デザートタイム(解答)

Twitterツイッターです」


「へ?」


 早怜はやとき真実まみがノータイムで答えたものだから、悩み通していた曽根崎そねさき対都たいと面食めんくらった。


「すいません、早くプリンが食べたかったもので。答えは、Twitterツイッターを現実世界の中学校に置き換えたとしたら、という仮定の世界だと思います」


 曽根崎そねさき対都たいと呆気あっけに取られ、すぐに言葉が出てこなかった。


 気のはやる早怜はやとき真実まみは、催促さいそくされるより先に説明を始めた。


「先ほどのTwitterツイッターという答えですが、直感的にすぐ分かりました。ですが、なんとなくでは認められないかもしれないので、先ほどのお話を分析して根拠こんきょを用意しました」


「あ、うん……」


 曽根崎そねさき対都たいと早怜はやとき真実まみの話に置いていかれないよう頭を振って意識を呼び戻した。


 早怜はやとき真実まみがプリンを見つめたまま根拠こんきょとやらを語る。


「先ほどの世界の特徴を私なりに抽出ちゅうしゅつすると、《普通より本音や本能で発言や行動をする人が多い》、《コミュニケーションの幅が広い》、《影響力の差が大きい》の三つが主に挙げられます。滅茶苦茶めちゃくちゃな世界に見えますけど、その特徴は、SNSエスエヌエス……とりわけTwitterツイッターによく似ています。もっと具体的には――」


 ・サムズアップ=いいね

 ・復唱=リツイート

 ・無視=ミュート、ブロック

 ・声の大きさ=フォロワー数

 ・先生=公式アカウント

 ・校長先生=Twitterツイッターの運営

 ・退学=BANバン


「こうだと思います」


 そのとおりで、それ以外にもTwitterツイッターになぞらえた状況が散りばめられていた。


「なるほどなぁ……」


 曽根崎そねさき対都たいとは大きく息を吐き出し、肩をすくめた。「俺たち、SNSエスエヌエスではヤバい奴らだな」ともつぶやいた。

 それから高級プリンを早怜はやとき真実まみの前に差し出す。


「はい、報酬ほうしゅうのプリン」


「やった!」


 早怜はやとき真実まみは言いながら付属ふぞくのスプーンを手にした。

 それで卵色のやわらかいプリンをすくい、口の中に運び入れる。

 最初のひと口。その味をみしめるように、しばらくの間ウットリとした表情をたたえていた。


「おいしいプリン、ありがとうございます」


 表情変化の少ない早怜はやとき真実まみが、ほおゆるめて親指を立てている。


「お、おう。喜んでもらえたなら、買ってきた甲斐かいがあったよ……」


 曽根崎そねさき対都たいとは答えが分かってうれしい反面、高級プリンの手痛ていたい出費のせいで手放しには喜べなかった。

 早怜はやとき真実まみが一瞬で答えを出したものだから、もったいない気がしてしまう。


 早怜はやとき真実まみは再びプリンにスプーンを差し込もうとしたが、そこで手が止まった。

 彼女は顔を上げて曽根崎そねさき対都たいとに言う。


「そういえば、これがクイズだって最初に言わないの、ちょっとイジワルですよ」


 曽根崎そねさき対都たいとは苦笑した。

 ノータイムで答えた奴が何を言っているのか。


「ごめん、ちょっと早怜はやときさんを試したくなっちゃって。でも、うわさのプリン探偵さんには簡単すぎたでしょう?」


 プリン探偵。早怜はやとき真実まみは最近、そういうで呼ばれていた。


「それを言うなら、最初にプリンを見せないのがズルいです」


 それはそう。

 なぜなら早怜はやとき真実まみは、プリンのためなら頭脳がえわたる《プリン探偵》なのだから。


   ―おわり―

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なくもない世界 令和の凡夫 @ReiwaNoBonpu

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