ベタな追跡1
「……で、なんすかこれ?」
「なんすかって何が?」
「この状況なんすかって聞いてんのッ! 何で仲良くもないウチ等がこそこそ物陰に隠れて足立の後を追ってんだよッ!」
「ちゃんと事前に伝えてたじゃない。もう忘れたの?」
「言ってねーしッ!」
「あら、そうだったかしら?」
頬を押さえ明後日の方向に目を向ける君和田。すっ呆け方の下手っぷりが余計イライラを募らせてくる。
「放置された女同士で傷を舐め合いましょ? とか言って誘ってきたんしょ、そっちから」
「ああ、そうだったわね今思い出したわ」
「けッ、白々しいたっらねーよマジで」
「……穴見さん。余計な事かもしれないけれど、大して仲良くない――それどころか言葉を交わした事すらない私の誘いを良く受けたわね。もしかして誘われたら断れないクチ? いやらし」
「そっちがしつこく誘ってくるから仕方なくついてきたんでしょうがッ! ……はぁ、こんな事ならさっさと帰っておけば良かった」
「でも、気にはなるでしょ?」
「……………………」
気になるかと問われれば否定はできないかもしれない。
ウチと本番前までしておきながらやっぱりいいやなんて普通に女として安く見られてる気がするし……何より足立ってのがムカつく!
そりゃ、アイツが誰を好きになろうとウチには関係ないし? 嫉妬なんてこれっぽっちもしてないけども! それでも無性にムカつく!
それに、アイツは君和田ともそれっぽい事をしてたみたいだし……どこまでやったのか詳細を聞いてないから知らないけど、もし本当だとしたらそれもムカつく!
なにが『心から好きな人ができれば僕の気持ちが理解できるさ』だしッ! 説得力なさすぎなんだよマジでッ!
「ふふ、怒ってる怒ってる」
「は? 別に怒ってなんかないし」
「そ。ま、どうでもいいわ。それより足立君の言う好きな人とは一体誰なんでしょうね?」
「……知らんし興味ない」
それは紛れもない本音だ。
にしても遅い。かれこれ10分は待ってるぞ?
高校から一番近い駅、その構内、改札前にて足立はずっと突っ立っている。しきりに首を巡らせている辺り、人を待っているのは明らかだ。落ち着きなくそわそわしている。
そんな足立をウチと君和田はコンビニの雑誌コーナーから見張っている。こんなベタな追跡を人生で実行する日がくるとは思いもしなかった。
…………ん?
と、ここでようやく足立に動きが。
「来たわね」
君和田も気付いたらしく、抑え気味の声でそう口にした。
「面白くない顔してるわね、穴見さん。ひょっとして嫉妬?」
「んなわけ。つか、そーゆうあんたこそ嫉妬してんじゃないの? 表に出ないだけで」
「私? ……そうね、嫉妬とかではないけれど、見ていて面白くはないわね」
そう言って君和田は顔を隠すために開いている雑誌に目を落とす。
「いや、やっぱり面白いわね……フフフフフ」
「どっちだよ! ……ったく、よくわかんない奴」
「先を想像したらの話よ。それより足立君たち場所を移すみたいね。後を追いましょ」
「あ――おい君和田ッ! 雑誌おいてけし! 万引きになるだろそれ!」
不運にも好きな子の目の前でズボンを下ろされた男、幾人かの女子に目を付けられ 深谷花びら大回転 @takato1017
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。不運にも好きな子の目の前でズボンを下ろされた男、幾人かの女子に目を付けられの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます