昼休み(出題)

 さて、舞台ぶたいはうってかわって現実の中学校。


「ねえねえ、早怜はやときさん。いま俺が話した世界についてどう思った? 突飛とっぴすぎてあり得ないと思った?」


 鳥がさえずるような高い声でそう言ったのは、顔まで鳥顔をした男子生徒、曽根崎そねさき対都たいとであった。


 彼が熱心に語りかけている相手は、三つみおさげのツインテールに黒縁眼鏡くろぶちめがねの女子生徒、早怜はやとき真実まみである。


「そうですね。なんというか……愚直ぐちょく、という印象です」


 彼女がそう答えると、曽根崎そねさき対都たいとは自分が語った世界を真似まねて、親指を立てて見せた。対する早怜はやとき真実まみ愛想笑あいそわらいを返す。


 しかし次の瞬間、彼女の目の色が変わった。

 曽根崎そねさき対都たいとが机の上に小瓶こびんを置いたからである。びんは透明で、中の卵色が透けて見えている。


「これは、まさか!」


「そう、ご名答!」


「いえ、まだ品名は言っていませんが」


「有名な老舗しにせ《アラモード》で買ってきた高級プリンだよ」


「やっぱり!」


 早怜はやとき真実まみの目は高級プリンに釘付けになった。思わず左右の三つみをぎゅっとにぎる。

 そんな彼女に、曽根崎そねさき対都たいとがプリンをゆずる条件を提示する。


「実は頼みがあってね。昨日友達に出題されたクイズの答えが分からないから、頭のいい早怜はやときさんに一緒に考えてほしいんだ。答えが分かったら、このプリンは早怜はやときさんにあげるよ」


「本当ですか? それ、引き受けます!」


 早怜はやとき真実まみ眼鏡めがねのレンズをキラリと光らせた。

 大好物のプリンがかっているので気合が入る。


 彼女の意気込みを確認した曽根崎そねさき対都たいとは、クイズの内容が書かれたメモを読み上げる。


「さっき話した世界は、あり得なさそうな架空かくうの世界に聞こえますが、実のところ、あながちあり得ない世界でもないのです。さて問題です。さっき語った世界は何を表したものでしょうか?」

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