給食

 さあて給食を食べようか、と女子生徒がマスクを外しました。


 その女子生徒は、つややかな長い髪と、透きとおるような美しい肌と、整った目鼻立めはなだちの、世辞せじなど必要ない端麗たんれいな容姿をしていました。


 そんな彼女がマスクを取ったものだから、それはもう大騒おおさわぎです。


 彼女の顔があらわになった瞬間、男子生徒たちが彼女の元へやってきて、親指を立てながら「かわいい」と言っては戻っていきました。何人も、何人も。

 当の美人女子も返事代わりに親指を立て返しています。


「お、いけるやん」


 廊下ろうかから教室の中をのぞき込みながら親指を立てる生徒がいました。

 それも一人ではありません。入れ替わり立ち代わり、親指を立てて彼女のことをめていきます。


「マジかわいい」

「結婚したい」

「最高!」

「言うほどか?」

「まあまあだな」


 中にはひねくれ者や、理想が天を突き抜けている者もいるようです。

 しかし、ほとんどの生徒が彼女のことをめちぎっていきます。

 次から次へと何人も、こいつら、どこからいてくるのでしょうか。


「ありがとう。うれしい」


 美人女子が何気なく言ったそれが、これまでの彼女からは想像もつかないほど大きな声で放たれたので、多数の生徒がおどろいて彼女を見つめるのでした。

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