下の間から首をぬっと出すウィルシヲン。


「呼んだ? じゃなくてね、うん。ウィルシヲンたんの話してただけ』

『ぐぅ』


 あ、その場に座ってるし。麻夜ちゃん、ウィルシヲンをリクライニングなクッション代わりにしてる。何て言うんだろうね。自然な連携っていうか? 公女殿下も同じようにもたれかかってる。


「それでね、龍人族の皆さんはさ、翼の色もそうだけど、仲良くなる走竜たんたちもそうだけど。あ、ジャグさんところのダンジェヲンたんは違うけど。みんな赤いじゃない?」

「確かにそうだね。ジャグさんとこのダンジェヲンは茶色だっけ? 赤系とも言えなくはないけど」

「そうなのよ。赤い走竜たんたちはきっと、火属性を持ってる。公女殿下さんに聞いたんだけどね、走竜たんとパートナーシップなってる皆さんはね、ほとんど火属性持ちらしいのよねん」

「なるほど。そうなるとあれだ。俺とセントレナが仲良くなれているのは、同じ属性だから? でも、彼女も回復属性なのかな? 確かに俺の回復属性魔法は、エフェクトがセントレナっぽい色だけど」

『くぅ?』


 『よくわからないけど、そうなの?』。そんな感じにセントレナは話しかけてくるんだ。


「うん。そうなんだよ」

「まーたセントレナたんと話してる。麻夜よりチートなんじゃないの? 兄さん」

「いやいやいや、なんとなくわかるだけだって。それは置いといて。確かに麻夜ちゃんの言うとおりなのかも」

「うんうん。そうじゃなくてもね、兄さんとセントレナたんはきっと近しい属性なのかも」

「なるほどね。黒のイメージだと、闇属性とか? 回復属性と近しいのかな? そういえば麻夜ちゃんは、セントレナの属性は見えないわけ?」

「うん。そこまでは『まだ』、見えないのよん」

「まだ、って。レベル上げたら見えるのかいな。高レベル『鑑定』チート、半端ないなー」

「かもねー」


 麻夜ちゃんの『鑑定』スキルのレベルは確か5だっけ? カンストな6になれば、そこまで見ることができるのか。セントレナたちの言葉がわかるだけじゃなく、それもまた、ぶっ壊れスキルなんだろうなきっと。


「ねねね兄さん。例えばのはなしだけどさ」

「うん」


 麻夜ちゃんの話を隣で公女殿下が頷きながら、俺の後ろで楽しそうにプライヴィア母さんも聞いてる。


「麻夜のウィルシヲンたんがさ、緑で風属性持ってるからさ、赤い走竜たんたちはさ火属性だと思うわけ。ジャグさんところのダンジェヲンたんは、土属性の可能性もあるわけね。茶色だけに。するとさ、セントレナたんは回復属性か闇属性系かな? 黒だけに」

「なるほどね」

「そうするとさ、アレシヲンたんは白。麻夜と兄さんが知ってるのって、白は普通白魔法、回復系の魔法だったはずじゃない?」

「そうだね。そういう物語が多かったかな?」

「でもそうじゃないっぽい。そうなるとあり得るのは、麻夜が知ってるところだとほら、朝也くんの光属性」

「光、ねぇ。うん。さっきの吐息魔法もそれっぽかったけど」

「ねねねお母さん。お母さんの属性って」

「光だが?」

「え?」

「え?」

「あれ? 教えてなかったかな? もしかして」

「うん。聞いてないよ」

「うん。聞いてないね」

「あははは。それは申しわけなかったね」


 なんと、プライヴィア母さんは光属性を持っていた。ということはあれだよ。朝也くんと同じ属性持ち。……あれ? でも。そんな魔法、使ってみせてくれたっけ?


「麻夜ちゃん、光属性ってさ」

「うん。麻夜にはないから、『鑑定』のしようがないのよね。朝也くんも使ったことないって言ってたからわかんないんだって」

「レベル1で使える魔法って何があるか聞いたことある?」

「もしかして『聖なる光』かな?」

「え? そうなの? お母さん」


 麻夜ちゃんがプライヴィア母さんを見ると、苦笑してるような表情なんだ。


「そうだね。私が見た限りだけど『個人情報表示』にあるのは」

「あ、母さんにもあるんだ?」

「あるとも。まぁ、君たちのものと違ってもっと簡易的なものなんだけどね」

「ねねねお母さんそれでそれで?」

「『聖なる光』はね、破邪の光を放つとしかないんだよね。実に使いどころの難しい呪文だったものでね……」

「あ、もしかして」

「うん。もしかして」

「そうだね。私は魔法の鍛錬はあまりしていない、かな?」


 あまり、というのはきっと、積極的に使ったことがない、ってことなのかな?


「あ、お母さん。手のひらに出すことできそ?」

「あぁ。構わないよ『ホーリー・ライト聖なる光』」


 プライヴィア母さんの右手の手のひらに、白く淡く光る優しそうな、暖かそうな光。


「んー。あ、ほんとだ。『破邪の光』だって。『邪気を払う聖なる光だってさ』。お母さんが使うなら、拳にこれをまとわらせて殴ればいいんじゃないかな?」

「あははは。色々と試したことがあるんだよ。けれどね」

「あー、デーモン系の魔族とか、魔獣とか、そういうのが」

「うん。この大陸では確認されていないんだ。まぁ、『破邪』の意味合いのとおり、邪を払うという割に、悪素毒は払うべき邪ではないんだろうね。まったく役に立たなかったんだよ。だからね、恥ずかしい話だけど、レベルもまだ1なんだね」

「そんなことないです。確かに呪文からすると、麻夜たちの聖属性っぽくはあるんだけど。お母さん、試してたのね」

「そうだね。私ももしかしたら誰かの役に、と思ったことはあったんだけどね……」

「なるほどなるほど。死霊系の魔獣モンスターはいなかったのね? お母さん」

「あぁ、私は見たことがない。でもね、こうしてアレシヲンと仲良くなれたんだ。だから良しとするべきなんだろうね」

「うんうん。お母さん」


 麻夜は公女殿下を見るけど、彼女は左右に頭を振る。なるほど、ほんとにこの大陸にはいないんだ。それじゃ、『破邪の光』は効能を試しようがないわけか。


「あ、そうそう。今度麻夜にも色々試させてくださいね?」

「あぁ、構わないよ」

「てことはあれだよ兄さん」

「ん?」

「朝也くんも兄さんと同じでさ。麻夜と麻昼ちゃんに巻き込まれちゃった」

「でもこっちに来て正解だったと思うよ。朝也くんは麻昼ちゃんと一緒なら」

「そだね。それでいいって、言ってたからね」




=== あとがき ===


新作はじめました。

タイトルは『海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~』です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093084234929540

よかったら読んでみてくださいね。

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