タカミ出航の日
いよいよタカミが2度目の船旅に旅立つときが訪れた!今回はヨーコ・ピッケ・ミーニャも一緒である。1度姿を見たいと、漁港にはたくさんの客が訪れた!
船が以前の何倍よりも大きい。いかに以前が貧乏船旅だったかがわかる。ヨーコは「また帰ってきますからねー!」と叫んでいたが、メイド3人はガチガチだ。船の甲板にワインが割られる。汽笛が勢いよく鳴ると、船は陸を後にした。
「あとはみな、ゆるい服に着替えてぼーっとしてていいからね」
タカミはそう言って着替えだした。
「なにしろ次は8日後なんだから、そうしてないと体がついていかないわよ」
「は、はい」
「メイド服なんて暑いだけ、早く着替えなさい」
そう言われてメイドたちは、シャツにホットパンツに着替えた。
「楽です~」
ピッケは至福そうだ。
「船に食べ物はいくらでもあるから、好きなだけ食べなさい」
「本当ですか!?」
ピッケとミーニャはさっそく通路の向こう側にいってしまった。
「あの…本当に大丈夫なんでしょうか」
ヨーコはタカミに訊ねた。
「なにが?」
「今回の船旅のことです」
「平気だっていってんでしょ、いつまでも心配しないの」
「そうでしょうか…」
ピッケはパイナップルにかじりついている。
「とにかく最初のポイントは海!思いっきり泳ぎましょ!それまでは寝てるわ~」
そう言ってタカミは寝室に入っていった。ピッケとミーニャはまだフルーツにかぶりついている。やれやれ、今回の船旅はどうなることやら。ここにいてもしかたがないので、ヨーコも寝室へと消えて行った。
それから何度目かのディナーを繰り返した後、船員が叫んだ。
「いよいよ明日、第一チェックポイントにまいります!海です!綺麗な海で存分に泳いでください!」
船員から歓声がもれる。
「やったー!やっと来た!やっと来たわ!」
タカミは最高に高ぶっている。ピッケとミーニャも大喜びだ。みんな水着は持っているのだろうか。実はまだヨーコは水着を持ってない。仕方なく船内で買うことにした。
エメラルドブルーの海。太陽がさんさんと照り付けている。
「やっほーぅ!」
タカミはおおはしゃぎで海に入っていった。ピッケは体に何かを塗っている。ミーニャはゆっくり海に入っていった
「冷たいですわ~」
ヨーコはしばらく観察していたが、ゆっくりと海に浸かる。確かに気持ちいい。
「あれ?ヨーコの水着、少しきつそうね」
「水着がないから船内で買ったんです」
「まさかダイナマイトバディを際立たせる為に、あえてキツキツの水着にしたのかと思った!」
「そっそんなわけあるはずがないじゃないですかぁ~」
確かにヨーコは脱ぐとナイスバディだ。でも勘違いだったか。皆で水を掛け合った。
「冷たっ!ちょっと水を掛けないでくださいまし?」
「きゃははははは」ピッケには全く耳に入ってなかった。ミーニャ―はスイーと器用に泳いでいる。タカミはもう爆走でクロールしていた。
「もうみんな勝手なんだから!」
しかし海の色が綺麗なだけで、こんなにも心地よいものなのか。これだけでもきたかいがあったといってもおかしくなかった。海なんて入ったのはどれくらいぶりだろう。天気も崩れることなく、皆存分に海水浴を楽しんでいる。「きゃははははは」
ピッケは相変わらず水をかけてくる。「ぷはっ!それ、およしっ」タカミはもうひたすら泳いでいる。まもなく日が暮れかけてきたころ、船員が用意したバーベキューを皆で食べた。「たまねぎが最高においしいですっ」ピッケはかぶりついていた。タカミはビーチパラソルのしたで優雅に座っていた。もちろん肌は真っ黒である。ヨーコは黒いというより、赤くなっていた。シャワーには入れないやつだ。あれ、ピッケは肌が白いままだ。
「なんで?」
「日焼け止めクリームを塗ったからです!」自慢げに話した。ミーニャも少し黒くなっている。抜け目のない奴め。BBQの後は、鳥の丸焼きが回転されて出て来た。
「メインディッシュです」
「おいしそー!」「いいわねぇ!」
皆で切り分けて、そぎ取って食べて行った。
「来てよかったでしょ」
タカミはヨーコに声をかけた。
「まぁ…そうですね」
「この海が忘れられないのよ。もっと時間がたったら、もっと忘れなくなるわ」
