第4話 拒食
終業式が終わった。
庭は彩り豊かから変わり、前の殺風景な景色に戻っていた。
「悩みは共有しましょ」
「そうだな」
これが母と父がした会話である。二人とも疲れてはいたがすっきりした顔をしていた。拓哉はその様子を見てため息をついた。
ぼんやりと庭を眺めていると見知らぬ鮮やかな花があるのを見つけた。調べてみたら毒があるらしい。その事実に拓哉は鼻で笑った。
毒をもつ花はそうならざるを得ない環境に置かれていたから毒を持った。
これが俺のストレスか。
外部に漏れ出ず、淡々とためられたストレスか。
「気色悪いな」
薄く笑うと、拓哉は家を出た。母は自由になり、前よりも厳しくはなくなった。父は仕事に慣れてストレスが減った。謎の犯行意識を持ったまま拓哉は妥協することを覚えた。
青空が広がる。
暴かれたものは元に戻らずそこに根差すだけだった。拓哉の脳裏に染み付いた親の顔は今もハッキリ覚えている。
毒を持って生きていくしかなくなってしまった。
俺は家族が嫌いになってしまった、悪い子供になっちまった。
抑制栽培 日永田 朝 @haka_na
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