気鋭のジャズピアニストのコンサートが開かれた夜、貧しく身寄りのない中年女性の絞殺死体が発見されるところから物語の幕があがります。
主人公の刑事・新見啓一郎が被害者の過去を探る中で、見えてくる悲惨な境遇。特に宗教団体の抱える闇に巻き込まれたことが今回の事件のカギとなってくる……旧統一教会の問題が社会を揺さぶる中、読む側も真相を探りたくなっていくジャーナルで巧みなストーリーテーリングがされていると思いました。
巧みなと言えば、捜査が迷走しそうになった時、新見のかつての恋人がアドバイザー的役割を担って登場してくるのはうまい展開だと思いました。同時に、新見が抱える心の傷、哀切も伝わってきて、感情移入させられてしまいます。
刑事・新見啓一郎、次はどんな事件に挑むのか楽しみです。