「そうですね…」
時間はあっという間に過ぎ去り、皆船へと戻って行った。やがて汽笛が鳴ると、船は港を出て、再び航海が始まった。
「次のチェックポイントは13日後です。それまで船でお楽しみください」
「13日後!?」
「それが船旅ってもんよ」タカミはヨーコの肩をポンと叩くと寝室に向かっていった。シャワーすらあびれないからである。その間、船を移動してみたり、ディナーを食べたりして過ごしていた。ピッケは体は小さいのに、よく食べる。特に肉とたまねぎを好んで食べた。ミーニャはそんなピッケを見て、いつもほほえんでいた。
タカミはがっつり食事を取り、シャワーを浴び、あとは睡眠といった具合だった。このだらしない感じも船旅の醍醐味と言っていた。
次はどんな楽しい事が待っているんだろう。思うだけでわくわくする。毛堕落な日々が過ぎてゆき、いよいよ13日目に近づいて来た。次はどんなイベントなんだろう。船客はホールに集まっていた。
船員は言った。
「次は、皆さんに戦闘をしていただきます」
「は?」
船客は訳がわからず首をかしげていた。
「呪われた島、そこで起こる悪夢、それを振り払い、みなさんには命のやりとりをしていただきます」
「何を言ってるのこの船員」ヨーコはわけがわからなかった。「たたかいー!」ピッケは両手を挙げて喜んだ。アーニャはひたすらとまどっている。タカミは「こうでなくっちゃね!」と、両手をバシッと叩いている。
「は?は??」
「そこの島では迫害された民が、帝国の兵士によって数々の命を奪われました。それだけではなく、無念にも殺された命は骨と成り代わり、洞窟の中で今もうごめきあっているのです」
「きゃーーーーっ!!!!」
ヨーコは耳を塞いだ。怖い物と面倒な事が何より嫌いなヨーコである(仕事はのぞく)。思わず身を沈めた。
「私達はその怨念を完全に沈めるべく、装備をはめてその骸骨と戦ってもらいます」
「何で船客にそんなことをさせるのよ!」
「これは運命と言ってもよろしいでしょう。覚悟はできておりますか?」
「できてるわけないでしょ?大体なによ、装備を付けて戦うって」
「素手で倒す気ですか?槍を携帯していただきます」
こうして船客は装備に身を包み、次のチェックポイントへと近づいて行った。やがて汽笛がなり、到着したことが手短に響き渡った。
「何よ…何なのよ……」
ヨーコはガクブルである。
「まあきままにいこうよ」
「いけるわけないでしょう!?」
「骸骨―」
「大丈夫でしょうか…」
皆装備を身に付けている。しかし本格的な装備ではなく、初心者の盗賊が着るような装備である。槍だけは長い。船客は船からしばらく歩き、洞窟へと歩を進めて行った。短いようで長い時間の中、とうとう洞窟に着いてしまった。
「中は暗いので、たいまつを忘れないで下さい」
船員は、皆ひとりひとりに松明を渡した。
「中には骸骨がうごめいています。それをなんとかうち下し、ボスである大き目のがいこつをたおせばクエストクリアです。ご武運をお祈りいたします」
「何がどうなってるわけ?なんでお金払ってこんな事しなきゃいけないの?まったくわけがわかんない!」
ヨーコは混乱の中、ぞろぞろと洞窟に入っていった。
「ヨーコ先頭歩きなさいよ」
「な、な、なにをおっしゃってるんですか!?」
「いーからいーから」
洞窟にはコウモリもおり、松明を当てると飛んでいってしまう。
「一体何をしてるんでしょう私達」
その時である。ガシャン、ガシャン…という音が向こうの方からやってきた。
「来たーッ!」
まぎれもない骸骨である。松明を当てると骸骨もまた、装備をしている。
「骸骨きたー」
「どうしましょう」
「どうしましょうって倒すしかないでしょ」
「ヨーコ、ほら戦ってみて」
「そんなこと言ったって…」
そういう間にも骸骨は近づいてきている。
「はわわ…でりゃーっ!!」
ヨーコは持っていた槍で骸骨をひと突きした。と、骸骨はあっさり打ち砕かれてしまった。
「あれ?」
ピッケが槍で一刺ししても、骸骨は壊れてしまった。
「もしかして骸骨…弱い?」
よく考えなくても、強かったら問題である。そうと分かるとどんどん骸骨を倒していった。30分ほど倒していると、大きな骸骨が行く手を塞いだ。これが例のボスだ。
タカミは思いっきりダッシュして槍を大きい骸骨に突き刺した。
これまたあっさりと打ち砕かれ、クエスト終了となった。
「にゃははっ」
ピッケは笑いがとまらない。ヨーコは全身の力が抜けるかのような感覚を味わった。
「おつかれさまでした」
洞窟の入り口で船員が待っていた。
「さあ戻りましょう」
船に戻った船客たちは、ぼーっとしていた。
「次のクエストは11日後です。それまでごゆっくり」
「あんなクエストするために長旅したなんて考えられない!」
「まあまあヨーコ、落ち着いてシャワーでもあびてききなさいよ」
「それだけじゃ腹の虫がおさまりません!」
「がいこつー」
ピッケは槍をさす動作をして笑った。ミーニャは気分が悪いと言ってトイレにむかっていた。
「ああいうところから、インスピレーションがわくことだってあるのよ」
「本当ですか?」
「ええ本当よ、だからシャワーにでも入ってゆっくり寝なさい」
「…」
「ピッケ、ディナー食べたい」
「かぶりついてきなさい」
「かぶりついてくるー」
ピッケは通路を走り向かって行ってしまった。
そうしてまた船旅が始まった。以前の船旅より、間違いなく安心感がある。
けだるい時間が過ぎて行った。食事をして眠る日々。次のチェックポイント4日前に船員に一か所に集められた。
「次のクエストはサバンナで動物を狩ってもらいます」
「はあぁ?またきたよわけわからないのが!」
「サバンナには色んな狂暴な動物がうろついています。そこで銃を使って退治してもらいます。一番大物を仕留めた順から商品がありますが、最低でも銃の扱いには慣れて貰わないといけません。色んな銃がありますので、一番使いやすい銃を選び、弾を装填するやり方を徹底して覚えてください。これは命のやりとりなのです」
「自分が何言ってるのか分かってるの?骸骨の時もそうだったけどクエストが明らかにおかしいわよ?」
「痛みを伴うかもしれません。でもそれだけ学びます。それでは銃を選別してください」
「どうかしてるわよ…」
ヨーコはあきれてものが言えなかった。
「ピッケはこの20発出る銃にするぞ!」
2丁抱えたピッケは得意げに銃を前に向けた。
「なんでピッケはノリノリなのよ…今度は骸骨とは違うのよ?本当に狂暴なんだから」
「いいじゃん、みんなで固まって動けば」
タカミは余裕で言ってのけた。あまり怖がっていないらしい。
「私はこの6発リボルバー2本で臨むわ!」
タカミはそう言ってリボルバーを2丁手に持ってポーズを取った。
「私はこれにします…」
ミーニャは2発装填のショットガンをとりあえずと言った形で手にした。
「皆普通に受け入れてるのが信じられないわ」
「しょうがないでしょ決まった話なんだし。それで?ヨーコはどれにするの?」
「…弾数が多い方がいいわ」
「弾数が多くても威力は弱いわよ。逆に弾数が少ない銃は威力が高いの」
「じゃあこの12発の銃を2つ使うわ」
それから船客は、弾の込め方を一から習った。無駄口を言う客は1人もいなかった。
「商品ってなんなのかしら」
「わかるわけないでしょ。金銀宝石ならテンションも上がるけど」
それから3日が経ち、運命のチェックポイントに辿り着いた。まだ明るい内のサバンナである。平原が続き、あまり隠れる場所がない。船客はぞろぞろと銃と弾を持ってサバンナに降り立った。
「では幸運を祈ります。我々は双眼鏡でいつでも監視しています。大きい獲物を退治したメンバーがいたら終了となります。食われた客は残念ながら無視いたしますのでご了承下さい」
「どうかしてるわよ…」
皆サバンナをゆっくり歩いて行った。まだお腹の減っていないハイエナが遠くから見える。でもハイエナはあまり大きい獲物ではない。かといってゾウやカバを倒せるわけがない。
「どうすりゃいいのよ…」
船客は仕方なく進むしかなかった。水筒の水も限られている。できれば短期決戦が望ましかった。
タカミが木の茂みに何かいることを発見した。
「あれ見て」
「なんですか?」
ライオンのオスメスが木陰で休んでいる。いきなり高生命体来たー!
「あれをどうするっていうんですか?まさか一気に…」
「あのライオンはお腹が減ってない。一気にみんなでやってしまおう」
「冗談いわないでくださいよ」
「でもこれで一気にこのクエストは終わるわよ」
「でもいくらなんでも…」
2人で相談している最中に、ピッケが銃をライオンに撃ち放った!
「わはー」
敵意を感じたオスライオンは私達の所へ駆けて来た。危ない!
そこへすごい銃声がした。気が付くとオスライオンが倒れている。
ミーニャのショットガンで仕留めたのだ。ミーニャは震えている。ショットガンは弾数が少ないが威力が抜群である。
「よくやった!」メスライオンはどこかへ行ってしまった。双眼鏡でみていた船員は「終了!」と叫んだ。あっけなく終わってしまった。
「はぁ…」
ヨーコは体の力が抜けた。とにかくライオンを仕留めて終わった。他には何も考えたくなかった。夜までかかると思っていた客は、ほっとしてまた船に戻って行った。
無謀にもほどがある。力なく船に戻った。
船に戻ると船員が、
「おめでとうございます。商品です」
と言って怪獣のぬいぐるみをピッケがもらった。
「わーい」
「商品ってこれ?」
ピッケは両手に上げて喜んでいる。
「もうどうでもいいわ…」
ヨーコはもうこれ以上何も言う事もなく、寝室に向かった。
タカミは、
「もっと面白ければよかったのにねー」
と惜しんでいた。当のミーニャは気が呆けて何も感じなくなっていた。そしてやはり寝室に向かった。今回のクエストはとことん疲れるものだった。もっとマシなものを祈って眠るしか、この船の中ではなかった。ただ1人、ピッケだけが人形を持ってはしゃいでいた。
船員が叫んだ。
「前回は不評なクエストをやらせてしまい、もうしわけありませんでした。9日後のチェックポイントはまたビーチです。おもいっきり泳いでください!」
正直マシなイベントでホッとした。命のやりとりよりずいぶんマシだ。
タカミが、
「ピッケ、日焼け止めクリーム貸してくれない?」
「ダメ―!あと1回分しかないからです」
「…船内で買ってまで欲しいものじゃないしなぁ」
億万長者が値段でブツクサ言っている。
とにかくマシなイベントで良かった。安心してその日を迎えられる。
皆それぞれ寝室で寝たりディナーを食べながら過ごした。ピッケは職力旺盛で肉にかぶりついていた。ミーニャは静かに寝室で髪をとかしていた。タカミとヨーコはシャワーを浴びたあと、寝るか起きるか迷っていた。
「またバーベキューないかなー」
ピッケは肉を頬張りながらそんなことを言っていた。
そして当日!エメラルドブルーの海がみんなを待っていた!
ピッケはいの一番に海に飛び込んだ!アーニャは例によってゆっくり海に入っていった。タカミはビーチパラソルとバルーンでできた下敷きのうえに横たわっていた。「海にははいらないんですか?」
「ちょっと泳ぎ疲れちゃってね」
めずらしい。ヨーコは海の中に入って言った。
「それっ」
「こらピッケ!水はかけないでっていったでしょ」
「あははー」
ヨーコはクロールで気持の良い風を浴びながら泳いでいた。
夕方にはまたバーベキューが待っていた。ピッケは肉と玉ねぎだけ食べて、ピーマンなどは残していた。みんなで食べる楽しい時間。あっという間に日が暮れてしまった。
「次はどんなイベントなんでしょうねぇ」
「さぁ。ただこの船旅はイベントのセンスが悪いとは思う」
「そうですよねー」
次はどんなイベントが待ち構えているのか。
そして9日後。
「いやー!!いやー!!ぃゃぁー!!」
ヨーコのディレイが聞こえた。もちろん故郷には届かない。
次はなんと発掘のイベントだった。ピッケは慎重にハケを動かしている。
教授が、
「珍しい物を発掘するまで終わらんからな!」
ヨーコは泣いていた、そこへタカミが、
「これも勉強勉強!」
「こんなのいやですー!!!!」
こんなことばっかりだ。でもタカミとメイド達の船旅はまだまだ続く!
the.end
漫画家が転生したら肉筆イラストでコツコツと! オーバエージ @ed777
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