水木しげる先生の遺したもの―水木しげるの幸せになるための七カ条と境港―

七柱雄一@今までありがとうございました!

水木しげる先生の遺したもの―水木しげるの幸せになるための七カ条と境港―

 幸福の七カ条


 第一条:成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。

 第二条:しないではいられないことをし続けなさい。

 第三条:他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。

 第四条:好きの力を信じる。

 第五条:才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。

 第六条:なまけ者になりなさい。

 第七条:目に見えない世界を信じる。

 以上、『水木サンの幸福論』―より引用


 上に掲げたのは2015年に亡くなられた漫画家水木しげるの著書『水木サンの幸福論』より引用した「幸福の七か条」です。

 皆さんはこれを見てどのように思われたでしょうか?

 私などはこの七か条を現代の全ての会社が社訓として採用したら日本社会の労働環境は劇的に改善するのではないか、などと思ったものですが。(笑)



 さて、とりあえず水木先生の生涯をざっとまとめてみましょう。

 先生は1922年(大正11年)に大阪で生まれ、すぐに鳥取県境港市とっとりけんさかいみなとし移り住みます。

 1943年(21歳)に当時の帝国陸軍に召集され、1946年(24歳)に復員。戦争中には米軍の攻撃で左腕を失う重傷を負っています。

 復員後は困窮こんきゅうを極めるも、1960年(38歳)『墓場の鬼太郎(後のゲゲゲの鬼太郎)』シリーズの執筆を開始し、これが人気作となったことから少しずつ名前が知られ始め、しばらくのちに人気作家になります。

 1993年(71歳)に縁の深い境港市の町おこしに協力し、水木しげるロードの建設が開始され、2003年(81歳)に水木しげる記念館の開館によって完成します。同地は鳥取県における観光名所として現在も発展しています。

 2015年11月30日(93歳)で永眠。(ウィキペディアなど参照)



 次に境港市について簡単にご紹介しましょう。

 境港市は鳥取県西部の市。

 私は境港とは隣接する鳥取県米子市に住んでおり、境港に行く場合は車で米子と島根半島を結んでいる国道431号線を通って向かいます。

 境港に着いたとき車の窓を開けてみると、必ずと言っていいほど、魚の独特のにおいがします。

 境港は山陰地方ではもちろんのこと、日本全体の中でも有数の水産資源に恵まれた漁港を誇っているのです。

 そんな境港で新たな観光施設としてできたのが前述の水木しげるロードです。

 水木しげるロードは正式には境港市内にある商店街の名称で、水木しげるが描いた妖怪をテーマとした観光名所として知られています。

 名物は境港駅を始点として全長800メートルの間に設置されたゲゲゲの鬼太郎のキャラクターを中心として日本各地の妖怪たちをモチーフとした多数のオブジェです。

 商店街は、同じ主題、共通のイメージコンセプトをもって思い思いの販売・サービスを展開する各種店舗・施設の集合体に成長しているのです。

 また水木しげるロードの最終地点には水木しげる記念館があり、水木先生自身が集めた妖怪関連のコレクションや独自に制作したオブジェの展示などを中心に、水木しげると妖怪の世界を展示・紹介する博物記念館となっています。

 境港市内は水木しげるロードを含めてとにかくゆったりと時間が流れるのが特徴で、皆さんがいらっしゃれば先生の言葉通りすっかり怠け者になってしまうことうけ合いです。(笑)



 最後に水木先生の幸福の七か条について考えてみます。

 現在日本は世界3位のGDP(国内総生産)を誇る経済大国です。

 しかし世界幸福度ランキングではなんと世界53位に転落してしまうのです。(2016年世界幸福度リポートより)

 そんな状況を考えるとき、私は「現代日本社会の不幸の七か条」とでも言うべきものが存在していると思っています。それは―


 第一条:現代日本の競争社会では多くの人が成功や栄誉や勝ち負けを目的として行動する。

 第二条:やりたいことは自由にできず、やりたくもないことをやらざるを得ない。

 第三条:常に他人と比較されることが当たり前。結果自分の楽しみなど追求できない。

 第四条:好きの力を信じたいが、しばしば周囲の理解が得られない。

 第五条:努力すればするだけ収入は増えると信じても、必ずそうなるという保証はない。

 第六条:怠け者など言語道断。長時間労働が当たり前で、酷い場合は過労死にいたる。

 第七条:目に見える結果だけが全て。結果であらゆる物事が判断される。


 少し極端すぎるかもしれませんが、最近起こった某大手企業の社員が過労の末に精神を病んで自殺した事件などを見ても、完全に的外れというわけでもないと思います。

 これらのことをまとめると、とにかく現代の日本は人生の選択の幅が狭く、寛容でない(いわゆる同調圧力が強い)社会だな、と感じます。

 それが今の日本社会で日本人が幸せを実感できない理由であり、それはまさに水木先生が「幸福の七か条」で言っていることとは真逆のことをすることを強いられている、と言っていいのではないでしょうか?

 つまるところ、今の日本人は不幸になるべくして不幸になっている、とすら言える状態にあると思います。

 だからこそこれを見た皆さんには水木先生の「幸福の七か条」を今後は少しでも意識していただければと思うのです。

 確かに社会に出ればやりたくもないことをやらざるを得ないこともあるでしょうし、怠け者でいることが許されない状況もあるとは思います。

 しかしこれらの言葉を知っておくだけでずいぶんと気持ちが楽になるときがあるのではないか、と思うのです。

 もちろん私自身、「幸福の七か条」を意識しながら今後も生きていけたらと思っております。



 幸福の七か条、水木しげるロード、『ゲゲゲの鬼太郎』を始めとする漫画や著作の数々…、じきに没後一年を迎えられる水木先生は本当に多くのものを私たちに遺してくれたと思います。

 この作品を見て水木先生のことに少しでも興味を持っていただけたならこれに勝る喜びはありません。



 ※水木先生の「幸福の七か条」についてもう少し詳しく知りたい方は日本経済新聞社(文庫版は角川文庫)から出ている『水木サンの幸福論』を読まれることをおススメします。もちろん水木先生の漫画を読んでみたいという方、実際に境港の水木しげるロードを訪れてみたいという方も大歓迎です。

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